工場において、品質目標をきちんと立てることはとても大切なことです。品質が落ちたり、異物が入ったりしてしまうと、商品の信用度だけでなく会社や工場に対する信頼も失ってしまいます。しかし、どのように品質目標を立てればいいのか・品質目標を達成するにはどうすればいいのか、などと悩んでいる方は多いでしょう。
そこで、本記事では、工場の品質目標について解説します。
この記事を読むことで、品質目標を設定する際の注意点や達成のポイントなどが分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。
1.工場の品質目標とは?
まずは、工場の品質目標はどのような意味があるのか、基本的な内容をチェックしておきましょう。
1-1.経営理念や品質方針を合わせた測定可能な目標
そもそも品質管理とは、どのようなものなのでしょうか。簡単に説明すると、自社が提供する製品やサービスの品質に対して掲げるものです。主に、経営理念や品質方針を合わせた目標のことを指しています。クオリティーが高く消費者を満足させ続けるためには、顧客満足いう目標も必要です。品質目標は顧客満足にもつながるもので、抽象的な目標を実現するための具体的な目標ともいえます。
1-2.品質マネジメントシステムの国際規格
具体的に、どのような品質目標を立てればいいのか悩んでいる方は、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001を参考にしてください。こちらでの品質目標は、以下のようなものが必要だと記載しています。
- 品質方針と整合している
- 測定可能である
- 適用される要求事項を考慮に入れる
- 製品及びサービスの適合・顧客満足の向上に関連している
- 監視する
- 伝達する
- 必要に応じて更新する
1-3.常に安定した品質を届けるために必要な目標
なぜ工場における品質目標が重要なのか、その理由は、常に安定した品質を届けることにあります。現状の品質状況をしっかりと正しく把握し、具体的な品質指標を設定することで、常に安定した商品を消費者へ届けることができるでしょう。安定した指標がきちんと明確になっていれば、品質が不安定になっていることも瞬時に読み取り、すぐに修正できます。品質目標が不明確になっていると、安定した商品を消費者へ届けられなくなってしまうのです。
2.品質目標の具体例を紹介
それでは、品質目標の具体例をいくつか紹介します。
2-1.品質目標となる5つの項目
品質目標の例としては、以下の5つの項目があります。
- コスト(Cost)
- 品質
- 納期(Delivery)
- 顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)
- 従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)
上記の5つの項目において考えると、以下のような例が挙げられます。
- 工程内手直し率(Cost):〇%以下
- 工程内不良率(Quality):〇%以下
- 納期遵守率(Delivery):〇%以上
- 市場不率 (CS):〇ppm以下
- 市場クレーム発生件数(CS):〇件以下
- 社員定着率(ES):〇%以上
このように、それぞれ具体的な数値を決めることで、明確な目標を掲げられるようになるのです。従業員同士、安定した品質が分かりやすく異変に気づきやすくなります。
2-2.日本ガイシグループの品質目標
セラミックス事業やエレクトロニクスの事業などを行っている日本ガイシグループが掲げている品質目標と品質方針を挙げてみましょう。2016年度に掲げた日本ガイスグループの品質方針と品質目標はいかのとおりとなります。
- 品質方針:品質を大切にし、お客さまと世の中に信頼され役立つ製品とサービスを提供する
- 品質目標:変更点・変化点における検証を徹底し、設計と製造に潜むリスクを排除する
また、品質活動ルールとしては、4つのポイントを掲げています。
- 品質確認のルール: 開発から生産立ち上げまでの節目や、製造工程の変更時に守るべき6つの品質を確認し、継承する
- DR機能強化のルール: 品質リスクの重要性が高位と中位のDR計画を重要DRとして登録し、全社レビュワが同DRに参加する
- 品質監視のルール: 製造や市場での品質状況の変化や課題を全社で監視・共有する。製造不良と市場クレームの状況を毎月、品質統括部への報告を通して全社で共有し、市場不具合の処置に対して妥当性を審議する
- 重大な市場クレーム処置のルール: 重大な市場クレームが発生した場合、あるいはその恐れがある場合は、迅速に品質委員長へ報告し全社的措置を検討する
3.品質目標を設定する際の注意点
ここでは、品質目標を設定する際の注意点を説明しましょう。
3-1.品質目標は品質方針と整合しなければならない
品質目標を設定する場合、品質方針と整合しているかどうかきちんと考えなければなりません。整合性がなければ、品質目標を掲げたとしても達成できずに終わってしまいます。ちなみに、品質方針とは、品質に対する指針のことです。なお、組織にとって達成が可能な指針でもあります。品質目標を小さな目標であるなら、品質方針は目的のような役割を担っているのです。よって、この品質方針と品質目標の間にズレがあってはいけません。目標は目的を達成するために設定されるべきものなので、きちんと整合しているか確認しましょう。整合していない場合は、改める必要があります。
3-2.すべてが数値だけではない
品質目標を立てる場合、数値さえつけていればいいと考える人がいますが、その考えはNGです。数値で表れることのない感覚で覚えたり、感じたりする情報も大切にしていかなければなりません。たとえば、工場で使う機械の数値ばかりにこだわっていると、その場の状況や市場を見逃してしまう恐れがあります。目で見て確認できる数値だけでなく、まわりの状況もきちんと見て、五感で感じ複合的に判断することが必要でしょう。
3-3.品質目標の指標を不明確にしない
品質目標を立てる場合、具体的に何を示しているのか明確にすることが大切です。よく失敗してしまうのが、具体的に何を示しているのか分からなくなることでしょう。品質目標の数値は測定可能であることが前提となっていますが、具体的に何を測定しているのか・その指標の定義を明らかにすることが大切です。品質目標の内容や指標を不明確にしないように注意してください。
4.品質目標を達成するポイント
ここでは、品質目標を達成するポイントをいくつか紹介します。
4-1.達成可能な目標設定にする
品質目標を達成するために、ぜひ注目してほしいポイントが達成可能な目標設定にすることです。達成不可能な目標を設定しても意味がありません。また、達成可能な目標設定を掲げるためには、自社の現状をしっかりと把握することが大切なポイントとなります。よく、「クレームゼロ」を掲げている工場がありますが、そのような目標を掲げている工場ほど実際にクレーム率を把握していない傾向があるのです。目標を立てることが目的になってしまっており、その目標を達成することに意識が向いていません。目標を達成するためには、きちんと現在のクレーム率を測定し、前年度の結果から何%ダウンで設定するなどの工夫が必要です。
4-2.具体的な実現は工場全体を見渡すことが大事
より具体的な品質目標を達成するためには、工場全体を見渡すことが必要となります。たとえば、品質保証部・技術部・生産部・購買部など関連部門に数値目標を反映させてください。そして、さらに具体的な個別の目標を立てて、現場の担当責任者が期限と目標達成するための行動を明確にします。このように、工場全体が一心となって推進していくことが大切です。また、上から強制されているという意識をなくすことも大切なポイントとなります。上から圧力がかかると従業員のモチベーションが下がってしまうため、細やかな配慮も必要なのです。
4-3.現場を見える化する
より工場の品質目標を達成させるためには、現場を見える化することが大切です。現在の工場を見渡してみて、工場の目標達成までのプロセスが見えているでしょうか。プロセスがきちんとひと目で分かる状態であれば、従業員のモチベーションにもつながり、品質目標も達成しやすくなります。なお、見える化するためには、生産管理システムを活用するのがおすすめです。生産管理システムを活用することで、工程管理が可視化されるほか、不具合が出ている箇所も瞬時に修正できるでしょう。
4-4.5Sを徹底する
工場の品質目標や品質管理において必要不可欠なのが、5Sの徹底です。5Sとは、以下の5つの項目を指しています。
- 整理:不要なものを捨てること
- 整頓:使いやすく並べて表示すること
- 清掃:きれいに掃除しながら、併せて点検すること
- 清潔:きれいな状態を維持すること
- しつけ:きれいに使うように習慣づけること
この5Sを徹底することで業務が効率的になるだけでなく、従業員のモチベーションアップや教育、事故発生率の低下にもつながり、目標達成につながります。5Sは工場の生産管理目標を達成するための土台になるものなので、きちんと徹底するように心がけてください。
5.工場の品質目標に関してよくある質問
工場の品質目標に関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.サービス品質とは?
A.サービス品質の6つの要素を表しています。
- 「正確性」:正確なサービスなど、正しくて確実なこと
- 「迅速性」:スピード・納期厳守など、物事の進行がきわめて速いさまのこと
- 「柔軟性」:1つの立場や考え方にこだわらず、その場に応じた処置・判断のできること
- 「共感性」:傾聴など、他人の考え・主張にまったくそうだと感ずること
- 「安心感」:知識・信用・価格など、気掛かりなことがなく、心が落ち着き安んじること
- 「好印象」:話し方・清潔感・容姿などで、好ましい印象を与えること
Q.品質目標を社員全員で推進するためにできることは?
A.たとえば、実際に行われているのが、部門や個人の業務目標シートに品質目標を含んだ項目を明記することです。業務目標は目に見る機会が多いので、それぞれ品質目標に対する意識を高めることができるでしょう。また、品質目標を工場内や事務所などに提示したり、定期的な品質会議で品質目標の達成状況について継続的にフォローしたりするなど、できることはたくさんあります。
Q.工場の品質目標において忘れてはいけないことは?
A.つい忘れてしまいがちなのが、機械設備や工具のメンテナンスです。工場の品質を安定させるためには、そこで使用する機械設備・工具を万全な状態で維持し続けなければなりません。道具が整理されていない・機械設備がメンテナンスされていない状態だと作業事故につながる恐れがあります。だからこそ、工場において5Sの徹底が必要とされているのです。
Q.SMARTの法則とは?
A.以下の5つの頭文字をとって名づけられたのがSMARTの法則です。
- S(Specific):具体的である
- M(Measurable):評価測定ができる
- A(Achievable):実現可能である
- R(Result-oriented):本当に必要な目標である
- T(Time-bound):期限が設定されている
Q.品質目標において「監視し、伝達する」とは?
A.組織全体のチームワークや構成員・従業員の協力が必要であることを表しています。品質目標はただ、トップマネジメントや責任者によって考えられ、彼らの頭の中にしまっているだけでは意味がありません。従業員や組織内全体の人が協力することで、やっと目標設定が達成できます。また、品質目標に向かって正しい方向に進んでいるか、そして彼らに目標をしっかりと伝達することも大切なポイントです。
まとめ
工場の品質目標は、安定した商品を消費者やお客さまへ届けるために必要不可欠なものとなります。より具体的に目標を定めることで達成しやすくなりますが、大切なのは組織全体が協力し合うことです。従業員1人1人がどのような品質目標を工場が立てているのか理解する必要がありますし、それぞれ個人が達成するための行動を起こす必要があります。まずは、現在の工場がどのような状況なのか、どのようなプロセスで製品を生み出しているのか可視化するところから始めましょう。