ボイラー取扱作業主任者とは、一定規模以上のボイラーを設置し、取り扱っている施設で選任が義務づけられているものです。選任を受けるには、ボイラー技士の資格を取得するか、ボイラー取扱技能講習を修了している必要があります。ボイラーは工場や発電所だけでなく、ホテルや学校・病院などにも設置されているため、ボイラーを取り扱うことのできる有資格者を求めている職場は豊富です。
今回は、ボイラー取扱作業主任者の選任を受ける条件や、ボイラー技士の資格取得方法などを解説しましょう。
この記事を読めば、ボイラー技士の試験勉強のコツもバッチリです。ボイラー技士の資格取得を目指している方は、ぜひ読んでみてくださいね。
01. ボイラー取扱作業主任者の
基礎知識
ボイラーとは、熱源を用いて水を沸かし、お湯や水蒸気の力を利用する熱源装置です。かつては列車や船の動力源としても使われていました。現在は、給湯や暖房器具として使用されているほか、工場や発電所などで使用されています。ボイラーは取り扱いを間違えると、爆発事故や火災を起こす危険性が高いことから、取り扱うためにはボイラー技士の資格取得や講習・特別教育が必要です。
ボイラー取扱作業主任者とは、労働安全衛生法に基づいて定められている作業主任者の一種であり、一定規模以上のボイラーを取り扱っている施設に選任が義務づけられています。主な業務は、ボイラー取扱作業の監督やボイラーの日常的な点検・ボイラーに異常が見られた際の応急処置などで、ボイラー技士を束ねる立場といえば理解しやすいでしょう。
02. ボイラー技士と
ボイラー取扱作業主任者について
この項では、ボイラー技士について解説するとともに、ボイラー取扱作業主任者の選任を受けるまでの過程を紹介しましょう。選任条件はどのようなものでしょうか?
ボイラーの種類について
ボイラー技士とは、前述のとおり、ボイラーを取り扱うことのできる資格です。ボイラーには、
- 簡易:資格なし・特別教育修了・技能講習修了で取扱可能
- 小型:特別教育修了・技能講習修了で取扱可能
- 小規模:技能講習修了・二級ボイラー技士取得で取扱可能
- 伝熱面積25㎡未満:特級~二級ボイラー技士取得で取扱可能
- 伝熱面積25㎡以上500㎡未満:特級~二級ボイラー技士取得で取扱可能
- 伝熱面積500㎡以上:特級~二級ボイラー技士取得で取扱可能
以上のような種類があり、資格区分によって取り扱える種類が変わってきます。特別教育や技能講習というのは、資格試験ではありません。また、取扱作業主任者の選任義務があるのは、小規模ボイラーからです。ですから、特別教育を修了しただけでは作業主任者になることはできません。
なお、伝熱面積とは熱交換装置の伝熱に寄与している表面の面積のことであり、伝熱面積が広いほど生み出す熱量が大きなボイラーということです。小規模・小型・簡易ボイラーの場合は、伝熱面積を計算する必要はなく、小型と簡易ボイラーを取り扱っている施設では、取扱作業主任者の選任義務はありません。また、複数台ボイラーを設置している場合は、一番規模の大きなボイラーに合わせてボイラー技士や取扱作業主任者を選任します。
資格区分とボイラー取扱作業主任者について
前述のとおり、ボイラー技士には特級~二級まで3つの資格区分があり、ボイラーの取り扱いだけならば二級を取得しただけでも、すべての種類が可能です。しかし、作業主任者の選任を受けるには以下のような制限があります。
- 取扱技能講習修了:小規模ボイラーのみ
- 二級:小規模ボイラーと伝熱面積25㎡未満のボイラーのみ
- 一級:小規模ボイラー・伝熱面積500㎡未満のボイラー
- 特級:すべてのボイラーを取り扱う施設で、ボイラー取扱作業主任者の選任を受けることが可能
ボイラー取扱作業主任者の選任を受ける方法
ボイラー取扱作業主任者の選任は、ボイラー技士の資格を取得しているか、取扱技能講習修了していれば受けることができます。資格を取得してすぐに選任を受けてもかまいませんが、ある程度実務経験がある人が選ばれることが多いでしょう。また、日本ボイラ協会では、定期的にボイラー取扱作業主任者の技能向上を目的とした講習会を開催していますので、必要ならば受講しましょう。講習会は全国にある協会の支部で開催されています。
ボイラー取扱作業主任者の選任を受けるメリット
ボイラー取扱作業主任者の選任を受けることができれば、資格手当などがついて給与がアップするでしょう。また、責任ある立場を任せられますので、出世の道も開けます。ボイラー技士の資格を活用して転職したい場合も、職歴に箔をつけることができるでしょう。
ボイラー取扱作業主任者の選任経験があれば、単にボイラー技士の資格だけを取得しているより有利です。なお、ボイラー技士の年収平均は380万円~ですが、取扱作業主任者に選任されれば10万~20万円ほど収入がアップします。
03. ボイラー技士の
資格取得方法
この項では、ボイラー技士の資格取得方法を解説します。ぜひ、参考にしてください。
資格区分別の取得方法
前述のとおり、ボイラー技士には特級~二級までの3種類の資格区分があります。ボイラー技士の資格を取得するには、安全衛生技術試験協会が主催する試験を受け、合格すれば取得可能です。以下に、受験資格を得るための条件をご紹介します。
二級:制限なし。国籍や性別・学歴問わず18歳以上の人ならば受験可能(免許を受けるには実務経験が必要)
一級:二級ボイラー技士の資格取得者・エネルギー管理士や海技士などの資格を取得し、1年以上の実務経験者。大学や高等専門学校でボイラーにかんする学科を修めて卒業し、1年以上の実務経験がある人。
特級:一級ボイラー技士の資格取得者、一級を受験する条件を満たしている資格を有し、2年以上の実務経験者。一級を受験する条件を満たした学科を修めて卒業し、2年以上の実務経験がある人
なお、実務経験なしで二級ボイラー試験に合格した場合、日本ボイラ協会などが主催しているボイラー実技講習を受講しないと免許が交付されないので、注意しましょう。講習は3日間にわたって行われます。
試験科目や日程など
ボイラー技士試験の科目は、以下のとおりです。
- ボイラーの構造に関する知識
- ボイラーの取扱いに関する知識
- 燃料及び燃焼に関する知識
- 関係法令
特級から二級まで、すべて同じ科目を受験します。総合で6割以上の得点で合格ですが、1科目でも4割以下の得点ですと不合格です。なお、特級に限り科目合格があり、一部の科目が合格点に達していれば、その科目の合格を2年間持ち越すことができます。免除になる科目は、免許試験結果通知書に記載されていますので、必ず確認しましょう。
ボイラー技士の試験は、二級が毎月、一級が2か月に一度、特級が年に一度10月に試験が実施されます。詳しい受験日程は、安全衛生技術試験協会のホームページから確認してください。試験会場は全国各地の安全衛生技術センターで実施されます。センターは全都道府県にあるわけではありませんので、遠方の人は宿泊準備をして試験にのぞみましょう。
申し込み方法など
ボイラー技士の試験を申し込む場合は、安全衛生技術試験協会から配布されている願書を入手し、必要事項を記入して添付書類を添えて応募しましょう。願書は安全衛生技術センターでも配布されていますし、郵送してもらうこともできます。添付書類についての詳細は、協会のホームページを確認してください。電子申請は受けつけていないので、注意しましょう。受験料は、すべての資格区分で6,800円です。
勉強方法のコツ
ボイラー技士の受験勉強は独学でも可能ですが、日本ボイラ協会が主催する受験準備講習を受講するのがおすすめです。特に、特級ボイラー技士の場合は、参考書がほとんど市販されていません。市販されている過去問題集を解くだけでは不安だという方は受講してみましょう。なお、二級は通信講座も行われています。講習会に参加する時間がないという方におすすめです。
また、二級・一級は参考書も豊富に販売されています。一級を受験する方は必ず実務経験があるため、独学で勉強してもまったく参考書の内容が理解できないということはないでしょう。
ボイラー技士の合格率は二級が55%前後、一級が57%前後、特級が38%前後と国家資格の中では高めです。しかし、一級と特級の受験者が全員実務経験があることを考えると、決して易しい試験ではありません。気を引き締めて試験を受けましょう。
04. ボイラー取扱作業主任者に
対するよくある質問
Q.特別教育・技能講習などは、受講資格が必要ですか?
A.必要ありません。誰でも受講できますので、受講後に実務経験を積んで技士の資格にチャレンジしてもいいでしょう。
Q.ボイラーの取り扱いだけを行うなら、二級を取得すれば大丈夫ですか?
A.はい。ボイラー技士を取得すれば資格区分に関係なくすべてのボイラーを取り扱うことができます。
Q.無資格・未経験でも、二級ボイラー技士の試験に合格するだけの知識を身につけることは可能ですか?
A.はい。大丈夫です。ただし、十分な準備と試験対策を行う必要があります。実務経験がない場合は、試験合格後に、免許交付のための講習を受ける必要があります。
Q.簡易ボイラーは無資格でも取り扱うことができると聞きました。
A.はい。簡易ボイラーならば無資格でも取り扱えますが、資格を有していた方がより安全に取り扱えます。
Q.ボイラー作業取扱主任者に年齢制限はありませんか?
A.はい。ありません。何歳でも選任を受けることができます。
05. まとめ
いかがでしたか? 今回はボイラー取扱作業主任者の選任条件や、ボイラー技士の資格取得方法について解説しました。ボイラー技士は、比較的取得しやすい資格として、社会人にも人気です。実務経験を積めば、上級資格の受験資格を得られますので、ボイラー技士の資格を取得したら、ぜひ資格を活用して働いてみてください。