ビルメン(ビルメンテナンス業務)とは、オフィスビルや大規模商業施設・ホテル・学校など、不特定多数の人が利用する建物で、設備管理をする仕事です。大勢の人が安全かつ快適に建物を利用できるようにするには、メンテナンス業務は欠かせません。また、メンテナンス業務にかかわる資格も複数あり、取得を目指して勉強に励んでいる人も多いことでしょう。
そこで、今回はビルメンの「上位資格」と呼ばれている資格について、解説します。
この記事を読めば、ビルメン業界に就職・転職する際にどのような資格を取得していれば有利なのかもよくわかるでしょう。ビルメン業界に就職・転職するために各種資格取得の勉強をしている人は、ぜひ読んでみてくださいね。
01. ビルメンの
基礎知識
はじめに、ビルメンの仕事内容や職場・就職に必要な資格などを解説します。どのような人に向いている職業なのでしょうか?
1-1.ビルメンの業務について
ビルメンとは、正式名称をビルメンテナンス業務と言います。ビルだけに限らず、大型商業施設や学校・ホテルなど不特定多数が利用する大規模な施設では、ビルメンテナンス業務が必要です。主な職務としては
- 清掃
- 害虫駆除
- 設備の点検や修理
などがあげられます。施設によっては、テナントとの交渉やクレームの対応・自治体との折衝などがビルメンテナンス業務の一環として行われているところもあるでしょう。使用者が施設を快適に使えるようにする業務はすべてビルメンに分類されると考えると、理解しやすいと思います。
1-2.ビルメンの重要性
ビルメンは、決して目立つ仕事ではありません。しかし、ビルメンが不十分なビルは不具合があっても改善されにくいうえ、建物自体の劣化も早まるでしょう。また、不特定多数の人が利用する施設では、空気環境や上下水道の定期的な検査が必要とされています。しかし、ビルメンが不十分ですとそのような検査も不十分となり、施設を利用し続けている間に、健康に悪影響が出る可能性もあるでしょう。
建物を長持ちさせ、利用者に安全かつ快適に使用してもらうためにもビルメンは重要です。
1-3.ビルメンを求めている職場
ビルメンは、オフィスビル・商業ビルなどのほか、大規模商業施設や学校・ホテルなどで必要とされています。施設自体がビルメン部門を設けている場合もありますし、複数の施設からビルメンを請け負う会社もあるのです。また、複数のビルや不特定多数が利用する施設を運営している会社の場合は、ビルメンを行う子会社を設立し、そこで求人を行っていることもあるでしょう。
1-4.ビルメンに向いている人
ビルメンは、設備の補修や点検など技術的な力が要求されます。ですから、手先を動かして仕事をすることが得意な方や、ルーチンワークが苦にならない人が向いているでしょう。また、テナントなどの折衝業務がある場合は、一定のコミュニケーション能力も必要です。そのため、若い年代の人だけでなく、ある程度社会経験を積んだ人を求めている職場もあるでしょう。
1-5.年収など
ビルメンの平均年収は、250万円~となっています。資格を取得したり技術者を統括する立場になれば、給与はアップしていくでしょう。また、取得している資格によっては定年を超えても働き続けることができます。不特定多数の人が利用する施設がなくならない限りビルメンの需要もあるので、将来性も問題ありません。
02. ビルメンに
必要な資格とは?
この項では、ビルメンに必要な資格について解説します。どのような資格が必要なのでしょうか?
2-1.ビルメンに就くには資格が必要?
ビルメンの仕事自体は、無資格でも行えます。しかし、無資格ではできる仕事が限られるため、仕事をしながらでも資格を取得したほうがよいでしょう。ビルメンの求人も、特定の資格を所有している人を優先するケースが多いのです。また、資格を取得している場合は、資格手当がつくので給与アップも期待できるでしょう。
2-2.ビルメン4点セットとは?
ビルメン業界に就職・転職を目指す方ならば、ビルメン4点セットという言葉を聞いたことがあるでしょう。ビルメン4点セットとは、取得しているとビルメン業務に役立つ4つの資格のことです。ビルメン業界に就職したければ、ビルメン4点セットを取得すると、有利でしょう。ビルメン4点セットとは、
- 第二種電気工事士
- 危険物取扱者乙種4類
- 第三種冷凍機械責任者
- 二級ボイラー技士
の4つを指すことが一般的ですが、最近ではボイラー設備を備えていない施設も多く、ボイラー技士を必要としない施設もあります。しかし、取得しておいて損な資格ではありません。
これらの資格を取得していると、電気工事・危険物第4類に指定されている危険物の取り扱いや保安監督業務、業務用空調の取り扱いや、保安業務、ボイラーの取り扱いなどができるようになります。
2-3.各種資格の取得方法
この項では、各種資格の取得方法や取得するとできることなどを簡単に紹介します。なお、これらの資格はすべて資格試験の受験資格が定められていません。学歴・職歴・性別に関係なく受験をすることができます。
2-3-1.第二種電気工事士
第二種電気工事士の資格を取得すると、一般住宅・店舗などの600V以下で受電する設備の工事を行うことができます。資格を取得するには、経済産業省で定められた学校を卒業するか、電気技術者試験センターが主催する試験を受けて合格すれば取得可能です。職業訓練校(ポリテクセンター)でも資格が取得できる講座が開かれていますので、社会人になってから認定校を卒業したいという場合は、利用してもいいでしょう。
試験は学科と実技があり、詳しいことはセンターのホームページを参考にしてください。
2-3-2.第三種冷凍機械責任者
第三種冷凍機械責任者は、高圧ガス保安協会が主催している資格試験を受験し、合格すれば取得できます。ちなみに、冷凍機械責任者には第一種~第三種までありますが、ビルメンの仕事に就くために取得する場合は、第三種で十分です。試験内容などは協会のホームページを参考にしてください。なお、協会は講習会も同時に開催しています。講習会を受講すれば資格試験の一部が免除となりますので、確実に合格したい場合は、受講しましょう。
2-3-3.危険物取扱者乙種4類
危険物取扱者乙種4類は、消防試験研究センターが主催する試験を受ければ合格できます。危険物乙種4類を取得すれば、灯油・ガソリンなど、引火性液体の取り扱いや保安監督業務を行うことが可能です。試験は学科試験のみで、乙種4類を取得すれば、ほかの乙種も取得しやすくなります。
2-3-4.二級ボイラー技士
二級ボイラー技士は、ボイラーの取り扱いのほか、伝熱面積の合計が25m2以内のボイラー取扱作業主任者になることができる資格です。安全衛生技術試験協会が主催する試験に合格すれば取得できます。ただし、無資格無経験で取得した場合は、試験に合格した後2日間の講習を受ける必要があるので注意しましょう。
03. ビルメンの
上位資格について
この項では、ビルメンの上位資格について解説します。ビルメン4点セットと何が違うのでしょうか?
3-1.ビルメンの上位資格とは?
ビルメンの上位資格とは、ビルメン4点セットとは異なり、
- この資格の所有者でなければ行えないビルメン業務がある
- この資格の所有者の選任が、法律で義務付けられている
といった特徴があります。ビルメン4点セットに対し、ビルメン3種の神器と呼ばれることもあるのです。最近では、消防設備士を上位資格の1つに加えることもあるでしょう。
- 建築物環境衛生管理技術者
- 第三種電気主任技術者
- エネルギー管理士
の3つが、上位資格として有名です。これらは難関資格であり、ビルメン4点セットに比べると需要が高く、取得していれば「ぜひうちに来てほしい」という企業もたくさんあります。また、昇進にも有利です。
3-2.それぞれの資格の特徴と資格取得方法
この項では、それぞれの資格の特徴や資格取得方法を紹介します。ぜひ、参考にしてください。
3-2-1.建築物環境衛生管理技術者
建築物環境衛生管理主任技術者は、ビルなどの環境衛生の維持管理に対する監督等を行う国家資格です。建築物衛生法で、床面積が3,000m2(学校の場合は、8,000m2)以上の建物には選任が義務づけられており、ビルメンを一生の仕事とする場合は、取得しておいて損はありません。
主な業務は、ビルの清掃や害虫駆除、空気や上下水道の点検などの業者との契約や検査の立ち合い、テナントや自治体との折衝などで、オーナーからビル管理の全権を任されることもあるでしょう。
資格を取得するには、2年以上の実務経験を積んで日本建築物環境衛生管理教育センターが主催する試験を受けて合格する方法と、医師や電気主任技術者などの資格を取得した後で、ビルメンの実務経験を積み、センターが主催する103時間の講習を受講して修了する方法があります。試験の合格率は23%前後と決して高くはありません。しかし、講習も時間と費用(108,000円)がかかるため、できるだけ早く取得したい方は、試験のほうがおすすめです。
3-2-2.第三種電気主任技術者
第三種電気主任技術者は、電圧が5万V未満の事業用電気工作物の保安監督業務を行うことができる資格です。不特定多数の人が利用する設備では、ビルや工場で使われる事業用電気工作物が設置されているため、定期的に電気主任技術者による点検が必要になります。そのため、有資格者は重宝されるでしょう。
電気技術者試験センターが主催する試験を受け、合格すれば資格取得が可能です。第三種電気主任技術者の試験は学科試験だけですが、電気関連の資格の中では最も難しく、合格率が10%を切る年も珍しくありません。試験科目は理論・機械・法規・電力の4科目で、科目合格が認められています。3年間ですべての科目を合格できれば資格が取得できますので、数年かけて試験に挑戦してもよいでしょう。
なお、認定校を卒業してから一定の実務経験を積み、経済産業省の認定を得る方法でも資格取得が可能ですが、認定条件が厳しく、現在では試験を受けて資格を取得する人が大部分となっています。
3-2-3.エネルギー管理士
エネルギー管理士は、定められた量以上の電力や熱エネルギーを使う施設において、電気や燃料の使用方法の改善・監視・電気や熱エネルギーを使用する設備の維持管理の仕事を行える資格です。電気管理士と熱管理士があり、ビルメンの仕事には電気管理士のほうが役立つでしょう。
資格を取得するには、省エネルギーセンターが主催する試験を受けて合格する方法と、エネルギー使用に関する実務経験を3年以上積み、認定研修を受ける方法があります。合格率は19%となかなかの難関です。
3-2-4.消防設備士
消防設備士は、消防法で設置が義務づけられている消火器設備・警報設備・避難用具などの設置工事や点検・整備などを行える資格です。不特定多数が利用する施設では、必ず消防設備の設置が義務づけられていますので、資格を取得していれば、仕事の幅が広がるでしょう。今までご紹介してきた資格の中では最も取得しやすい資格です。
消防設備士には、甲種と乙種があり、甲種は特類と1~5類・乙種は1~7類に分かれています。甲種は整備・点検・工事を行うことができるのに対し、乙種は整備と点検だけしか行うことができません。また、甲種を取得するには乙種を取得して一定の実務経験を得る、大学や短大・専門学校で土木・電気・工業化学・建築にかんする学科を卒業する、電気工事士の資格を取得する、などの条件が必要です。ビルメン4点セットのうち、電気工事士の資格を取得した後に挑戦するのもよいでしょう。
なお、現在のところ、この資格を取得すれば、すべての消防設備の工事・整備・点検を行うことができる、という資格区分はありませんので、注意してください。
消防設備士の資格を取得するには、消防試験研究センターが主催する試験を受けて合格する必要があります。1種類でも資格を取得していれば、ほかの資格区分を受ける際に試験科目の一部が免除になるので、取得しやすくなるでしょう。試験は学科試験と実技試験がありますが、実技試験は学科試験の延長のようなもので、何かを作成する試験ではありません。合格率は、平均すると50%前後です。
04. 各種試験
の勉強方法
今回ご紹介した試験は、どれも書店等で参考書や過去問題集が販売されています。ですから、すべて独学が可能です。上位資格のうち、消防設備士以外はすべて合格率が20%以下ですので、気合を入れて勉強しましょう。また、通信教材でもこれらの資格を扱っています。通信教材はDVDを使った教材などもあり、よりわかりやすくなっていますので、独学では自信がない方や、一度独学で試験にチャレンジし、落ちてしまったという方にもおすすめです。
ビルメン業界に就職するために資格を取得したい場合は、まずビルメン4点セットの中から資格を取得し始め、合格できたら3種の神器に挑みましょう。特に、電気工事士の資格を取得できなければ、電気主任技術者の資格はまず取得できません。また、エネルギー管理士の試験は、電気主任技術者の試験で必要な知識と一部内容が重複しています。ですから、電気主任技術者の資格を取得すれば、エネルギー管理士の勉強も行いやすいでしょう。
05. ビルメンの上位資格に対する
よくある質問
Q.ビルメンの上位資格を取得したほうが、転職や就職に有利ですか?
A.はい。もちろんです。特に、建築物環境衛生管理技術者はビルメン業界では引っ張りだこになるでしょう。また、電気主任技術者の資格は、電気関係の仕事に就くにも有利です。
Q.ビルメン三種の神器のうち、難易度が高いものはどれでしょうか?
A.合格率だけで見るならば、第三種電気主任技術者です。また、ほかの資格も試験科目が多かったり、一定の実務経験を積まなければ受験資格が得られなかったりといった難しさがあります。無資格無経験の場合は、まずビルメン4点セットから取得を目指すほうがおすすめです。
Q.ビルメン4点セットだけでも、ビルメンの仕事はできますか?
A.はい。可能です。しかし、仕事の幅を広げて昇進を有利に進めたいのならば、ビルメン三種の神器取得を目指しましょう。
Q.建築物環境衛生管理技術者は、現在ビルメンの仕事に就いていなくても受けられますか?
A.はい。実務経験があったと証明できれば可能です。かつての職場に職務証明書などを発行してもらってください。
Q.消防設備士は、無資格未経験でも取得できるでしょうか?
A.乙種ならば可能です。ただし、消防設備士は取得後も定期的に講習を受ける必要があります。取得をしたら、ぜひ資格を活用できる仕事に就き、実務経験を積んで甲種の取得を目指しましょう。
06. まとめ
いかがでしたか? 今回はビルメンの上位資格について解説しました。これらの仕事は、ビルメンの仕事をしながらでも取得できます。まずはビルメン4点セットを取得してビルメンの仕事を行い、上位資格を目指してもよいでしょう。難関資格ですから、30代以降の受験者も珍しくありません。1度や2度の失敗で諦めないことが大切です。