ボイラー点検の種類やメンテナンスの手順を解説

ボイラー点検の種類や
メンテナンスの手順を解説!
点検に必要な資格は?

ボイラーとは、燃料を燃焼させる燃焼室と、燃焼室で生まれたエネルギーを利用して水をお湯、もしくは水蒸気に変換する熱交換器を持つ装置の総称です。発電機や乗り物を動かす動力源・給湯器・暖房などに幅広く利用されています。その一方で、ボイラーの整備を怠ったり、取り扱い方を間違えたりすると大事故につながることもあるでしょう。そのため、法律によって点検が義務づけられています。

そこで、今回はボイラーの点検の種類や、メンテナンスの手順などを解説しましょう。

この記事を読めば、ボイラーに関する資格についてもよく分かりますよ。ボイラーを取り扱う仕事に就きたいと考えている方も、ぜひ読んでみてくださいね。

01. ボイラーの
基礎知識

はじめに、ボイラーの種類や使用目的・整備の重要性などを解説します。どのような場所で使われているのでしょうか?

ボイラーの使い道

前述のように、ボイラーは燃料を燃やして水を沸かし、お湯を供給したり水蒸気を動力源にしたりする装置です。蒸気機関車や蒸気船など、ボイラーが動力源として使われた乗り物もたくさんありました。現在でも、火力発電所のタービンはボイラーが動力源です。

また、商業施設・病院・学校などの給湯設備や暖房設備は、ボイラーを利用しているところも多いでしょう。公衆浴場のお湯を沸かすのも、ボイラーを利用しています。

ボイラーの種類

ボイラーには、

  • 簡易ボイラー(労働安全衛生法施行令第13条第25号で規定されているボイラーの通称)
  • 小型ボイラー(労働安全衛生法施行令第1条第4号で規定されたボイラー)
  • ボイラー(簡易ボイラーにも小型ボイラーの基準にも当てはまらない大型のボイラー)

という3つの種類があります。より詳しいサイズなどを知りたい方は、労働安全衛生法施行令を確認しましょう。ボイラーはさらに小規模ボイラーや大規模ボイラーなど、大きさによって区分されています。

取り扱いや点検について

前述したように、ボイラーは取り扱い方を間違えると大規模な爆発事故が起こる可能性があります。また、整備を怠っても同様です。ですから、ボイラーの取り扱いや整備には国家資格が必要になります。ただし、すべてのボイラーの取り扱いや整備に資格が必要というわけではありません。

  • 簡易ボイラー:構造規格の遵守は義務づけられているが、検査などは義務づけられていない。整備は設置主が自主的に行う
  • 小型ボイラー:製造・輸入の際に検査が必要。1年に1度の定期自主検査が義務づけられている
  • ボイラー:製造には許可が必要。製造や輸入をしたら検査を行い、1年に1度の定期自主検査が義務づけられている

検査や定期点検にかんしては、以上のように法律で定められています。また、小型ボイラーを取り扱うには特別教育を受けることが必要です。ボイラーは、大きさに応じてボイラー取扱技能講習の修了が必要だったり、ボイラー技士の資格が必要だったりします。簡易ボイラーは法律上取り扱いに資格はいりませんが、特別教育やボイラー取扱技能講習を受けた人が取り扱うのが一般的です。

02. ボイラーの
点検について

この項では、ボイラー点検の種類や行える資格・場所などを説明します。どのような手順でメンテナンスをお行うのでしょうか?

ボイラーに課せられた点検義務

小型ボイラーおよびボイラーは、年に1度自主点検を行う義務があります。また、ボイラーは1か月に1度、事業主が責任者となって定期点検を行い、結果を記録しておく必要があるので覚えておきましょう。ボイラーの定期自主検査の指針は、安全衛生情報センターのホームページ上で公開されています。

年に1度の自主点検は性能検査ともいい、運転を停止してボイラーを開放・整備した状態で行わなければなりません。そのため、年に1度は必ずボイラーを停止する日が必要です。ただし、所定の条件を満たせば、運転を止めても開放しないで検査を行える機種もあります。認定を受ければ開放検査を2~4年に1度にすることはできるでしょう。

性能検査を行う団体について

月に1度の自主点検は、ボイラー整備士やボイラー技士がいれば、職場内の人間で行うことができます。しかし、年に1度の性能検査は、厚生労働大臣の登録を受けた登録性能検査機関で行わなければなりません。登録性能検査機関(検査事務所)は、日本ボイラ協会のホームページに一覧が記載されています。性能検査を行う場合は、2か月前くらいから申し込むことが一般的です。

性能検査の流れ

前述したように、性能検査はボイラーを止めて行わなければなりません。ですから、

  1. ボイラーの運転を止める
  2. ボイラーを冷却する
  3. ボイラー内部の換気・清掃・整備を行う
  4. ボイラーの検査中にバルブ・コック・ダンパーなどが誤って作動しないように策を講じる

といった事前準備をしておく必要があります。なお、検査事務所は整備は行っていません。整備などは専門の業者に依頼するか、自社で雇用しているボイラー整備士が行います。

また、検査に必要な書類として

  • 検査を受けるボイラーの検査証
  • 過去3年分の定期自主検査記録
  • 取扱作業主任者の免許(ボイラー技士等)
  • 整備したボイラー整備士の免許
  • その他、整備や検査の記録

がありますので、事前に準備しておきましょう。当日はボイラー技士やボイラー設備士が立ちあって検査を行います。

その他の検査など

ボイラーの検査はこれまでご紹介してきたものの他に、

  • 製造直後の検査
  • ボイラーを輸入した際の検査
  • 一度取り扱いをやめたボイラーを再度使用する際の検査

などがあります。ボイラーを新しく設置した、もしくは長年使っていなかったボイラーを再使用する場合は、必ず検査を受けましょう。

また、検査の結果メンテナンス箇所が見つかったら必ず修繕してから再検査を受けてください。検査に不合格になったボイラーを使用して事故が起こった場合は、ボイラーの所有者に罰則があります。

03. ボイラーに関する
資格について

最後に、ボイラーに関する資格について解説します。取得を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

資格の種類

ボイラーに関する資格には

  • ボイラーを取り扱う資格(ボイラー技士・ボイラー取扱者)
  • ボイラーを整備する資格(ボイラー整備士)
  • ボイラーを製造する資格(ボイラー溶接士)

があります。ボイラーに関する資格を取得したい場合は、ボイラーを運転したいのか整備したいのか、それとも製造したいのかによって、取得する資格が異なりますので注意しましょう。

なお、ボイラー技士の資格を取得しても整備士の資格がなければ、整備を行うことはできません(点検は可能)。そして、修繕箇所をみつけても、溶接士の資格がなければ修理は不可能です。

ボイラーを扱う現場に必要な資格

ボイラーを取り扱う職場では、主にボイラー技士・ボイラー取扱者が必要とされます。ボイラーを整備点検する業者に就職する場合は、ボイラー整備士の資格が必要になるでしょう。発電所などボイラーが故障すると大変なことになる職場では、ボイラー技士とボイラー整備士が両方常駐していることもあります。

資格取得の方法

ボイラー取扱者の資格は、日本ボイラ協会ボイラ・クレーン安全協会が主催している講習に参加すれば取得できます。講習は2日間かけて行われるので、仕事をしている方は職場の理解を得て参加しましょう。

ボイラー技士および整備士の資格は、安全衛生技術試験協会が主催する試験を受けて合格すれば取得できます。ボイラー技士には特級・1級・2級の3種類があり、特級・1級は一定の実務経験などがないと受験できません。ですから、無資格無経験の方は2級から受験しましょう。2級と整備士の資格は、受験資格がいりません。ただし、2級はボイラー実技講習を受けることが、免許交付の条件です。

整備士の場合は、一定の整備補助の実務経験がないと免許交付が受けられません。なお、整備士は職業訓練校のボイラー運転科を修了すれば、実務経験の代わりになります。ですから、整備士の場合は免許を取得した後で実務経験を積み、免許を取得する方も珍しくありません。

ボイラー溶接士には普通と特別があります。溶接の実務経験が1年あれば普通ボイラー溶接士の受験資格を得ることができ、普通ボイラー溶接士の経験が1年あれば、特別ボイラー溶接士の受験資格を得られるのです。

試験の内容など

ボイラー技士・ボイラー設備士の試験科目は、学科試験だけです。試験は全国各地の安全衛生技術試験センターで行われますので、安全衛生技術試験協会のホームページを確認してください。遠方の方は宿泊準備も必要です。

試験は、

  • 2級ボイラー技士:毎月
  • 1級ボイラー技士:隔月
  • 特級ボイラー技士:年1回
  • ボイラー整備士:年3回

行われます。年に何度受けてもかまいません。試験科目は

  • ボイラー技士:ボイラーの構造に関する知識・ボイラーの取扱いに関する知識・燃料・燃焼に関する知識・関係法令
  • ボイラー整備士:ボイラー整備に対する知識・ボイラー整備に使用する器材や薬品の知識・関係法令・ボイラーの容器に対する知識

です。1科目につき100点満点中60点以上で合格になりますが、科目合格はありません。

ボイラー溶接士は、学科と実技の試験があります。こちらも100点満点中60点以上で合格です。

試験申し込み方法など

ボイラーに関する資格は安全衛生技術試験協会が一手に行っていますので、協会のホームページを見て申し込みを行いましょう。資格によって必要書類が異なります。また、特定の実務経験や資格を取得していれば試験科目が一部免除になりますので、試験要項は必ず確認しましょう。願書は全国の安全衛生技術試験センターで配布しており、郵送でも申し込めます。電子申請は行っていませんので注意しましょう。
また、2級ボイラー技士のように毎月試験が行われる資格は、会場がいっぱいになれば早めに募集が打ち切られることもあります。

04. ボイラー点検に関する
よくある質問

Q.ボイラーの整備士とボイラー技士、両方の資格を取得することはできますか?
A.はい。問題ありません。取得すればボイラーの取り扱い・点検・整備を1人で行うことができます。

Q.小型ボイラーの取り扱いは、ボイラー技士でなくても可能ですか?
A.可能ですが、技士の資格を取得した方が有利でしょう。

Q.ボイラーの点検は、必ず指定された機関で行わなければなりませんか?
A.はい。それ以外の場合は認められないので注意しましょう。

Q.ボイラーの整備が不十分な場合、罰則は誰が受けますか?
A.ボイラーの所有者です。大抵の場合、建物の所有者や会社のオーナーが該当します。

Q.整備と点検を一度に行ってくれる団体はあるでしょうか?
A.いいえ。現在のところはありません。

05. ボイラー点検
まとめ

いかがでしたか? 今回はボイラーの点検やメンテナンスについて解説しました。ボイラーは事故が起きると大きな被害が出る可能性が高いものです。ですから、定期的な検査と整備が義務づけられています。簡易ボイラーは点検義務がありませんが、定期的な整備は必ず行いましょう。事故が起きてからでは遅いのです。また、大型のボイラーの場合は整備計画も入念に立てましょう。

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