衛生管理とは、従業員が衛生かつ健康的に仕事を行えるように職場環境を整える仕事です。会社が毎年実施している健康診断も、衛生管理の一環として行われています。衛生管理者とはこのような衛生管理の仕事を担うことのできる国家資格であり、職種に関係なく50名以上の従業員が所属している事業所には、選任が義務づけられているのです。
今回は、衛生管理者の職務内容や第二種衛生管理者の資格を取得するための試験対策などを紹介しましょう。
この記事を読めば、第二種衛生管理者の試験勉強の方法などもよく分かりますよ。第二種衛生管理者の資格取得を考えている方は、ぜひ読んでみてくださいね。
01. 衛生管理者の
基礎知識
はじめに、衛生管理者の歴史や種類・職務などを解説します。どのような仕事を行うことができるのでしょうか?
衛生管理の歴史
労働者は、安全かつ衛生的に仕事を行う権利があります。しかし、仕事によっては、どうしても健康被害が出やすいものもあるでしょう。危険を伴う仕事に就いている人の健康管理は、1950年代までは医師の仕事でした。しかし、医師だけでは職場の衛生管理を完ぺきに行うのは不可能、という声が出はじめ、1966年に衛生工学衛生管理者という資格が制定されます。これは、有毒ガスや粉じんといった健康に悪影響を与える物質が発生する職場で、衛生工学に基づいて衛生管理を行うことのできる資格です。
その後、1972年に労働安全衛生法と、それに基づいた労働安全衛生規則が制定され、それと同時に衛生管理者の資格が制定されました。1989年に労働安全衛生法が改定され、それに伴って衛生管理者は第一種と第二種に分かれ、現在に至ります。
20年ほど前までは、衛生管理の仕事は有害物質が原因の健康被害を防ぐことが主でした。しかし、現在では仕事のストレスが原因で発生するうつ病や心筋梗塞・脳出血などの労働災害を予防することも大切な職務になっています。
衛生管理者の職務について
衛生管理者の職務には、
- 健康診断の実施と結果の管理
- 週に1度以上の職場巡視
- 衛生委員会(安全管理者が選任されている職場では、安全衛生委員会)の設置と運営
- 産業医と従業員の橋渡し
- ストレスチェックの実施補佐
- 衛生教育の実施
- 労働衛生保護具や救急箱などの定期点検
などがあります。また、従業員だけでは改善できない職場の問題点があった場合は、改善するように経営者とかけあうことも仕事の一つです。
衛生管理者の種類と選任義務
衛生管理者には、一種と二種があります。一種は、すべての職種で衛生管理を行うことが可能です。有害物質を取り扱ったり製造したりする職場は、第一種衛生管理者しか衛生管理を行うことができません。第二種衛生管理者は、店舗などでの販売業や、事務仕事が中心のオフィスなど、有害業務が少ない職場で衛生管理を行うことができます。現在、利用者が増え続けている介護施設の衛生管理も、第二種衛生管理者が行うことが可能です。
衛生管理者は、前述したように職種にかかわらず、50名以上従業員が所属している事業所で選任義務があります。勤務形態は問いません。パートやアルバイトが49人に正社員1名の職場でも選任は必要です。また、従業員のほとんどが外部に派遣されており、事務所には常時責任者しかいないような職場でも、50名以上従業員が所属していれば衛生管理者を選任しなければなりません。
資格を取得するメリット
衛生管理者の有資格者は、大企業ほど需要があります。また、衛生管理者の選任が必要とされない50人未満の職場でも、「安全衛生推進者」の選任を受けられるので、有資格者は優遇されるでしょう。
現在は技術の発達によって、有害物質や作業用の機械が原因で発生する労働災害は減少傾向にあります。その一方で、長時間労働やパワハラ・セクハラといったことが原因で発生する労働災害は、増加傾向です。ですから、衛生管理者の職務はこれからますます重要視されるようになるでしょう。第二種衛生管理者の資格を取得できたら、ぜひ、第一種にも挑戦してみてください。働ける職場が増え、昇給も望めるでしょう。また、心理相談員などの資格を取得しておくとキャリアアップにもつながります。
02. 第二種衛生管理者を
取得する方法
この項では、第二種衛生管理者を取得する方法について紹介します。受験資格などは必要なのでしょうか?
取得方法の種類
衛生管理者の資格を取得するには、2つの方法があります。1つは大学で薬学や医学など所定の学科を専攻し、薬剤師・保健師・医師などを取得した後で労働基準監督署に申請をする方法です。薬剤師・保健師・医師等の資格を取得していると、無試験で第一種衛生管理者の資格が取得できます。
もう1つは、衛生管理の実務経験を一定期間積み、安全衛生技術試験協会が主催する試験を受けて合格する方法です。第二種衛生管理者の場合は、大学や短大・各種専修学校を卒業していれば1年、高校を卒業していれば3年の実務経歴があれば受験資格を得られます。詳しいことは協会のホームページを確認してください。
試験の科目や合格ライン
衛生管理者の試験は、
- 労働衛生
- 関係法令
- 労働生理
の3科目の択一式問題です。第二種、第一種とも同じ科目ですが、第二種の場合は有害業務にかんする問題は出題されません。第二種の場合、問題は各科目10問で、100点満点中60点以上で合格です。ただし、1科目でも40点未満であれば不合格になるので注意しましょう。たとえば、1教科が100点でも他の教科が30点だった場合は不合格になります。
なお、第二種衛生管理者を取得した後に第一種の試験を受ける場合は、労働生理の科目が免除になるので覚えておきましょう。
試験を申し込む方法など
衛生管理者の試験は、全国各地の安全衛生技術センターで行われます。最低でも月に1回は試験があり、東京や大阪などの大都市にあるセンターでは、月に3,4回試験が行われていますので、詳しくは安全衛生技術試験協会のホームページを確認してください。
受験回数に制限はなく、1年間で何度試験を受けても問題ありません。ただし、試験の申し込みは先着順であり、試験会場がいっぱいになれば募集期間であっても申し込みが締め切られることもあります。土日に行われる試験は人気があり、申し込みが殺到するため、「この日しか試験を受けられない」という場合は、早めに申し込みましょう。
安全衛生技術センターが遠いという人向けに、年に1度各都道府県で出張試験が行われます。こちらも協会のホームページに実施日や申込期間・試験会場が発表されますので、目を通しておきましょう。こちらは、早期募集締め切りなどの措置はほぼありません。しかし、早めに申し込んでおくと安心です。
試験を申し込むには、願書に必要事項を記入して
- 免許証など本人を確認する書類
- 卒業した学校を確認できる書類(卒業証書の原本など)
- 実務経験を確認できる書類(事業者証明書)
を添付し、受験を希望する安全衛生技術センターへ送付します。近くにお住まいの方は、窓口に直接持参しても構いません。願書は、安全衛生技術試験協会のホームページから郵送を申し込むことができるほか、各センターでも配布しています。添付書類の作り方も協会のホームページに記載してありますので、よく読んでから作成しましょう。受験料は6,800円です。電子申請は行えません。
03. 第二種衛生管理者の
試験対策について
この項では、第二種衛生管理者の試験に合格するための勉強方法などを紹介します。ぜひ、参考にしてくださいね。
衛生管理者試験の勉強方法について
衛生管理者の試験勉強には、独学・講習会の利用・通信教材の利用という、3種類の方法があります。独学で勉強する場合は、書店やネットショップで参考書と過去問題集を購入し、自分のペースで勉強を行いましょう。衛生管理者の試験問題は、過去問から似たような問題がよく出題されます。ですから、参考書を読むだけでなく、過去問題を必ず3年分は解いておきましょう。参考書と問題集がセットになった本も販売されていますので、可能ならば中身を確認し、理解しやすいものを選んでください。
講習会とは、資格取得の講習会を専門に行っている会社や、各地の安全教育センターで行われるものです。専門の講師が試験に出るポイントなどを解説してくれます。1,2日で修了するものが大半なので、独学の総仕上げとして参加してもよいでしょう。質問もできますので、事前に分からないことをまとめておくのがおすすめです。費用は、1,2万円代が相場で、会社が費用を負担してくれるところもあります。
通信教材は、独学より費用がかかりますが、模擬問題の回答を送れば添削して送り返してくれるほか、メールによる質問も受け付けてくれるところもあり、便利です。分からないところがそのままになってしまうこともないので、実力がつきやすいでしょう。初めて試験にチャレンジする方や、独学で勉強する自信がない方におすすめです。
おすすめの参考書など
第二種衛生管理者の参考書の中では、日本実業出版社から刊行されている「最新7日間完成衛生管理者試験合格塾」や、公論出版から刊行されている、「出るとこマスターシリーズ」などが人気です。どちらも、参考書と過去問題集がセットになった参考書で、短期間で合格に必要な知識が身につくことをウリにしています。
衛生管理者の試験は毎月行われるので、短期間の勉強で試験にのぞむ方もいるでしょう。そのような方にとってはおすすめですが、説明が不十分で分かりにくいという意見もあります。必要な知識を時間をかけてでも身につけたい方は、弘文社から刊行されている「わかりやすい 第二種衛生管理者試験 」のような、過去問とセットになっていない参考書がおすすめです。
勉強方法のコツ
衛生管理者の試験を受ける方のほとんどが、仕事をしながら試験勉強をすることでしょう。第二種衛生管理者の試験は、合格率が65%を超えています。そのため、簡単な試験だと思う方もいるかもしれません。しかし、衛生管理者の試験は1年に何度もチャレンジできるため、合格率も高いのです。1発合格をする方は25%前後と言われています。
また、試験まで時間があまりない方も珍しくないでしょう。ですから、仕事が終わってから勉強するのではなく、通勤時間や昼休みも試験勉強にあてるといいですね。たとえ30分でも毎日勉強すれば知識も身につき、週末にまとめて勉強するよりも集中力が持続しやすいでしょう。
合格発表の方法など
衛生管理者の合格発表はとても早く、10日以内に結果が分かります。最新の合格者は安全衛生技術試験協会のホームページで発表されますので、確認しましょう。合格者には後日合格通知書が郵送されます。不合格だった場合は、結果通知書が郵送されますので、大切に取っておきましょう。この通知書を願書に添付すれば、試験に再チャレンジする時に、これ以外の添付書類は必要ありません。また、各科目の点数も通知書に記載されていますので、自分が取れなかった科目の復習に力を入れましょう。
04. 衛生管理者試験のよくある質問
Q.第二種衛生管理者を取得してすぐに、第一種衛生管理者の資格試験を受けても大丈夫ですか?
A.受験資格を満たしていれば問題ありません。
Q.衛生管理の仕事自体は、無資格でも行えますか?
A.はい。衛生管理者の補佐は無資格でも大丈夫です。
Q.衛生管理者の試験に科目合格はありますか?
A.ありません。
Q.第二種衛生管理者の試験はどのくらい勉強すれば、合格できますか?
A.1か月の勉強で合格できたという声が多いですが、全く知識のない状態から勉強する場合は2~3か月は腰を据えて勉強した方がよい場合もあるでしょう。
Q.衛生管理者の試験は、他府県で受けることも可能ですか?
A.問題ありません。
05. 第二種衛生管理者
まとめ
いかがでしたか? 今回は、第二種衛生管理者の試験対策などを解説しました。国家資格の中では易しいと評されることの多い試験ですが、全く勉強しないで合格できるほど甘くはありません。仕事をしながら受験勉強を行う場合は、効率よく勉強できる方法を考え、実践していきましょう。