消防設備士・消防設備点検資格者など、消防に関する資格はたくさんあります。火災の予防・警戒に努め、国民の生命・身体および財産を火災から保護するためには、専門知識を持っておかなければなりません。その専門知識を有している証(あかし)になるのが、資格です。では、具体的に消防の資格にはどんな種類があるのでしょうか。本記事では、消防の資格の種類・各資格試験について説明します。
この記事を読むことで、消防の資格についてよく分かります。資格取得を考えている方は、ぜひチェックしてください。
01. 消防の資格とは?
まずは、消防・消防法・主な就職先・資格取得のメリットについて説明します。
1-1.消防とは
火事を消し延焼を防ぐこと、火災・災害の警戒・予防することを「消防」といいます。日本では、江戸初期から火消(し)と呼ばれる組織が存在していました。明治初年以来、警察行政の一部として行われていましたが、第2次世界大戦後に消防組織法と消防法の制定によって、警察から分離し、独自の体制を確立したのです。
1-2.消防法について
消防法は、昭和23年7月24日に制定され、8月1日に施行されました。消防に関する資格は、消防法に基づいているのできちんと把握しておかなければなりません。消防法の主な目的は、以下の3点となります。
- 火災の予防・警戒・鎮圧により国民の生命・身体財産を保護する
- 災害による被害を軽減する
- 災害などによる傷病者の搬送を適切に行う
また、消防法によって、設備などの設置・義務内容などが定められているのです。
1-3.主な就職先
資格の種類によって異なりますが、主な就職先は、ビルメンテナンス会社・管理会社・消防設備の設置や点検を請け負っている会社などです。消防設備のあるところでは、設備の設置・点検ができる有資格者を求めています。消防法によって、消防設備は定期点検が義務づけられているのです。そのため、設置・点検ができる有資格者は、大企業からの需要も高めでしょう。
1-4.資格取得のメリット
大きなメリットは、就職・転職に役立つことです。資格所得が、応募条件に含まれる職場もあります。資格を取得しておけば、幅広い求人の中からやりたい仕事が選べるでしょう。
さらに、資格手当という基本給以外の収入を得ることができます。給与面でもメリットがあるため、消防関連の仕事に就く方は資格を取得したほうが良いでしょう。
02. 消防の資格の種類
それでは、消防の資格にはどのような種類があるのでしょうか。主な資格の消防設備士・消防設備点検資格者・防火対象物点検資格者について説明します。
2-1.消防設備士
消防設備士は、建物に設置されている消火器・感知器など消防用設備の、点検・整備・工事ができる国家資格です。大きく分けて、甲種と乙種の2種類があります。乙種は消防設備の点検・整備、甲種は乙種の内容に加えて工事が可能です。さらに、扱う消防用設備によって8つに分類されています。そのうち、第1~5類はそれぞれ甲種と乙種の2種に分かれているため、消防設備士の資格は全部で13種類です。
2-2.消防設備点検資格者
消防設備点検資格者は、消防用設備などの点検を行うことができる国家資格です。消防設備士とは異なり、整備・工事を行うことができません。そのため、消防設備士とセットで取得したほうが良いといわれています。
種類は特種・第1種・第2種の3種類があり、それぞれで点検できる消防用設備の種類が変わるので注意してくださいね。主な種類は、以下の通りです。
- 特種:特種消防用設備など
- 第1種:屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・屋外消火栓設備・消防用水など
- 第2種:児童火災報知設備・ガス漏(も)れ火災警報設備・避難器具・非常警報設備など
2-3.防火対象物点検資格者
防火対象物点検資格者は、防火対象物用途の実態や消防計画に基づいた防火管理の実施状況など、火災予防に関わる事項を総合的に点検できる国家資格です。防火対象物は、不特定多数の人に利用される建造物を指します。たとえば、劇場・映画館・ナイトクラブ・飲食店・百貨店・ホテル・共同住宅などです。
2-4.そのほか
ほかには、可搬消防ポンプ等整備資格者・防災管理点検資格者講習などがあります。
可搬消防ポンプ等整備資格者は、市町村が指定する火災予防条例において、可搬消防ポンプなどの点検・整備を行う民間資格です。
防火管理点検資格者講習は、消防法で定めている大規模建築物などに実施が義務づけられている「防災管理業務の実施状況」について、定期的な点検ができる国家資格を指しています。
03. 消防の各資格試験について
消防設備士・消防設備点検資格者・防火対象物点検資格者、それぞれの資格試験について説明します。
3-1.受験資格
- 消防設備士:乙種は受験資格なし。甲種の受験資格の詳細は、試験を実施している「一般財団法人 消防試験研究センター」で確認
- 消防設備点検資格者:15項目の受講資格の内、いずれかに該当しなければ受験できない。15項目に関しては、主催の「一般財団法人 日本消防設備安全センター」でチェック
- 防火対象物点検資格者:13項目の受講資格のうち、いずれかに該当しなければ受験できない。13項目に関しては、「一般財団法人 日本消防設備安全センター」で確認
3-2.試験の免除について
ある一定の条件をクリアしていれば、試験の免除が可能です。消防設備士の場合は、第1~第7類における試験内容の一部が、ほかの類の免状を取得している際に免除となります。また、電気工事士・電気主任技術者・技術士および日本消防検定協会の職員などは一部免除が適用可能です。
消防設備点検資格者と防火対象物点検資格者の場合は、一定の要件に該当する者だけが科目の受講免除が申請できます。ただし、修了考査の場合は免除できませんので注意してください。
修了考査とは、きちんと講習で必要な知識を身につけているか確認するための試験です。講習の最終日に実施され、全体出題数の70%以上合格した方が合格となります。テキストの持ち込みが可能なので、合格率は約90%と高めです。修了考査で不合格となった場合は、修了考査を受けた日から1年以内に、1回に限り再考査を受けることができます。ただし、再考査手数料として3,390円かかるので気をつけてください。
詳細は、それぞれの主催団体ホームページをチェックすると良いでしょう。
3-3.試験概要
申し込み方法、試験日・試験地、受講料について説明します。
3-3-1.申し込み方法
- 消防設備士:書面申請か電子申請。書面申請は、受験する試験の種類ごとに必要な書類をそろえて、各センターに提出。電子申請は、主催団体のホームページからできる。申し込み期限は、受付開始日から1週間となっているので要注意
- 消防設備点検資格者と防火対象物点検資格者:書面申請のみ。実施地の申請書提出先へ申請期間内に提出。申請期間は約2週間となっているので要注意
詳細は、各主催のホームページをチェックしてください。
3-3-2.試験日・試験地
- 消防設備士:全国各地で月に1~4回ほど実施。試験日は試験地によって異なるため、詳細は消防試験研究センターで確認
- 消防設備点検資格者と防火対象物点検資格者:月に1回、全国各地で実施。詳細は日本消防設備安全センターをチェック
3-3-3.受験料
- 消防設備士:甲種 5,000円/乙種 3,400円
- 消防設備点検資格者:科目免除なし 31,800円/科目免除あり 29,800円
- 防火対象物点検資格者:科学免除なし 38,000円/科目免除あり 36,000円
3-4.試験内容
消防設備士の試験は、甲種・乙種とともに筆記と実技があります。試験科目は以下の通りです。
- 消防関係法令
- 基礎的知識
- 消防用設備などの構造・機能・工事(甲種だけ)・整備
- 製図(甲種だけ)・鑑別などの実技試験
消防設備点検資格者と防火対象物点検資格者は、講習と講習後に行われる修了考査によって資格を取得することになります。消防設備点検資格者の場合は3日間の講習と2時間の修了考査、防火対象物点検資格者の場合は4日間の講習と2時間の修了考査です。講習内容に関しては、どちらも「日本消防設備安全センター」で確認してください。
3-5.受講義務について
消防設備士免状を有する者は、免状交付を受けた日以後、最初の4月1日から2年以内に講習を受けなければなりません。なぜなら、消防用設備の工事・整備に関する新しい知識と技能を習得しなければならないからです。講習を受けなければ、違反点が加点され、免状の返納命令処分が発せられる可能性があるので注意してください。
また、消防設備点検資格者と防火対象物点検資格者も、5年ごとの再講習が義務づけられています。講習は、技術的・法制的に変化し改正されていく消防用設備・特殊消防用設備などの知識を得るために必要です。
3-6.問い合わせ先
試験内容などについて疑問があるときは、それぞれの主催団体に問い合わせてください。電話またはメールから問い合わせができます。
- 消防設備士:消防試験研究センター
- 消防設備点検資格者・防火対象物点検資格者:日本消防設備安全センター
3-7.おすすめの勉強法
勉強法はライフスタイルに合わせることが大切です。独学で勉強している方はいますが、分からないところを自分で解消しなければなりません。スクールに通う選択肢もありますが、時間割が決まっているので行けなくなることがあります。そのため、仕事で忙しい方は通信講座が良いでしょう。通信講座なら、自分のペースで勉強を続けることができます。
ただし、一夜漬けで試験に合格できるわけではありませんので、勉強計画を立てることが大切です。毎日数十分でも勉強を続けていきましょう。
04. 消防の資格に関してよくある質問
消防の資格に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.消防用設備の種類とは?
A.水バケツや乾燥砂などの簡易消火用具・屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・粉末消火設備・動力消防ポンプ設備などがあります。それぞれの設備の内容や効力・設置義務などについても、把握しておかなければなりません。
Q.それぞれの合格率・難易度が知りたい
A.消火設備士の合格率は、乙種が約44%、甲種が約30%です。難しい試験ではありませんが、合格率が高いわけでもないので地道な勉強が必要でしょう。消防設備点検資格者は講習と修了考査で取得できるため、合格率は約90%です。防火対象物点検資格者も講習と修了考査で取得でき、合格率は約90~97%となります。
Q.消防設備士は女性でも活躍できるのか?
A.もちろん、女性でも消防設備士として活躍している方がいます。求人内容を見ても、「男性だけ」と記載されているところはありませんので安心してください。消防法で定められている消防設備の点検・整備・工事ができるのは、消防設備士だけです。女性も需要は高いでしょう。
Q.消防設備士の資格を取得するメリットとは?
A.転職・就職・給与面だけではありません。消防設備士の資格を取得すると、防火管理技能者・消防設備点検資格者の受講資格が獲得できます。また、甲種消防設備士としての実務経験が5年以上ある場合は、特殊建築物等調査資格者の受講資格が取得できるのです。さらなる、資格の幅を広げることができるでしょう。
Q.消防設備士以外に役立つ資格とは?
A.消防関連の資格だけでなく、電気工事士・危険物取扱者などの資格を取得すると役立ちます。電気工事士は電気工作物の工事ができ、危険物取扱者は危険物の取り扱いができる資格です。どちらもビルメンテナンスに有利な資格となります。
05. まとめ
消防関連の主な資格は、消防設備士・消防設備点検資格者・防火対象物点検資格者の3つがあります。この中でも、上位資格となる消防設備士は、消防設備の点検・整備・工事ができる資格です。甲種は受験資格がありますが、乙種はありません。受験資格を満たしていない場合は受験できる種類から取得していきましょう。また、消防関連の資格種類を把握しておけば、就きたい仕事に有利な資格が分かります。どんな仕事がしたいのか、明確にしておきましょう。