電気技術者として働きたいのなら、電気主任技術者の資格取得を目指しましょう。電気は、私たちの暮らしに欠かすことができないエネルギーのひとつです。ただし、取り扱いを間違えると危険で、大きな事故につながることもあります。電気設備を正しく取り扱い、日々の点検や保安管理を行うことで、安心して使用できるのです。今回は、電気主任技術者の主な仕事内容や役割を学ぶと共に、資格試験合格のためのコツなども詳しく解説します。
この記事を読むことで、電気技術者として働くために必要なことが分かり、資格取得に向けて適切な準備を進めることができます。まずは、記事を読み進め、内容をしっかり頭に入れてください。
01. 電気技術者とは?
最初に、電気技術者の役割・主な業務・種類など詳しく解説します。選任義務についても理解しておきましょう。
1-1.電気主任技術者について
電気主任技術者とは、事業用電気工作物の工事や維持および運用に関する保安監督を行うための国家資格で、電験と呼ばれることもあります。電気工事に関する資格としては、電気工事士も人気です。電気工事士は電気工事を行う資格ですが、電気主任技術者は電気工事を行うことができません。電気工事士と電気主任技術者では、職務が異なることを理解してください。
1-2.電気主任技術者の制度について
電気主任技術者制度の歴史は古く、1896年に電気事業取締規則で主任技術者が取り入れられました。制度は随時見直しや改定が続き、1995年の電気事業法の改正により、第44条に資格の根拠が記載されたのです。電気技術の発達と共に、電気主任技術者への期待と責務が大きくなってきています。
1-3.電気主任技術者の役割や主な業務
電気主任技術者の主な業務は、事業用電気工作物の適切な運用・維持・保管管理に努めることです。また、従業員の安全教育の実施も大切な役割となります。電気に関する正しい知識を身につけているからこそ、日々の安全運用を任せることができるのです。電気主任技術者は、事業用電気工作物に関するプロフェッショナルと言っていいでしょう。
1-4.電気主任技術者の種類
電気主任技術者は、第一種から第三種まで3つの種類に分かれます。各種類の取り扱い可能範囲に関しては、以下を参考にしてください。
- 第一種:すべての事業用電気工作物
- 第二種:電圧が17万V未満の事業用電気工作物
- 第三種:電圧が5万V未満の事業用電気工作物(出力5千kW以上の発電所は除外)
1-5.電気主任技術者の必要性や選任義務について
電気事業法の規定により、企業が事業用電気工作物を設置する場合は、保安監督を行う主任技術者を選任する義務があります。選任義務がある事業所は、電力会社や発電所・変電所だけでなく、工場・病院・商業施設・宿泊施設など多種です。電気主任技術者の資格取得者は、企業からの必要性が高く、貴重な人材と言えるでしょう。
02. 電気主任技術者の仕事内容について
電気主任技術者の仕事内容や主な職場について詳しく解説します。
2-1.電気主任技術者の仕事内容とは
電気主任技術者の主な仕事内容は、以下のとおりです。企業内の電気設備に関する業務全般を任せられると考えておくといいでしょう。
- 電気設備の点検と保安
- 電気設備の修理
- 電気工事の監督
- 点検・保安記録の作成と管理
2-2.電気主任技術者の主な職場
電気主任技術者が活躍する職場で主なものは、以下をご覧ください。
- 電気保安会社
- 電気設備会社
- ビルメンテナンス会社
- 大型商業施設
- 宿泊施設
03. 電気主任技術者の資格について
電気主任技術者の資格概要や取得のメリットを解説します。
3-1.電気主任技術者の資格概要
電気主任技術者は、電気事業法に準拠した国家資格です。資格取得者は、事業用電気設備の点検・保安・管理業務を行うことができます。資格取得のためには、国家試験に合格するか、既定の条件によって認定を受けるか、いずれかの方法を選択可能です。電気設備を正常に維持することは、事業活動をスムーズに行うためにも需要なことであり、電気主任技術者資格は企業からの需要が絶えることはありません。
3-2.資格取得のメリットとは?
電気主任技術者の資格取得には、主に以下のようなメリットがあります。
- 就職・転職・再就職に有利になる
- 専門性の高い仕事に就くことができる
- 昇給・昇進に有利になる
- 実務経験を重ねると独立も可能
04. 電気主任技術者試験を受けよう
電気主任技術者試験の受験資格や試験概要・試験内容をはじめ、難易度や合格率などを解説します。
4-1.電気主任技術者の受験資格
電気主任技術者には、受験資格はありません。希望する人は、性別・年齢・国籍・経験を問わず受験可能です。未経験者であってもやる気がある人なら誰でも挑戦できるため、将来電気技術者として活躍したい人は資格取得を目指しましょう。
4-2.電気主任技術者の試験概要をチェック
試験概要は、以下を参考にしてください。いずれの種類も試験は1年に1回だけのチャンスとなります。
- 試験日程:(第一種および第二種)一次試験9月上旬・二次試験11月下旬、(第三種)一次試験9月上旬
- 試験地:(第一種および第二種)北海道~沖縄まで全国10か所、(第三種)北海道~沖縄まで全国36か所
- 受験料:(第一種および第二種)インターネット12,400円・郵送12,800円、(第三種)インターネット4,850円・郵送5,200円
- 申し込み方法:インターネット経由もしくは郵送
- そのほかの注意点:試験申し込みは5月下旬~6月上旬
より詳しい内容は、一般財団法人電気技術者試験センターの試験案内ページを参考にしてください。
4-3.電気主任技術者の試験内容について
第一種・第二種・第三種の種類別の試験内容に関しては、以下を確認してください。
4-3-1.第一種および第二種
- 試験科目:一次試験4科目(理論・電力・機械・法規)のマークシート方式、二次試験2科目(電力・管理、機械・制御)の記述方式
- 試験時間:一次試験の理論・電力・機械が1時間30分ずつで法規が1時間5分、二次試験は電力・管理が2時間で機械・制御が1時間
- そのほかの注意点:実技試験はなし
一次試験・二次試験ともに、休憩をはさんで午前から午後まで試験を行います。
4-3-2.第三種
- 試験科目:4科目(理論・電力、・機械・法規)のマークシート方式
- 試験時間:理論・電力・機械が1時間30分ずつで法規が1時間5分
- そのほかの注意点:実技試験はなし
第三種に関しては、一次試験(1日)だけで完結します。
4-4.電気主任技術者試験に実務経験は必要?
受験資格に実務経験は必要ありません。従って、未経験者でも問題なく受験できます。ただし、実務経験者のほうが普段の経験が役立つのも事実です。上級資格である第二種もしくは第一種になると完全に未経験の状態では、より難易度が上がるのは仕方がありません。しかし、実務経験のなさをカバーするほどに万全な準備をすれば合格も可能です。
4-5.電気主任技術者の難易度や合格率
電気主任技術者の合格率は、以下のとおりです。
- 第一種:4.4%
- 第二種:3.0%
- 第三種:8.5%
数字で見るといずれの種類も合格率が低く、難易度は高いと考えていいでしょう。しかし、きちんと勉強をしていけば合格を手にすることは可能なのであきらめないでください。
05. 電気主任技術者の勉強法について
電気主任技術者試験に合格するための勉強法を詳しく解説します。コツをつかんで効率よく学びましょう。
5-1.試験勉強のコツとは?
電気主任技術者の勉強は、計画を立てて無理なく進めてください。電気に関する専門知識が必要なため、準備不足で試験を受けて簡単に合格できる内容ではありません。毎日の通勤時間・帰宅直後の20分程度など、すき間時間をうまく活用してみてください。
5-2.市販のテキストや参考書・講習を活用しよう
試験対策には、市販のテキスト・参考書・DVD教材も役に立ちます。試験対策専門学校の教師など、実際の試験に詳しい著者が出しているもので、評判のいいものを参考にするといいでしょう。実務未経験者は、特に基本から分かりやすく解説してある参考書やDVD教材を選んでください。基本が身についた後は、問題集で多くの例題をこなすことをおすすめします。資格対策の講習をにも参加すると有益です。
5-3.過去問の攻略が大きなカギになる
試験に合格するためには、過去問から出題傾向をつかんで効率よく勉強することが大切です。電気主任技術者の過去問は、一般財団法人電気技術者試験センターの試験の問題と解答ページからダウンロードできます。また、市販の教材などにも掲載がされているので調べてみましょう。過去問は、制限時間内に繰り返し解き、試験形式に慣れておくことも大切です。間違えたり不安が残ったりする部分は、必ず正答を確認し完全に理解しておきましょう。
5-4.電気主任技術者の勉強法に関する注意点
独学は、何かと挫折しやすいものです。挫折を防ぐためにも、適度に気分転換しながら進めましょう。周囲に同じく合格を目指す人がいるのなら励まし合い、勉強会を開いて一緒にがんばるのもいい方法です。また、試験情報に関しては常に最新の情報をチェックしてください。インターネットで調べたり、一般財団法人電気技術者試験センターのホームページをこまめに見たりしましょう。
06. 電気主任技術者の仕事に関するよくある質問
最後に、電気主任技術者の勉強法に関するよくある質問に回答します。確実に試験に合格し、仕事に就くためにもそれぞれ確認しておきましょう。
Q.電気主任技術者は残業が多いのでしょうか?
A.職場の環境や就業条件によって異なります。残業が少ない働き方を希望する場合は、官公庁や大手企業で夜勤がない職場を選びましょう。残業をしても問題がない・シフト勤務でも構わない場合は、管理会社や工場なども候補に挙がります。
Q.電気主任技術者試験は併願可能ですか?
A.第三種と第二種、もしくは、第三種と第一種の組み合わせで併願ができます。第二種と第一種は同じ日程で試験を行うため、併願はできません。すでに実務経験があるなど、知識に自信がある人は併願を考えてみましょう。ただし、未経験者や経験が少ない人は、無理をしてはいけません。まずは、第三種の取得を目指し、合格後に第二種・第一種の取得を目指すことをおすすめします。
Q.電気主任技術者として新卒で就職が可能ですか?
A.電気主任技術者試験は、未経験者でも受験できます。ぜひ在学中に資格取得をして準備を進めましょう。なお、規定の学校・学科で学び、認定制度を利用して資格取得を目指すことも可能です。たとえば、第三種電気主任技術者の場合、大学などで電気工学に関する学科を規定の科目を履修し、修了した人は認定を受けることができます。いずれにしても、在学中に資格取得をしておけば、新卒で電気主任技術者として就職することが可能です。
Q.電気主任技術者として年収アップするためのコツは?
A.第三種取得者は、第二種や第一種を取得して、自らのスキルのレベルアップを証明することをおすすめします。また、同時に実務経験を重ねることも年収アップには必要です。さらに、マネージメント業務を行うことができると大幅なアップも期待できるでしょう。常に新しい知識と経験の吸収に貪欲になり、チャンスを見逃さないようにしてください。
Q.電気主任技術者には更新義務がありますか?
A.更新義務はありません。資格取得後は、半永久的に保持することが可能です。免状を取得した後も、破損や汚損・紛失以外では再交付の必要もありません。しかし、免状は資格取得者の証明であり、大切なものです。ほかの人に悪用されることがないよう、きちんと管理してください。
07. まとめ
今回は、電気技術者の仕事について詳しく解説しました。電気設備の点検や保安・管理は、企業活動を円滑に進め、働く人に安心できる環境を提供するという重要な意味を持ちます。電気技術者になるためには、電気主任技術者試験を受けて資格取得を目指しましょう。なお、電気主任技術者試験に合格するためには、効率よく勉強を進めることが必要です。市販のテキストや参考書・教材などを活用すると共に、過去問の攻略などもしっかりやって万全な体制を整えましょう。