家庭で使用するプロパンガスや商業施設・工場など、さまざまな場所で高圧ガスが使われています。高圧ガスは扱い方を間違えると爆発や火災の可能性がある危険なものです。だからこそ、専門知識を得た有資格者が責任を持って扱わなければなりません。高圧ガスの資格には、さまざまな種類があるので、それぞれの特徴を把握してから受験することが大切です。そこで、本記事では、高圧ガスの基礎知識や関係する資格・高圧ガス製造保安責任者の資格概要や勉強法について説明します。
この記事を読むことで、高圧ガスの資格について詳しく知ることができます。就職・転職・資格試験の受験を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
01. 高圧ガスの基礎知識
高圧ガスの資格について知る前に、基礎知識を身につける必要があります。それでは、定義や高圧ガス保安法・主な種類・決まりごとについて詳しくチェックしていきましょう。
1-1.定義
高圧ガスを簡単に説明すると、高い圧力のガスです。次の項目で出てくる「高圧ガス保安法」では、以下のように定められています。
- 常用の温度において圧力が1Mpa(メガパスカル)以上となる圧縮ガスであり、その圧力が1Mpa以上であるもの。または、温度35℃において、圧力が1Mpa以上となる圧縮ガス
- 常用の温度において圧力が0.2Mpa以上となる圧縮アセチレンガスであり、その圧力が0.2Mpa以上であるもの。または、温度15℃において圧力が0.2Mpa以上となる圧縮アセチレンガス
- 常用の温度において圧力が0.2Mpa以上となる液化ガスであり、その圧力が0.2Mpa以上であるもの。または、圧力が0.2Mpaとなる場合の温度が35℃以下である液化ガス
- 1~3のほか、温度35℃において圧力が0Mpa以上の液化シアン化水素・液化プロムメチルおよび液化酸化エチレン
1-2.高圧ガス保安法について
高圧ガス保安法は、高圧ガスの製造・貯蔵・販売・輸入・移動・消費・廃棄などを規制するとともに、高圧ガスによる災害の防止や、公共の安全の確保を目的とした法律です。1997年の4月1日に、高圧ガス取締法から改題されました。
1-3.主な種類
高圧ガスは、大きく分けて圧縮ガス・液化ガス・特殊高圧ガスの3種類があります。圧縮ガスは、名前のとおり、圧力をかけて圧縮させたガスのことです。カセットボンベやプロパンガスが代表的な液化ガスは、圧縮ガスよりも圧力が低くなります。温度を上げると、急激に体積がふくらんで爆発するのが特徴です。そして、特殊高圧ガスは、圧縮液化天然ガスや液化石油ガスが当てはまります。爆発事故を起こす危険性が高いので、十分に注意して扱わなければなりません。
1-4.高圧ガスの決まりごと
高圧ガスは、爆発・火災の可能性があるため、危険物と同じ扱いとなっています。高圧ガス保安法によって、輸送・保存・取り扱いにかんする規則がきちんと決められているのです。たとえば、高圧ガスを輸送する場合は、資格保持者が同乗しなければなりません。また、国の法律による規則だけでなく、都道府県の省令などで事細かく定められています。
02. 高圧ガスに関係する資格について
高圧ガスに関係する資格は、さまざまな種類があります。どのような資格種類があるのか、一緒にチェックしていきましょう。
2-1.どんな資格があるか
高圧ガスに関係する資格と言えば、高圧ガス製造保安責任者・高圧ガス販売主任者・液化石油ガス設備士が代表的です。ここでは、それぞれの特徴について説明します。
2-1-1.高圧ガス製造保安責任者
高圧ガス製造所の保安を確保するための専門知識を有しているのが、高圧ガス製造保安責任者です。主に、高圧ガスにかんする第一種製造者などの事業所で、保安監督を行います。保安にともなう維持・整備だけでなく、安全性を確保するための保安・指導も行う資格です。
2-1-2.高圧ガス販売主任者
高圧ガス販売主任者は、高圧ガスを販売する事業所において、保安にかんする職務を行う資格です。液化石油ガスやプロパンガスなどの正しい知識を有し、ガス事故の発生を防ぐための保安管理に努めます。また、高圧ガス販売主任者の種類は、家庭などに供給するLPガスにかんする内容だけ取り扱う「第二種高圧ガス販売責任者」と、幅広い範囲で取り扱う「第一種高圧ガス販売主任者」の2種類です。
2-1-3.液化石油ガス設備士
液化石油ガス設備士は、液化石油ガスの保安の確保および取引の適正化にかんする法律に基づき、都道府県知事から免状の交付を受けている者です。液化石油ガス(LPガス)の設備工事や安全を確保するための取り扱いなどを行います。
2-2.必須の資格について
高圧ガス関連の資格はたくさんありますが、ニーズの高い高圧ガス製造保安責任者を取得しておいたほうが良いでしょう。高圧ガス製造保安責任者は、第一種製造者と呼ばれる高圧ガスを使用する事業所に必要な資格です。その事業所では、必ず、高圧ガス製造保安責任者を設置しなければなりません。また、資格の種類によって、働ける職場が異なります。高圧ガス製造保安責任者の資格詳細は、後ほど【3.高圧ガス製造保安責任者の資格について】で説明するのでぜひチェックしてください。
2-3.今後のために取得すると良い資格
高圧ガス製造保安責任者が就任できる「特定高圧ガス取扱主任者」や、一般家庭の燃料ガス製造や供給などを行う「ガス主任技術者」などがおすすめです。特に、特定高圧ガス取扱主任者になると、高圧ガスを取り扱う場所で選任されます。スキルアップや昇給・昇格が期待できるでしょう。
2-4.資格取得のメリット
資格取得のメリットは、転職・就職に役立つことです。ほとんどの事業者や企業が、無資格者よりも有資格者を欲しがっています。上位の資格を取得するほど、ほかの人よりも優位な状態になるでしょう。また、資格を取得すれば、資格手当をもらうことができ、給料面にも大きなメリットが生まれます。
2-5.各難易度・合格率について
高圧ガス製造保安責任者・高圧ガス販売主任者・液化石油ガス設備士の難易度・合格率は、以下のとおりです。
高圧ガス製造保安責任
- 甲種化学:54.1% / 甲種機械:52.7%
- 乙種化学:42.3% / 乙種機械:36.6%
- 丙種化学(液石):42.4% / 丙種化学(特別):48.8%
- 第一種冷凍機械:56.7% / 第二種冷凍機械:34.9% / 第三種冷凍機械:35.0%
高圧ガス販売主任者
- 第一種販売:64.2% / 第二種販売:46.7%
ほか、液化石油ガス設備士の合格率は、34.9%となっています。難易度は、3種類とも「やや易しい」になっているため、きちんと勉強すれば合格できるでしょう。
2-6.そのほか
資格種類によって、取り扱える高圧ガスや仕事内容が異なります。どの資格を取得すべきか悩んでいる方は、どんな仕事に就きたいのか、どんな高圧ガスを扱いたいのか明確にしてください。ある程度、ハッキリさせておいたほうが、適切な資格を選び、勉強を始めることができるでしょう。
03. 高圧ガス製造保安責任者の資格について
それでは、高圧ガス製造保安責任者の資格種類・受験資格・試験概要・試験内容などについて説明します。
3-1.資格種類
高圧ガス製造保安責任者の資格種類は、大まかに分けて、「化学および機械」と「冷凍機械」に区別できます。それぞれ、さらに細かい種類に分かれているため、しっかりチェックしておきましょう。
化学および機械
- 甲種化学・甲種機械責任者:すべての製造施設にかんする保安にかかわることができる
- 乙種化学・乙種機械責任者:製造施設の規模によって、保安技術管理者に選任される場合に限り制限があるが、高圧ガスの製造施設にかんする保安にたずさわることができる
- 丙種化学(特別試験科目)責任者:LPガスの製造にかかわる保安の統括的・実務的な業務ができる
- 丙種化学(液化石油ガス)責任者:天然ガススタンドなど、製造にかかわる保安の実務的な業務ができる
冷凍機械
- 第一種冷凍機械責任者:冷凍にかかわるすべての高圧ガス製造施設にかんする保安にたずさわることができる
- 第二種冷凍機械責任者:1日の冷凍能力が300トン未満の製造施設にかんする保安にたずさわることができる
- 第三種冷凍機械責任者:1日の冷凍能力が100トン未満の製造施設にかんする保安にたずさわることができる
3-2.受験資格
高圧ガス製造保安責任者に受験資格はありません。性別・年齢・実務経験問わずに、誰もが受験できるので、初心者でも気楽に挑戦できるでしょう。
3-3.試験概要
試験日時や場所・受験料・申し込み方法について説明します。
3-3-1.日時・場所
高圧ガス製造保安責任者の試験は、高圧ガス保安協会が実施しています。国家試験となるため、11月第2日曜日の年に1回の試験です。甲種化学責任者・甲種機械責任者・第一種冷凍機械責任者は、経済産業大臣が施行者となるため、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・宜野湾だけで実施しています。乙種化学責任者・乙種機械責任者・丙種化学責任者・第二種と第三種冷凍機械責任者の試験場は、すべての都道府県です。
3-3-2.受験料
受験料は、資格種類と申し込み方法によって異なります。
- 甲種化学・甲種機械・第一種冷凍機械:インターネット 12,400円 / 書面 13,000円
- 乙種化学・乙種機械・第二種冷凍機械:インターネット 8,500円 / 書面 9,000円
- 丙種化学(液化石油・特別試験)・第三種冷凍機械:インターネット 7,900円 / 書面 8,400円
3-3-3.申し込み方法
申し込み方法は、インターネット受付と書面受付の2とおりです。インターネット受付の場合は、高圧ガス保安協会のホームページから申し込みができます。書面受付の場合は、必要書類を協会に請求して、申し込み方法です。
3-4.試験内容
高圧ガス製造保安責任者の試験は、筆記試験だけで実技試験がありません。ほとんどが択一式となりますが、甲種(機械・化学)と第一種冷凍機械責任者だけ、記述式の問題があります。試験科目は、法令(60分)・保安管理技術(90分)・学識(120分)です。ただし、第三種冷凍機械責任者の試験だけ、学識がありません。
3-5.注意点
試験を受ける際は、資格種類を間違えないようにしてください。第三種冷凍機械責任者は、ほかの資格と試験科目が異なるので、事前に確認しなければなりません。効率的な勉強を続けるためには、受験する資格の試験内容をきちんと把握しておきましょう。
04. 高圧ガス製造保安責任者の勉強法について
1発合格を目指すためには、勉強法を把握することが大切です。ここでは、おすすめのテキストや過去問、講座・講習などについて説明します。
4-1.勉強法について
独学・スクール・通信講座など、さまざまな勉強法があります。時間に余裕があれば独学でも構いませんが、分からないところも自分で解決しなければなりません。金銭面に余裕があれば、スクールに通うのも選択肢の1つです。仕事で忙しい方は、自分のペースで勉強できる通信講座が良いでしょう。このように、勉強法はライフスタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
4-2.テキストの選び方
勉強に必要なテキストを選ぶ場合は、自分にとって分かりやすい内容かチェックしてください。たとえ、人からすすめられたものだとしても、理解できない内容であれば選んではいけません。また、試験の重要ポイントが記載されているテキストを選ぶことが大切です。本屋でさまざまなテキストをめくってみて、比較してください。
4-3.過去問
テキストで基礎知識を身につけた後は、過去問を何度も解いてみましょう。過去問から類似問題が出題される可能性があります。引っかかった問題はマークをつけて、理解できるまで何度も解いてみてください。また、試験と同じ時間で問題を解いておくと、安心して本番に挑むことができますよ。
4-4.講座・講習について
化学および機械の資格だけ、毎年実施される講習を受けることができます。講習を受けて検定試験に合格すれば、講習修了認定を受けることができるのです。講習修了認定を受ければ、国家試験の学識と保安管理技術の2科目が免除となります。ただし、講習期間は3日間、1日7時間の授業を受けなければなりませんので注意が必要です。
05. 高圧ガスの資格に関してよくある質問
高圧ガスの資格に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.高圧ガス関連の有資格者の就職先とは?
A.高圧ガスを扱っている工場や事業場・商業施設・オフィスビルなどが職場になるでしょう。ガス会社やビル管理を行っている企業が就職先となります。高圧ガス関連の資格は、幅広い場所で活躍できる資格です。
Q.資格試験を複数受けることはできるのか?
A.同時に複数の試験を受けることはできません。試験日は1日だけとなるため、複数の資格を取得したい場合は、1年ごとにチャレンジしてください。
Q.高圧ガス製造保安責任者の合格基準が知りたい
A.高圧ガス製造保安責任者の合格基準は、各科目60%以上の得点となります。必ず、60%以上を獲得するためには、毎日勉強を続けることが大切です。
Q.講習のほかに、免除制度はあるのか?
A.所有している資格によって、免除制度が利用できます。たとえば、甲種(化学・機械)責任者のどちらかを取得し、持っていないほうの資格の講習を受けた場合は、試験科目がすべて免除です。つまり、受験する必要がありません。詳細は、高圧ガス保安協会のホームページをチェックしてください。
Q.高圧ガス製造保安責任者のおすすめのテキストは?
A.高圧ガス保安協会から発行されている書籍がおすすめです。講習用テキストや問題集・法規集め関係・一般図書・教育用DVDなどが販売されているので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
06. まとめ
いかがでしたか? 高圧ガスは、爆発・火災の危険性が高いものです。取り扱い・保存・輸送をする際は、有資格者の同行や扱いが必要となります。高圧ガス関連の資格を取得したい方は、資格の種類をきちんと把握して、就きたい仕事内容に見合った種類を選んでください。スキルアップや昇格を狙っている方は、高圧ガス製造保安責任者がおすすめです。ニーズが高く、昇給・昇格が期待できる資格と言われています。1発で合格するためにも、試験を受ける前に、資格概要や試験内容をきちんと把握してから、勉強の計画を立てていきましょう。