オフィスビルや工場に設置されている高圧受電設備の保守・管理を行う代表的な資格の1つに、電験3種があります。電験3種の正式名称は、第3種電気主任技術者です。電気主任技術者だけができる仕事内容があり、高圧受電設備がある場所では必要な資格といえます。電験3種を取得するためには、問題集やテキストを利用して勉強しなければなりません。しかし、どの問題集・テキストを利用すればいいのか、悩む方も多いでしょう。そこで、本記事では、電験3種の内容や試験・問題集について説明します。
この記事を読むことで、電験3種の難易度や問題集などについて知ることができます。資格試験を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
01. 電験3種について
電験3種の資格試験について知る前に、基礎知識を深めておかなければなりません。ここでは概要・職務・資格のメリットについて説明します。
1-1.電験とは
電験の正式名称は、電気主任技術者です。電気主任技術者とは、事業用電気工作物の工事や維持および運用にかんする保安の監督を担当します。電気事業法に基づき、電気事業場の責任者が電気保安のために配置しなければなりません。電気事業法43条1項によると、「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事・維持および運用にかんする保安監督をさせるため、免状を受けている者から主任技術者を選ばなければならない」と記しています。電験は、事業用電気工作物の運用に必要不可欠な資格です。
1-2.電験3種とは
電験3種とは、第3種電気主任技術者のことです。電気主任技術者には、第1種・第2種・第3種があり、それぞれの資格によって取り扱うことができる電圧が異なります。各資格が取り扱える電気工作物の電圧を、以下にまとめてみました。
- 第1種:すべての事業用電気工作物
- 第2種:電圧が17万ボルト以内の事業用電気工作物
- 第3種:電圧が5万ボルト以内の事業用電気工作物(出力5,000キロワット以上の発電所をのぞく)
電験3種は、資格試験の中でも下位にあたり、受験しやすい資格といっても良いでしょう。ただし、電験3種が取り扱える電気工作物は限られているので要注意です。
1-3.職務について
主な職務は、オフィスビルや工場に設置している高圧受電設備などの電気工作物を保守・管理することです。電気事業法において、高圧受電設備は定期的な点検が義務づけられています。点検は誰でもできるものではなく、電験の資格を取得している者だけが行える内容です。基本的に、専任された主任技術者は、経済産業省に届け出た保安規定の内容に沿って、業務を行うことになります。
1-4.資格のメリット
電験の資格取得者だけが行える仕事内容があるため、資格取得のメリットはとても大きいものです。日本の法律で、高圧受電設備の保守・管理が義務づけられていることから、仕事がなくなる状態にはなりません。実際に、現在は、電気主任技術者の数が不足しています。電力インフラの整備がすすんでいることもあり、今後も需要が高まるでしょう。資格を取得すれば、就職・転職はもちろんのこと、資格手当などの給与面にもメリットが生まれます。
02. 電験3種の試験について
電験3種の試験科目や内容・難易度・試験合格のポイントについて説明します。受験を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
2-1.試験科目
電気主任技術者の試験は、一次試験と二次試験がありますが、電験3種の試験は一次試験だけとなっています。電験3種の試験科目は、理論・電力・機械・法規の4科目です。電験には、科目別合格制度というものがあり、1度合格した科目だけ、合格後2年間は免除されます。つまり、2年の間にすべての科目に合格すれば、免状取得になるわけです。2年が経過すれば、3科目合格していたとしても、再びすべての科目に合格しなければなりません。
2-2.内容について
理論・電力・機械・法規、それぞれの具体的な範囲内容は以下のとおりです。
- 理論:電気理論・電子理論・電気計測および電子計測
- 電力:発電所および変電所の設計と運転・送電線路および配電線路の設計と運用ならびに電気材料
- 機械:電気機器・パワーエレクトロニクス・電動機応用・照明・電熱・電気化学・電機加工・自動制御・メカトロニクスならびに電力システムにかんする情報伝送および処理
- 法規:電気法規(保安にかんするものに限る)および電気施設管理
一次試験はマークシート(五肢択一)方式となります。理論・電力・機械の試験時間は90分ですが、法規は65分です。
2-3.難易度について
電験の試験は、電気のことを本当に理解して安全に扱えるのかを問われる内容です。高い専門性が必要であり、試験範囲が幅広いため、簡単に合格できる試験ではありません。電験3種の合格率は、約5~8%となっており、やや難しいといえるでしょう。しかし、コツコツと勉強を続けていけば、合格できる可能性が高まります。
2-4.試験合格のポイント
試験に合格するためには、習得しておきたい知識と必要な科目が、大きなポイントとなります。
2-4-1.習得しておきたい知識
電験3種の資格試験に合格するためには、全4科目をきちんと理解することが理想的です。しかし、仕事や学業で忙しく、勉強時間が確保できないという方もいるでしょう。そんなときは、理論と電力の2科目を中心に基礎知識を習得してください。理論と電力で学んだ知識で法規の問題が解けることもあるため、最低限習得しておきたい知識です。また、理論をきちんと学び理解しておかなければ、ほかの科目が理解しにくいということもあります。分からない内容をそのまま放置していれば、試験に合格できませんので気をつけましょう。
2-4-2.必要な科目
電験3種は、計算ができることが必要です。数学的証明問題ではないため、計算方式をきちんと理解しておけば、難なく解くことができるでしょう。電験3種に必要な計算力は、それほど難しい内容ではありません。過去問から頻繁に出題される計算問題を理解しておけば、得点が獲得しやすい項目となります。テキストや参考書・過去問題を活用して、数学の基礎を把握しておきましょう。
03. 電験3種の問題集について
電験3種の試験をパスするためには、問題集の活用が近道となります。おすすめの問題集・参考書や過去問題についても説明するので、ぜひチェックしてくださいね。
3-1.問題集の活用方法とは
参考書やテキストで基礎知識を理解することができたら、問題集に取り組んでみましょう。理論・機械の計算問題は、いくつか解いておくことで、より早く正確に答えを導き出すことができます。過去問題集を解く際に分からない問題がある場合は、すぐに解答・解説を見ている方が多いでしょう。すぐに解答・解説を見るのではなく、テキストで調べながら自分で解く努力をしてください。最初は時間がかかると思いますが、自分の頭で考えて理解することが大切なのです。問題を覚えるよりも、理解することを念頭に置いてください。また、何度も引っかかる問題や分からない問題などは、ノートにまとめておくと良いでしょう。自分なりに整理してまとめることで、理解力が深まります。
3-2.おすすめの問題集・参考書とは
問題集は複数用意しても構いませんが、参考書は1冊にしぼってください。なぜなら、複数用意してしまうと、内容がごちゃごちゃになってしまうからです。1冊の参考書を何度も読み直したほうが、大切なポイントを深く頭の中に入れることができます。また、問題集・参考書選びに悩んだときは、自分にとって分かりやすい内容か、重要ポイントが記載されているかの2点に注目してください。以下に、おすすめの本をピックアップしてみましたので、悩んでいる方は要チェックです。
3-3.過去問題について
国家試験の多くは、過去問題から類似した問題が出題されることがあります。しかし、電験3種は、過去問題から類似問題はほとんど出題されません。同じ内容を問いても異なる形で出題されるので、きちんと内容を理解しておかなければならないのです。過去問題を解くことも勉強法の1つですが、過去問の解き方だけを覚えるような学習方法はしないでくださいね。基礎となる内容をきちんと理解してから、応用として過去問題に着手すると良いでしょう。
04. 電験3種に関してよくある質問
電験3種に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。試験を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
4-1.電験3種よりも上位の資格を取得したほうが良いのか?
電験3種が取り扱える電気工作物は、電圧5万ボルト以内と、資格種類の中でも限られています。そのため、「電験3種では何もできないのではないか」と不安になる方もいるでしょう。しかし、5万ボルト以上の事業用電気工作物とは大規模工場や変電所・発電所などの高圧受電設備です。街中のビルやマンションは電験3種でも扱うことができます。仕事がない状況にはなりませんので安心してください。
4-2.試験に電卓は持ち込んで良いのか?
電験3種の試験内容には、計算方式を用いるものがあります。そのため、試験に電卓の持ち込みはOKとされているのです。しかし、対数計算(log)やsin/cos/tanなどの三角関数計算ができる電卓はNGとなっているので注意してください。試験で使う電卓を選ぶ際は、きちんと持ち込みOKとなっている種類を準備しましょう。
4-3.電験3種の合格基準とは?
現在は、電験3種の合格基準が各科目60点以上となっています。各科目60点以上を獲得すれば、確実に合格できるでしょう。どれか1科目でも60点以下になれば不合格、ということにはなりませんが、試験の難易度によって合格率が低くなる年もあります。年度や科目によっては、60点以内でも合格になることもあるのです。
4-4.どのくらい勉強時間を充てたら良いのか?
電験3種は試験範囲が幅広いため、早めに試験勉強の計画を立てておいたほうが良いでしょう。毎年9月上旬の日曜日に実施されているので、1年を見通して勉強計画を立ててください。仕事や家事・学業で忙しい方は、1年以上かけて勉強を続けたほうが良いでしょう。また、電験3種は科目合格が利用できるため、2年かけて4科目の合格を目指す方もいます。ライフスタイルや自分の理解力に合った勉強法を見つけてくださいね。
4-5.効率の良い勉強法が知りたい
最も重要なことは、参考書・過去問に記載している解説の内容が理解できるまで勉強を続けることです。電験3種の試験は、暗記よりも理解力が大切なポイントとなります。計算問題は、理解して暗記しましょう。法規問題も、数値は丸暗記でOKです。また、文章問題は知識の積み重ねが大切となるため、分からない言葉はノートに書き留めて理解してください。過去問題を解くときは、解説が詳しいものを選び、理解することを目的にすると良いですよ。毎日、数十分でも構いませんので、コツコツと勉強を続けることが効率の良い勉強法につながります。
05. 電験3種の問題集・テキスト
まとめ
いかがでしたか? 電験3種とは、第3種電気主任技術者の略称です。電験は、取り扱える電気工作物の範囲によって、第1種・第2種・第3種に分けることができます。電験3種が扱える電気工作物は、電圧5万ボルト以内です。街中にあるオフィスビルやマンションの高圧受電設備などの保安監督や点検ができる資格となります。ただし、電験3種を取得するためには、国家試験に合格しなければなりません。電験3種の試験科目は、理論・電力・機械・法規の4科目となりますが、試験範囲が幅広い傾向があります。暗記よりも理解力が重要となるため、分からない問題を放置しないでください。テキストや参考書を見ながら、理解できるまで自分で考える努力をしましょう。内容をきちんと理解しておけば、問題集を解くことができます。試験に合格するためには、基礎知識を深めることが大切です。