電気の保安業務従事者の職務は? 資格取得の方法や勉強方法を徹底解説!

電気の保安業務従事者の職務は? 資格取得の方法や勉強方法を徹底解説!

電気は私たちの生活になくてはならないものです。電気がなければ私たちの生活は成り立ちません。その一方で、電気設備の故障やトラブル・漏電事故などが起こると大きな被害が出ます。そのため、オフィスビルや商業施設など電気をたくさん使う場所や発電所・変電所は、電気系統のトラブルが起こらないように定期的に電気設備の自主点検が義務づけられているのです。

そこで、今回は電気設備の点検や保安業務を行える電気の保安業務従事者について解説します。

電気の保安業務従事者になれば、転職や就職などにも有利です。今回は保安業務従事者になるために必要な資格の取得方法も解説しますので、保安業務従事者になりたいという方も、ぜひ読んでみてくださいね。

01. 電気の保安業務の
基礎知識

はじめに、電気の保安業務従事者の概要や職務、保安業務従事者になるために必要な資格などを紹介します。どのような職務を行う仕事なのでしょうか?

電気の保安業務とは?

電気の保安業務とは、電気事業法に基づいて事業用電気工作物の点検業務などを行うことです。事業用電気工作物は高電圧の受電設備や発電・変電設備などで、オフィスビルや大規模な商業施設・発電所・変電所・学校・病院などに設置されています。電気設備を定期的に点検し、整備すれば事故も起こりにくくなるのです。

なお、電気の保安業務は電気主任技術者という資格を取得していなければ行えません。電気主任技術者については、次の項で詳しく説明しましょう。

電気主任技術者について

前述のとおり、事業用電気工作物の保安業務を行うには、電気主任技術者の資格が必要です。電気主任技術者には、第1種~第3種まであり、以下のように保安業務ができる事業用電気工作物の範囲が決まっています。

  • 第1種:すべての事業用電気工作物
  • 第2種:電圧が17万V未満の事業用電気工作物
  • 第3種:電圧が5万V未満の事業用電気工作物(出力5千kw以上の発電所を除く)

電気の保安業務と電気工事の違いについて

電気の保安業務とは、前述のとおり電気設備が正常に作動し続けるように点検や整備を行うことです。電気工事とは、施設内で電気を使うことができるように配線工事などを行ったり、不必要になった電気工作物を撤去したりする業務になります。電気工事を行うには、電気工事士という資格が必要です。また、電気の保安業務を行っている際に電気設備の故障を発見した場合は、電気工事士が工事を行って修理します。電気主任技術者の資格では、電気工事を行うことはできません。

02. 電気の保安業務従事者
について

この項では、電気の保安業務従事者について解説します。どのような立場の人が、保安業務従事者と呼ばれるのでしょうか?

電気の保安業務従事者とは?

電気の保安業務従事者とは、事業用電気工作物を設置している設備の持ち主が、外部委託を行った場合に保安業務を行う人のことです。
もう少し詳しく説明しましょう。本来ならば、事業用電気工作物を設置している施設は電気主任技術者を雇用し、自主点検を行わなければなりません。しかし、どうしても電気主任技術者の雇用が難しい施設もあるでしょう。そのため、電気事業法施行規則第52条第2項において、事業用電気工作物のうち、自家用電気工作物は保安業務を外部に委託することが認められています。委託を請け負うことができるのは、電気保安法人と個人事業主です。そのうち、電気保安法人に所属して電気の保安業務を行う人を、電気の保安業務従事者と言います。ちなみに、個人事業主の場合は電気管理技術者です。名前は異なりますが、行う仕事は同じになります。

保安業務従事者の職務

前述のとおり、電気の保安業務従事者は委託を受けた事業用電気工作物の保安業務を行います。といっても、すべての事業用電気工作物の保安業務を行えるわけではありません。事業用電気工作物のうち、気事業法第38条で規定されている電気工作物(自家用電気工作物)の保安業務を行えます。なお、保安業務従事者に保安業務の委託をできるのは、以下のような電気工作物を設置している施設です。

  • 7000V以下で受電する需要設備
  • 出力1000kw未満の発電所(原子力発電所を除く)
  • 600V以下の配電線路を管理する事業場

これ以外の事業用電気工作物を設置してある施設は、電気主任技術者を直接雇用しなくてはなりません。

電気の保安業務従事者になるには?

電気の保安業務従事者になるには、電気主任技術者の資格を取得した後に一定の実務経験を積んで電気保安法人に雇用される必要があります。実務経験は、第1種:2年・第2種:3年・第3種:4年であり、電気管理技術者になるための実務経験より1年ずつ短くなっていますので、混同しないようにしましょう。電気保安法人は全国に複数ありますが、最も知名度があるのが各地方にある電気保安協会です。電気保安協会では、随時実務経験者を募集していますので、興味がある方はホームページなどをチェックしてみましょう。

なお、電気保安協会の中には、電気の保安業務従事者を目指す補助員を募集しているところもあります。補助員は、電気主任技術者の資格があればなれますので、資格を取得したらまず補助員として働き、保安業務従事者を目指してもよいでしょう。

保安業務従事者と電気管理技術者の比較

電気の保安業務従事者は、電気保安法人に所属して電気の保安業務を行います。勤務形態や勤務時間は電気保安法人が定め、定年などもあるでしょう。一方、電気管理技術者は個人事業主(自営業者)です。勤務時間などは自由に決められますし、定年もありません。その一方で、社会保険や雇用保険などはなく、税金の申告なども自分で行う必要があります。
電気の保安業務従事者として一定期間働き、その後電気管理技術者として独立することも可能です。

03. 電気主任技術者の
資格取得について

この項では、第3種電気主任技術者を中心に、資格取得の方法や勉強のコツを解説します。ぜひ、参考にしてください。

電気主任技術者の資格取得方法

電気主任技術者の資格を取得するには、認定校を卒業後に電気保安業務に対する一定の実務経験を積み、経済産業省の認定を受ける方法と、電気技術者試験センターが主催する資格試験を受験し、合格する方法があります。認定を受ける方法は時間がかかるうえに基準が大変厳しいので、現在では認定を受ける方は減少傾向です

一方、資格試験は受験資格が定められていませんので、学歴や性別・職歴・年齢問わず受験することができます。そのため、他の業種から転職のために資格取得を目指す方も珍しくありません。試験勉強用の参考書も豊富に販売されていますので、資格試験に挑戦する方は年々増加しています。

電気主任技術者の難易度

電気主任技術者の試験は、電気関係の資格では最も難しい試験の一つです。合格するためには、第3種が工業高校の電気科を修了する程度、第2種が電気系の専門学校を修了する程度、第1種が大学の工学部電気科を卒業する程度の知識が必要と言われています。そのため、電気工事士の資格を取得するなどして、ある程度電気にかんする知識を身につけてから挑戦するのも、一つの方法です。

また、電気主任技術者の試験は年々難化傾向にあります。最も取得しやすい第3種でも合格率が10%を切る年が続いているため、1度不合格になってもあきらめないことが大切です。なお、電気主任技術者の資格を活用して仕事をするには、第3種を取得しているだけでも可能ですので、まずは第3種から取得しましょう。

試験科目や申し込み方法

電気主任技術者の試験は、法規・理論・電気・機械の4科目の学科試験です。第3種は学科試験に合格した時点で、総合合格となり、資格取得となります。第1種・第2種の場合は、学科試験に合格した後もさらに「電力・管理」と「機械・制御」の2次試験があり、それに合格しなければ資格は取得できません。

なお、学科試験は科目合格が認められており、3年間で4科目を合格すればよいことになっています。ですから、3年がかりで合格することも可能です。

電気主任技術者の試験は、毎年9月に行われます。第1種と第2種が同日、第3種だけが別の日に試験が行われるので日付を間違えないようにしましょう。詳しい日程等につきましては電気技術者試験センターのホームページを参照してください。ちなみに、平成29年度の試験の申し込みはすでに終了しています。
試験の申し込みは、センターのホームページから電子申請を行うこともできますので、利用してみてください。受験料は第1種・第2種が12,400円・第3種が4,850円になります。なお、願書を郵送して試験を申し込む場合は数百円が余分にかかりますので、注意しましょう。

試験勉強の方法とコツ

電気主任技術者の試験勉強は独学で行うという方も多いことでしょう。確かに、前述のとおり電気主任技術者の参考書は第3種から第1種まで豊富に販売されています。とくに電気書院から刊行されている「これだけ機械」などのシリーズや、オーム社刊行の「易しく学ぶシリーズ」などは人気です。しかし、独学用のテキストはある程度電気の知識がある方向けですので、まったく知識がない方が読んでも、理解しにくいでしょう。

電気の勉強は中学・高校の物理で学んだだけという方は、通信教材のテキストを利用するか講習会に参加しましょう。通信教材を利用すれば模擬問題の添削もしてくれますし、メールや電話で質問を受けつけているところもありますので、知識がより身につきやすいでしょう。

自治体によっては職業訓練校(ポリテクセンター)で講習会を開催しているところもあります。ただし、電気主任技術者の講習は人気科目ですから、受講希望の場合は早めに申し込みましょう。

過去問題集活用方法

電気主任技術者の試験は、過去問題と同じものはほとんど出題されません。同じ公式を使った問題が出ても、問い方が変わっているので、過去問題を暗記すれば解けるということはないでしょう。しかし、公式の応用方法を覚えたり問題慣れをしたりするのに過去問題は有効です。できれば5年間分くらいは解いておくとよいでしょう。

04. 保安業務従事者に対する
よくある質問

Q.電気の保安業務従事者は、何歳になってもなることはできますか?
A.はい。実務経験も必要なので40代以降に保安業務従事者になる方もたくさんいます。

Q.電気管理技術者から保安業務従事者になることは可能ですか?
A.問題ありません。

Q.実務経験は、電気主任技術者の資格を活用して働けば積むことができますか?
A.はい。ただし、業務内容によっては実務経験と認められないものもあります。詳しくは、各地の産業保安監督部に尋ねてみましょう。なお、電気主任技術者の資格取得前に電気保安業務の補助をしていた場合は、年数×0.5が実務経験としてカウントされます。

Q.電気の保安業務従事者は、電気保安協会以外に求人はあるのでしょうか?
A.はい。いろいろな団体が求人を出しています。

Q.電気主任技術者の試験は、いきなり第1種に挑戦しても大丈夫でしょうか?
A.問題はありませんが、かなりの難易度です。大学の工学部電気科、もしくは大学院に在籍している方でもいきなり1種を取得するのは難しいでしょう。

05. 保安業務従事者
まとめ

いかがでしたか? 今回は、電気の保安業務従事者について解説しました。電気主任技術者の資格を取得すると、働き方に幅が出てきます。電気関係の仕事をするならば、ぜひ資格取得にチャレンジしてみてください。難しい試験ですが、取得するメリットは十分にあります。

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