電気主任技術者の罰則は? 選任義務や資格取得方法など解説!

電気主任技術者の罰則は? 選任義務や資格取得方法など解説!

電気主任技術者は電気保安法に基づき、事業用電気工作物の保安業務を行うことができる唯一の資格です。事業用電気工作物が設置されている施設では、有資格者による自主点検が義務づけられているので、必ず電気主任技術者を置かなければなりません。もし、選任せずに運営すれば、法律違反とみなされ罰則を受けることになります。また、事業用電気工作物を安全に扱うためにも、電気主任技術者が必要なのです。

本記事では、電気主任技術者の罰則と選任などについて解説します。

  1. 電気主任技術者の役割と選任義務
  2. 電気主任技術者の罰則内容は?
  3. 電気主任技術者の資格を取得する方法
  4. 電気主任技術者に関してよくある質問

この記事を読むことで、電気主任技術者の選任義務と罰則が分かります。気になっている方は、ぜひチェックしてください。

1.電気主任技術者の役割と選任義務

まずは、電気主任技術者にはどのような役割があるのか、チェックしていきましょう。さらに、選任義務についても軽く触れたいと思います。

1-1.電気主任技術者は電気保安のための責任者

私たちの生活に必要不可欠な電気設備を正しく管理し維持することが、電気主任技術者の役割です。第1種・第2種・第3種電気主任技術者と3つの種類があり、それぞれ担当する電気工作物の区分が異なるので注意してください。それぞれの区分は、以下のとおりです。

  • 第1種:すべての電気工作物
  • 第2種:17万V未満の電気工作物
  • 第3種:5万V未満の電気工作物(出力5kW以上の発電所を除く)

1-2.主な業務・職場とやりがい

電気主任技術者として働くことになると、義務が明確に記載された保安規定が渡されます。選任された主任技術者は、経済産業省に届出た保安規定の内容に添い、業務を遂行することになるのです。たとえば、以下のような業務があります。

  • 所管官庁が法令に基づいて行う検査・審査についての立ち会い
  • 電気工作物の工事・維持および運用に関する保安監督の業務総括
  • 法定自主検査において、検査の指導・監督
  • 電気工作物に関する工事の実施に対する監督業務
  • 電気工作物の設置・改造などの工事計画立案など

ほかにもさまざまな業務があり、事業用電気工作物の保安における責任者という役割を果たします。やりがいは人によってバラバラですが、電気事故にもつながる責任重大な仕事ばかりなので、点検で不具合を見つけ問題解決できたときにやりがいを感じることが多いでしょう。

1-3.電気主任技術者の選任義務

電気主任技術者は、電気事業法43条にて、選任義務が定められています。「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事・維持および運用に関する保安の監督をさせるため、主任技術者を選任しなければならない」のです。そして、主任技術者を選任した設置者は、経済産業大臣に届け出る必要があります。必ず選任しなければ法律違反とみなされ、罰則が課せられることになるので注意が必要です。

1-4.選任する方法は3つ

設置者が電気主任技術者を選任する方法は、主に3つあります。
1つ目は「有資格者選任」で、電気主任技術者の資格を取得している人から選任することです。この場合は主任技術者選任または解任届出書により、国へ選任したことを届け出ることになります。2つ目は「有資格者以外の選任」で、電気主任技術者の資格を取得していなくても電気設備に関し一定の知識や技能を有する人などから選任することです。
そして3つ目は「兼任」。設置者がすでにある自家用電気工作物の事業場の電気主任技術者として選任している者を、別の自家用電気工作物の電気主任技術者として兼任させることを指しています。
また、電気管理技術者または電気保安法人に保安業務を委託する「保安管理業務外部委託」と、選任する方法はさまざまです。

2.電気主任技術者の罰則内容は?

では、電気主任技術者の罰則内容にはどのようなものがあるのでしょうか。主な罰則の内容を詳しく説明していきます。

2-1.設置者が電気主任技術者を選任しない

設置者が電気主任技術者を選任せず、届け出がないまま工事を着工すると違反です。ここでの大切なポイントは、電気設備を設置してからではなく、電気工事を行う時点から電気主任技術者を選任しなければならない点となります。また、選任していた電気主任技術者が辞める場合は、速やかに後任の主任技術者を選任し届出してください。次の電気主任技術者が見つかるまで選任対象者がいない場合は、電気設備を稼働することはできません。選任しないまま稼働すると法律違反になるので、十分に注意してくださいね。

2-2.届け出の内容どおりに点検しない

電気事業法では、電気主任技術者の選任義務と同時に、保安規定の制定と届け出が義務づけられています。ただ、届け出をすればいいというわけではなく、きちんと届け出の内容どおりに行っていなければ違反です。また、よくある間違いが、設備の点検を行う際に押す点検の印となります。基本的に、点検の印は施設の責任者ではなく、持ち主である設置者が押さなければなりません。この点は間違えないようにしましょう。きちんと正しい点検を行うためには、届け出の内容を電気主任技術者だけでなく、設置者も把握することが大切です。

2-3.状況によっては事故で責任を問われることも

電気主任技術者は、電気設備の保安監督における責任者として役割を担うことになります。もし、波及事故や感電事故が起きた際、状況によっては責任を問われることもあるのです。たとえば、きちんと正しい業務を行っていなかったり、不法行為をしたりするなど債務不履行の場合、電気主任技術者の責任となります。死亡事故につながる恐れもあるので、正しく点検を行うことが大切です。適正に電気設備の保安点検や設備を行っていれば、責任が問われることはありません。

2-4.違反をした場合は罰金が科せられる

電気主任技術者に関して違反を犯した場合は、約300万円以下の罰金が科せられることになります。基本的に、罰則内容は罰金になるでしょう。ただし、点検をきちんと行わなかったことが明るみになった場合は、施設の立ち入り検査も行われることになります。立ち入り検査の結果によっては、事業用電気設備の設置許可が取り消されることもあるので要注意です。

3.電気主任技術者の資格を取得する方法

それでは、電気主任技術者の資格を取得するメリットや方法・ポイントなどをチェックしていきましょう。

3-1.転職や就職に有利な立場になる

資格を取得する大きなメリットは、転職や就職に有利な立場になることです。電気主任技術者は、事業用電気工作物の保安業務が行える唯一の国家資格なので、電気を扱うあらゆる施設や工場等で役に立ちます。また、現在は電気主任技術者の人手が足りない状態です。電気は私たちの生活に必要不可欠なものだからこそ、有資格者を欲しがっている会社はたくさんあります。特に、電気主任技術者の上位資格となる第1種を取得している人は、大企業への転職も期待できるでしょう。大企業で実績を積むほど、年収もグッとアップします。

3-2.受験資格はなし、定年を超えても働ける

電気主任者試験の受験資格は定められていないので、無資格無経験でも試験を受けることができます。求人を出している会社でも、「未経験者歓迎」という文字をよく見かけるのは、これが理由でもあるのです。未経験からでも資格を取得し経験を積んでいけば、独立することもできます。また、仕事内容に体力は関係ないので、定年を超えて働く人も増えているのです。実際に、70~80代の技術者も活躍しています。定年を超えて働けるのは、大きなメリットになるのではないでしょうか。

3-3.資格概要

電気主任技術者の国家試験について詳しく解説します。

3-3-1.試験内容

電気主任技術者の試験を主催しているのは、一般財団法人電気技術者試験センターです。全国で年に1回実施されており、第1種と第2種の試験は同日に行われます。試験内容は資格種類によって異なり、第1種と第2種はマークシート方式の1次試験、記述方式の2次試験の2回です。第3種はマークシート方式のみとなります。

<第1種・第2種>

  • 1次試験:理論・電力・機械・法規(4科目)
  • 2次試験:電力・管理、機械・制御(2科目)

<第3種>

  • 理論・電力・機械・法規(4科目)

3-3-2.申し込み方法・受験料

願書の申し込み方法は、郵送とインターネットの2つがあります。郵送申し込みの場合は受験料が12,800円、インターネットの場合は12,400円です。ただし、第3種だけは郵送申し込みが5,200円、インターネット申し込みが4,850円と受験料が異なります。また、申し込み受付期間は5月下旬~6月中旬ごろまでとなっているので、くれぐれも受付期間に気をつけてくださいね。

3-4.ライフスタイルに合った方法で勉強しよう!

独学・スクール通学・通信講座とさまざまな勉強方法がありますが、ライフスタイルに合った方法を選択することが合格への近道です。時間に余裕があり、自分でスケジュール管理ができるなら、独学でもいいでしょう。しかし、分からない問題も自分で解決していかなければなりません。スクール通学の場合は、授業時間が決まっているため、仕事が忙しくなると受けられなくなる恐れがあります。費用も高額なので、仕事が忙しく勉強との両立が難しい方は通信講座のほうがいいでしょう。

4.電気主任技術者に関してよくある質問

電気主任技術者に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.事業用電気工作物とは?
A.電気事業法によると、「一般用電気工作物以外の電気工作物」という定義があります。いわゆる、自家用電気工作物と電気事業用電気工作物の総称です。主に、発電所・変電所・開閉所・電線路・需要設備などがあります。ビルや工場に設置される受電設備のうち、最大電力500KW未満なら、電気工事士法における規制対象物と見なされるので注意が必要です。

Q.電気主任技術者の役割である年次点検とは?
A.日常点検では危険性があることからできない受電設備の細部の点検を行うことです。たとえば、変圧器の中の絶縁油の劣化検査などがあります。月次の点検箇所以外で確認し難いところまで検査を行うため、非常に安全性が高まる点が大きなメリットです。また、遮断機・高圧負荷開閉器・変圧器などの精密点検のほか、絶縁抵抗測定・接地抵抗測定などの各種点検も行います。

Q.電気主任技術者がどうしても選任できない場合は?
A.そのまま放置することは危険ですし、法律違反になります。そのため、なるべく早めに産業保安監督部に相談してください。理由や状況によっては、選任者を選ぶ期間が延長できることもあるでしょう。選任しないまま事業用電気工作物を動かすと、事故を起こす恐れがあるので絶対にしないでくださいね。

Q.立ち入り検査で指摘される事項はどんなものがあるのか?
A.保安規定どおりの点検が実施されていない・保安組織や事業場の変更届け出が行われていない・巡視や点検の記録が適切になされていないなどです。また、電気工作物に関しても、接地抵抗の値が過大・低圧架空電線が植物に接触している・絶縁抵抗値が基準を満たしていないなどの指摘があります。

Q.資格取得のための効率的な勉強方法は?
A.1冊のテキストを何度も読み返し、過去問に挑戦することです。基本的な知識を身につけたら、過去問にどんどん挑戦して行き、苦手な問題をピックアップしましょう。そして、理解できるまで何度も解いてください。理解できるまで何度も解き、問題に慣れることが大切です。

まとめ

電気主任技術者は、法律にて保守点検が義務づけられている事業用電気工作物の設置施設に必ず選任しなければなりません。選任されずに放置していると、法律違反とみなされ罰則を受けます。事業用電気工作物は、比較的大きい電力を保有するため、有資格者が定期的に点検を行い、安全に稼働させることが大切なのです。事故を防ぐためにも、電気主任技術者が大きな役割を担うことになります。また、設置者は、電気設備を設置した時点から電気主任技術者を選任しなければなりません。電気設備を稼働させた後に選任するのはNGなので、きちんと選任義務の内容を把握する必要があります。

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