衛生管理者の職種が知りたい! 主な職務と資格取得の方法について

衛生管理者の職種が知りたい! 主な職務と資格取得の方法について

国家資格の1つとなる衛生管理者は、一定の規模以上の事業場で必要不可欠な職種なので、社会的に大きな役割を担っています。また、衛生管理者は第1種と第2種の2つの資格種類があり、それぞれで担当する職種が異なるのです。自分が就きたい職業が担当できるかきちんと確認しておく必要があるでしょう。本記事では、そんな衛生管理者の職務や職種・資格取得の方法など解説します。

  1. 衛生管理者の選任が必要な職種とは?
  2. 衛生管理者の主な職務は?
  3. 衛生管理者の資格取得方法は?
  4. 衛生管理者の職務に関してよくある質問

この記事を読むことで、衛生管理者の具体的な職務と資格取得の方法が分かります。気になっている方は、ぜひチェックしてください。

1.衛生管理者の選任が必要な職種とは?

まずは、衛生管理者がどのような資格なのか改めてチェックしていきましょう。また、主な職務と選任が必要な職種について解説します。

1-1.衛生管理者は労働者の健康を守り職場環境を整える役職

職場におけるすべての労働者の健康管理の確保と、快適な職場環境づくりを行う専門家の立場にあるのが衛生管理者です。専門家の立場から、職場環境をよりよくするための立案や実施を行うことになります。基本的に、単独で業務をするのではなく、職場の配属先に属して仕事をすることになるでしょう。

1-2.衛生管理の主な職種は総務部または人事部

衛生管理者の仕事内容から、単独で行動する役職のように思われがちですが、基本的には必ずどこかの企業の総務部または人事部に属することになります。50人以上の事業所で必要とされる資格なので、成長段階にある企業が採用に力を入れているといえるでしょう。給料収入にこだわりがあるというよりも、最先端の成長企業で働きたい方に向いている資格といわれています。ただし、衛生管理者の実績を積み重ねていけば、大企業でも働くことが可能です。

1-3.衛生管理の選任が必要な職種

衛生管理者の資格を取得する前に必ず確認してほしいのが、選任義務です。衛生管理者は、労働安全衛生法という法律に基づき、職種に関わらず常時50人以上の従業員を使用している事業所での設置が義務づけられています。つまり、50人以上の従業員がいる企業では、必ず衛生管理者を設置しなければならず、設置しないと法律違反とみなされるのです。また、第1種と第2種で、担当できる企業の職種が異なります。それぞれ担当できる職種は以下のとおりです。

  • 第1種:すべての業種
  • 第2種:商業サービス業(鉱業・製造業・電気業・ガス業・自動車整備業・医療業などを除く)

また、事業所の労働者数によって、衛生管理者の選任数も異なります。労働者数が増えるほど、衛生管理者の数も増やしていかなければなりません。たとえば、200〜500人以下は衛生管理者が2人以上、500〜1000人以下の場合は3人以上の設置が必要です。

2.衛生管理者の主な職務は?

それでは、衛生管理者の主な職務や就職先などを紹介します。

2-1.職務と仕事内容を紹介

前述したとおり、衛生管理者の主な職務と仕事内容は、統括管理・作業環境管理・作業管理・健康管理・労働衛生教育の5つとなります。それぞれの具体的な仕事内容の一部を、以下にまとめましたのでぜひ参考にしてください。

  • 統括管理:労働衛生管理業務の年間計画の作成や予算の管理など
  • 作業環境管理:有害要因を作業環境から除去するための管理
  • 作業管理:作業方法の分析・作業管理の遵守・保護具の点検整備など
  • 健康管理:労働者の健康状態の観察や悪い影響を与える阻害因子の発見と除去など
  • 労働衛生教育:作業者が労働衛生管理体制などについて正しい理解を深める教育

2-2.衛生管理者の就職先は幅広い

衛生管理者の主な就職先は、一般企業から運送会社・建築会社・不動産会社・商社や貿易会社・調査会社・病院など非常に幅広いのが特徴です。常時、従業員が50人以上いる事業所で必要な資格なので、必要としている職場はたくさんあります。中には、さまざまな場所で衛生管理者としての実績を積み重ねている人もいるのです。

2-3.求人傾向は高め

衛生管理者は、人気が高い資格でもあります。もちろん、国家資格としての社会的地位や安定が理由の1つです。しかし、それ以上に、多くの企業が欲しているため、就職・転職に有利という大きなメリットがあります。求人傾向は年々増加しているので、職場の選択肢が広がるでしょう。手に職をつけたい方には、ぴったりの資格だといえます。

2-4.給与アップとキャリアアップも期待できる

衛生管理者を取得するメリットは、給与面にも大きく関係しています。衛生管理者の免許は、その事業所の管理部門や管理職になる際に取得を命じられる資格です。そのため、特に飲食業ではその傾向が顕著に表れており、資格取得が給与アップやキャリアアップにつながることがあります。また、衛生管理者は男女関係なく働ける資格ということもあり、キャリアアップを目指す女性にも人気です。職場相談など、女性の衛生管理者なら気軽に相談しやすいという理由もあるため、女性の衛生管理者は需要が高い傾向があります。

3.衛生管理者の資格取得方法は?

衛生管理者の免許を取得するためには、定期的に行われる国家試験に合格しなければなりません。ここでは、具体的な資格取得方法と試験の内容について解説します。

3-1.受験資格は多岐にわたる

衛生管理者の受験資格は多岐にわたるので、すべての人が受験できるというわけではありません。代表的な受験資格には、以下のような内容があります。

  1. 大学または高等専門学校(短大を含む)を卒業し、労働衛生の実務経験が1年以上ある
  2. 高等学校を卒業し、労働衛生の実務経験が3年以上ある
  3. 労働衛生の実務経験が10年以上ある

そのほかの受験資格に関しては、公益財団法人安全衛生技術試験協会のホームページをご覧ください。

3-2.受験するには実務経験が必要

衛生管理者の受験資格を見ると分かるように、一定の実務経験が必要になります。実務経験とみなされる項目は13あり、いずれか1つの実務経験が証明できれば受験が可能です。たとえば、以下のような実務経験があります。

  • 健康診断実施に必要な事項または結果の処理業務
  • 作業環境の測定等作業環境の衛生上の調査業務
  • 作業条件・実施等の衛生上の改善業務
  • 労働衛生保護具・救急用具の点検および整備業務
  • 衛生教育の企画・実施等に関する業務
  • 労働衛生の統計作成に関する業務など

また、労働衛生の実務経験の確認として、試験申し込み時に事業者証明書を提示しなければなりません。事業者証明書は、実務経験を実施した企業に申請すれば取得できます。提出しなければ受験できないので、事前に用意しておきましょう。

3-3.試験概要

衛生管理者の試験日・試験地、申し込み方法について解説します。

3-3-1.試験は全国7か所で月1〜5回開催される

衛生管理者の試験は、全国7か所の安全衛生技術センターで定期的に実施されます。試験地は北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州です。月に1~5回ほど開催されますが、月によって開催日が異なるため、公益財団法人安全衛生技術試験協会のホームページ等でこまめに確認しておきましょう。

3-3-2.申し込みは郵送、受験料は6,800円かかる

基本的に、衛生管理者の申し込み方法は郵送による方法です。受験に必要な書類を近くのセンターの窓口などで申請し、申請書を作成してから申し込み締切日まで送付します。郵送のほかに、直接センターの窓口へ持参することも可能です。申し込みの締切日は、実施日によって異なるので注意してください。また、受験料は6,800円で申請と一緒に支払うことになります。受験申請書にとじ込まれている払込用紙を使い、最寄りの郵便局または銀行で払い込みましょう。

3-4.試験科目

衛生管理者の試験科目は、第1種・特例第1種・第2種によって異なります。

3-4-1.第1種(第2種衛生管理者免許を受けていない場合または一部科目免除を希望しない場合)

  1. 労働衛生(有害業務に係るもの)
  2. 労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの)
  3. 労働生理
  4. 関係法令(有害業務に係るもの)
  5. 関係法令(有害業務に係るもの以外のもの)

特例第一種(第二種衛生管理者免許を受けていて一部科目免除を希望する場合)

  1. 労働衛生(有害業務に係るものに限る)
  2. 関係法令(有害業務に係るものに限る)

第二種

  1. 労働衛生(有害業務に係るものを除く)
  2. 労働生理
  3. 関係法令(有害業務に係るものを除く)

3-5.衛生管理者の合格率は約45〜50%

衛生管理者の難易度は、国家試験の中でもやさしいほうです。平成28年度の合格率は、第1種が約45%、第2種が50%を超えていました。受験者のおよそ半数が合格している割合なので、きちんと勉強をすれば確実に合格できるでしょう。ただし、第1種はすべての業種が対象になるため、試験範囲が広い傾向があります。第2種よりもスケジュールに余裕をもって勉強を始めたほうがいいかもしれませんね。

3-6.自分に合った勉強法を選ぼう

衛生管理者の資格試験に合格するためには、地道な勉強が必要です。主な勉強方法は、独学・スクール通学・通信講座の3つがあります。時間に余裕があり自分でスケジュール管理ができる人なら、独学でも十分合格できるでしょう。仕事が忙しい方はスクール通学よりも通信講座がおすすめです。スクール通学は授業の時間が決まっているので、残業などで参加できないことがあります。しかし、通信講座なら都合のいい時間に勉強できるのです。自分に合った勉強方法を選び、毎日数分でも勉強を続けてくださいね。

4.衛生管理者の職務に関してよくある質問

衛生管理者の職務に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.最近注目されている衛生管理者の仕事内容は?
A.ブラック企業や過労死など、最近は労働環境の問題が取りざたされています。そのため、職場の労働環境を管理する衛生管理者の位置づけがますます重要になってきているのです。特に、現在の職場環境における問題点を見つけ、いかに快適な職場環境にしていくのかが重要な仕事内容になりつつあるでしょう。

Q.衛生管理者に必要なスキルは?
A.従業員の意見を平等に聞き、客観的な視点から職場環境を捉えることです。主観的になってしまうと、どうしても一定の従業員に偏った職場環境になってしまいます。さまざまな従業員から意見を聞き、職場の問題点を見つけていかなければなりません。また、社内におけるコミュニケーション能力も重要視されるでしょう。ただし、ほとんどの場合は、衛生管理者としての立場になってから必要なスキルが磨かれていきます。

Q.衛生工学衛生管理者とは?
A.試験を受けず、一定の受験資格を有する者が厚生労働大臣の定める講習を受け修了試験に合格することで取得できる資格です。所持資格によっては、一部科目免除が適用されるため、所要日数は最短で半日、最長でも5日に分かれます。修了試験の難易度はそこまで高くないですが、実施する機関が少なく、5日間の講習を受けなければなりません。

Q.衛生管理者の給与はいくらぐらいか?
A.職場にもよりますが、初任給はおよそ250万~300万円前後だといわれています。衛生管理者としての実績を積み、大企業に転職できればさらなる給与アップが期待できるでしょう。また、第2種よりも幅広い職種の事業所で働ける第1種のほうが、企業からの需要が高いので給与が高い傾向があります。スキルアップを目指しながらより高い給与を得たい方は、第1種の取得がおすすめです。

Q.どのくらいの勉強時間が必要なのか?
A.最低でもおよそ1~2か月の勉強時間が必要だといわれています。第2種は範囲が狭いので1か月の勉強時間でも合格できる可能性があるでしょう。しかし、毎日が忙しく、範囲が広い第1種を受ける場合は、3か月以上の勉強時間を確保したほうが安全です。

まとめ

いかがでしたか? 衛生管理者は、職種に限らず一定の事業所に必ず設置しなければならない役職です。資格を取得すれば、転職や職場に有利になるでしょう。ただし、衛生管理者の資格試験を受けるためには、実務経験など受験資格を満たさなければなりません。実務経験がない方は、経験を積みながら勉強を始めるのも方法の1つです。衛生管理者の具体的な職務と資格取得の方法を知り、勉強を始めていきましょう。

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