消防設備士甲種と乙種の違いは? それぞれの特徴と勉強法を解説!

消防設備士の資格には、甲種と乙種があり、それぞれ指定区分に応じた消防用設備等の整備・点検を行うことができます。特に、甲種は乙種と違い、消防設備の工事を行うことができる資格です。ほとんどのビルや商業施設・工場には消防設備があるため、資格を取得することでさまざまな現場で生かすことができるでしょう。本記事では、消防設備士の甲種・乙種の違いや資格取得方法などについて解説します。

  1. 消防設備士の甲種と乙種の違い
  2. 甲種消防設備士の特徴と勉強法
  3. 乙種消防設備士の特徴と勉強法
  4. 消防設備士の資格に関してよくある質問

この記事を読むことで、消防設備士の甲種と乙種の違いが分かります。気になっている方はぜひチェックしてください。

1.消防設備士の甲種と乙種の違い

消防設備士資格には、甲種と乙種の2種類があります。この2つの資格にはどのような違いがあるのか、詳しくチェックしていきましょう。

1-1.消防設備士は消防設備の工事・整備・点検を行う資格

ショッピングモールや劇場・オフィスビル・映画館などには、消火器などの消防設備が設置されています。これらの工事・整備・点検を担う資格が消防設備士です。消防設備士の資格を取得すると、仕事の幅が広がり、就職や転職にも役立ちます。特に、消防設備の設置・点検・整備を請け負っている会社やビルメンテナンス会社からの求人が多く、需要は上昇しているのです。消防設備士は甲種と乙種の2種類があり、それぞれ職務、求人・職場、試験に違いがあります。

1-2.甲種は消防用設備等の工事・設置ができる

消防設備士の甲種は、乙種とは違い、指定区分に応じた消防用設備等の工事と設置を行うことができます。乙種は工事と設置を行うことができないので、この違いが職務の大きな違いといえるでしょう。甲種と乙種は、どちらとも消防用設備等の整備および点検を行うことができます。定期的な整備と点検を行い異常が見られたときに、甲種の有資格者ならその場で工事ができるのです。

1-3.○○類の違い

甲種と乙種では、類に違いがあります。類とは、取り扱いができる消防設備によって分類されている項目です。それぞれの類は以下を参考にしてください。

甲種

  • 甲種特類:特殊消防用設備等
  • 甲種第1類:屋内消火栓設備、屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備
  • 甲種第2類:泡消火設備
  • 甲種第3類:不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備
  • 甲種第4類:自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備 、ガス漏れ火災警報設備
  • 甲種第5類:金属製避難はしご、救助袋、緩降機

乙種

  • 乙種第1類:屋内消火栓設備、屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備
  • 乙種第2類:泡消火設備
  • 乙種第3類:活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備
  • 乙種第4類:自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備 、ガス漏れ火災警報設備
  • 乙種第5類:金属製避難はしご、救助袋、緩降機
  • 乙種第6類:消火器
  • 乙種第7類:漏電火災警報器

1-4.求人数が多く、需要があるのは甲種

甲種と乙種では、求人数と需要が異なります。前述したとおり、甲種は消防用設備の工事ができるので、多くの会社が求める有資格者です。乙種より甲種のほうが需要は高く、幅広い職場を選択することができるでしょう。また、昇級や昇進のチャンスも甲種のほうが多いのです。

1-5.甲種は受験資格が必要、試験時間も多い

甲種は受験資格の制限がありますが、乙種は誰でも受験できます。そのため、高校生など学生のうちに乙種の資格を取得させる工業高等学校もあるのです。また、試験内容にも違いがあります。どちらとも筆記試験は4肢択一、実技試験は記述式ですが、試験時間と試験科目は甲種のほうが多いのです。そのため、勉強時間やスケジュールも甲種は余裕を持って取り組む必要があります。

1-6.初心者は乙種4類がおすすめ

どの資格種類を取得したほうがいいのか分からない方や初心者の場合は、「乙種4類」がおすすめです。乙種4類は受験資格がないので挑戦しやすい資格試験であることはもちろん、未経験者でも気軽に受けることができます。乙種はすべての類において実務経験が必要ありません。また、ほとんどの施設に火災報知器が設置されているため、需要が高く人気がある資格です。消防設備の業界で働きたいけれど、資格も実務経験もない方は、乙種4類の資格を取得してくださいね。

2.甲種消防設備士の特徴と勉強法

甲種消防設備士の特徴と勉強法について解説します。

2-1.甲種は消防用設備の工事と設置ができる

前述したように、甲種は、整備・点検だけでなく消防用設備の工事と設置を行うことができます。仕事の幅を広げたいなら甲種の取得を目指しましょう。特に、甲種4類は、多くの会社で必要としている資格です。取得すれば長期的に活躍することができ、転職時に有利な状況になるでしょう。

2-2.甲種の試験は問題数が多い

消防用設備の工事が含まれる甲種は、試験の問題数が多い傾向があります。筆記試験と実技試験合わせて試験時間は2時間45分です。特類と特類以外によって、試験科目が異なるので注意してくださいね。甲種の試験科目は以下のとおりです。

特類の筆記試験

  • 消防関係法令:15問
  • 工事整備対象設備等の構造・機能・工事・設備:15問
  • 工事整備対象設備等の性能に関する火災・防火:15問

特類以外の筆記試験

  • 消防関係法令:15問
  • 基礎的知識:10問
  • 消防用設備等の構造・機能・工事・整備:20問

実技試験

  • 鑑別等:5問
  • 製図:2問

2-3.甲種の勉強は製図がポイント

筆記試験は基本情報を理解し、暗記ものをきちんと頭の中に入れておけば合格できます。しかし、実技試験は難易度が高く、特に製図で引っかかる人が多いのです。識別問題は乙種も試験科目にありますが、甲種4類には識別に加えて製図の問題もあります。製図は、解答用紙に配線や感知器などを記入し設計図を完成させたり、設置する感知器の個数を答えたりする問題などです。ますは、製図を理解できるようにしておかなければなりません。

2-4.余裕を持って勉強スケジュールを立てる

甲種は試験範囲が幅広いので、余裕を持ったスケジュールを立てて勉強を始めましょう。決して、短期間の勉強時間で合格できる資格ではありません。甲種4類の勉強時間は、実技試験の対策も踏まえて、最低でも3か月の勉強時間が必要です。しかし、3か月という目安期間は、毎日勉強時間が確保できる人に限ります。仕事で忙しい日々を送っている方は、半年を目安にスケジュールを立てたほうがいいでしょう。

3.乙種消防設備士の特徴と勉強法

次は、乙種消防設備士の特徴と勉強法を紹介します。

3-1.消防用設備等の整備・点検ができる

乙種の消防設備士は、消防用設備等の整備と点検を行うことができます。また、甲種にない第6類・第7類の消防用設備を取り扱うことができるのです。第6類は消火器、第7類は漏電火災報知器となります。これらが甲種にないのは、ほかの消防用設備よりも容易で、漏電火災警報器は電気工事士だけが設置できるからです。整備と点検はきちんと実施しなければならないため、乙種の類に存在しています。実務経験がない方は、甲種よりも先に乙種を取得し、経験を積み重ねながら甲種の試験勉強をするといいでしょう。

3-2.乙種の試験時間は1時間45分

甲種よりも難易度が低い乙種は、試験時間が1時間45分と短めです。筆記試験と実技試験があるのは変わりませんが、試験科目と内容に違いがあります。乙種の試験科目は以下のとおりです。

筆記試験

  • 消防関係法令:10問
  • 基礎的知識:5問
  • 消防用設備等の構造・機能・整備:15問

実技試験

  • 鑑別等:5問

3-3.乙種は基礎知識をマスターする

乙種の試験勉強は、基礎知識や基本情報をマスターすることが大切です。実技試験は鑑別等だけなので、筆記試験のほうに力を入れてください。テキストを読み、基礎知識を習得した後は過去問に挑戦してみましょう。そして、過去問で分からなかった問題や間違ったところがあれば、もう1度テキストを読み返してください。理解できるまで何度もテキストを読むことが大切なポイントです。

3-4.理解しやすいテキストを選ぼう

基礎知識をしっかりマスターし理解するためには、自分にとって分かりやすい内容のテキストを選ぶ必要があります。初心者にありがちな失敗なのが、何冊も購入してしまうことです。基本的に、テキストは1冊で十分なので、何度も読み返しましょう。また、ページをパラパラとめくり、なるべく理解しやすい内容が記載されているテキストを選んでくださいね。

4.消防設備士の資格に関してよくある質問

消防設備士に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.消防設備士の講習とは?
A.消防設備士の免状を有する者は、免状交付を受けた日以後、最初の4月1日から2年以内に講習に参加しなければなりません。講習は、都道府県知事または総理大臣が指定する講習機関が行なっているものです。1度講習を受けた後は、受講日以後最初の4月1日から5年以内ごとの受講が義務づけられています。消防用設備等の工事・整備に関する知識は、常に新しい内容に更新されているため、定期的に習得することが必要なのです。もし、講習を受けなければ、免状が剥奪されることもあります。取得した後は、忘れずに講習を受けてくださいね。

Q.試験の一部免除はあるのか?
A.第1~第7類の試験においては、すでにほかの類の免状を受けている場合に試験内容の一部免除が可能です。ただし、乙種の免状を根拠として甲種の一部免除を受けることはできません。また、電気工事士や電気主任技術者を取得している者、技術士第二次試験に合格した者などは、試験内容の一部免除が可能です。条件によって免除内容が変わることもあるため、詳細は、試験の主催である日本消防設備安全センターに問い合わせてください。

Q.筆記と実技、どちらを重視して勉強すればいいのか?
A.なるべく、どちらとも平等に勉強するのが1番です。しかし、勉強時間が足りないときは、甲種は実技、乙種は筆記に力を入れて勉強してください。実際に、甲種試験を受けた人の多くが、実技試験で頭を抱えています。実技試験は記述式なので、より解答の正確さが求められるのです。

Q.どんな勉強法があるのか?
A.独学・スクール通学・通信講座の3つの勉強法があります。比較的、時間に余裕がありスケジュール管理ができる人なら、独学でも構いません。しかし、独学の場合は分からない問題も自分で解決する必要があります。また、スクール通学はお金がかかり、受講時間が決まっているので仕事の都合で受けられない授業もあるでしょう。その点、通信講座なら自分の好きなときに勉強ができます。中には、分からないところをメールで担当の先生に尋ねたり、DVD映像で学習できたいするものもあるのです。

Q.おすすめのテキストは?
A.初心者におすすめしたいのが「消防設備士4類 超速マスター」です。TAC出版から発売されているテキストで、乙種4類を初めて受験する方にぴったりでしょう。科目ごとに解説されており、どんな問題が出題されるのか分かりやすくなっています。また、「消防設備士4類[甲種・乙種]教科書+実践問題」もおすすめです。こちらは書籍だけでなく、電子書籍でも発売されているので重いテキストを持ち運ぶ必要はありません。分かりやすい解説と演習問題が記載されているため、基礎知識をマスターしてから問題を解き、自分の理解力が実感できるでしょう。過去問に挑戦したいときは、一般財団法人 消防試験研究センターのホームページで無料ダウンロードできます。テキストとあわせてチェックしておきましょう。

まとめ

消防設備士の資格には、甲種と乙種があり、消防用設備の工事ができるか否かが主な違いとなります。甲種は設置工事ができますが、乙種はできません。消防用設備の整備・点検が乙種の主な仕事となります。また、乙種は誰でも試験を受けることができますが、甲種は受験資格の制限があるので要注意です。試験内容や科目にもそれぞれ違いがあるため、2つの種類の違いをきちんと把握しておきましょう。受験する資格を定めた上で試験勉強に励んでくださいね。

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