水中溶接の仕事内容

水中溶接の仕事内容、
必要な資格とは?
潜水士の資格について

「水中溶接」は、水の中で行う溶接法のことです。専用のホルダー・溶接棒など地上で行う溶接とは異なる道具を使用して、水の中で作業するので特殊な技術が必要となります。溶接作業の中でも最も技術が必要で、国家資格の潜水士を取得しなければ水中溶解は行えません。水中溶接の仕事に就きたい方は、必要な資格と仕事内容を把握することが大切です。そこで、本記事では、水中溶接に必要な資格と取得方法を説明します。

この記事を読むことで、水中溶接の内容が分かり、潜水士の資格について知ることができます。気になっている方や資格取得を考えている方は、ぜひチェックしてください。

1.水中溶接とは?

まずは、水中溶接がどんな仕事で、通常溶接とどのような違いがあるのかチェックしておきましょう。

1-1.どんな仕事か?

水中で行う溶接作業のことを「水中溶接」といいます。たとえば、海洋構造物を設置するための測量・施工・補修などを行うことになるでしょう。その際は、水中で使える専用ホルダー・溶接棒を使います。海・川・池・ダムなどの機械設備を水の中で溶接するのが、水中溶接の主な仕事です。水中での作業は視野が狭くなり行動が制限されるため、高度な技術が必要になるでしょう。そのため、経験豊富な技術者はどの現場でも重宝されます。

1-2.いつ、どんなときに必要か?

水中溶接を行うシーンはさまざまですが、主に、海底ケーブルなどのインフラ設置・維持管理を行う際に水中溶接を行うことになるでしょう。もちろん、作業現場は海・川・池など水中となります。また、主な就職先は、建設会社です。求人サイトでチェックすると、水中溶接の技術者を募集している建設会社があります。

1-3.通常溶接との違い

水中溶接は、陸上溶接よりも水で瞬間冷却されるための強度が20%低下するといわれています。よって、溶接痕の盛り上がりとなる「溶接ビード」を細かく一定に保ち、強度アップをするスキルが必要なのです。通常溶接よりも高レベルの技術がポイントとなるでしょう。
また、水中での作業になるため、送気管の破損による窒息死や、空気タンクの残量ゼロによる水死など水難事故のリスクが高くなります。陸上よりも危険性が高くなる点は、通常溶接との大きな違いといえるでしょう。リスクが高い作業だからこそ、ほかの溶接工よりも年収が約2~3倍高めです。溶接工の平均年収は約300万~430万円なので、水中溶接は約600万~800万円でしょう。経験豊富な人は、さらに年収が高くなる可能性があります。

2.水中溶接を行う資格とは?

では、水中溶接を行うために必要な資格とはどんなものなのでしょうか。ここでは、必要な資格を紹介します。

2-1.資格は必要?

前述したとおり、水中溶接は通常溶接よりもスキルと技術が必要です。水の中で溶接作業を行うため、潜水士の資格がなければできません。潜水士の資格も、水中溶接の作業に必要な資格となります。また、アーク溶接の特別教育を受けた「アーク溶接技術者」という資格も取得したほうがよいでしょう。専門性が要求される水中溶接なので、アーク溶接の経験を積んだほうが作業しやすくなります。

2-2.必要な資格を紹介!

水中溶接に必要な資格は、「アーク溶接技術者」と「潜水士」の2つです。それぞれの資格の内容をチェックしておきましょう。

2-2-1.アーク溶接技術者

アーク溶接とは、放電現象(アーク放電)を利用して金属をつなぎ合わせる作業です。この作業を行うために必要な資格が「アーク溶接技術者」となります。水中でも電気を使用した溶接作業を行うため、アーク溶接技術者の資格を取得したほうがよいでしょう。また、アーク溶接技術者は、2日間で11時間の学科+1日10時間の実技を請ければ取得することができます。

2-2-2.潜水士

アーク溶接技術者と同様に必要不可欠な資格が「潜水士」です。国家資格の潜水士は、潜水用具を身につけて、水中・水底で作業をするのが主な仕事となります。よく、「普通のダイバー」と間違われることが多いですが、ダイビング講習を受けて取得できるCカードとは異なるので要注意です。潜水士は、Cカードを取得しただけではなれません。具体的な資格内容については、後ほど【3.潜水士の資格とは?】で説明します。

2-2-3.基本級からチャレンジできる「手溶接技術者」

水中溶接に必要な資格は、アーク溶接技術者と潜水士の2つですが、ほかにも「手溶接技術者」という資格があります。手溶接技術者とは、溶接技能者の1種で溶接棒を用いた炭素鋼(たんそこう)に対する手溶接技能を持っている技術者の資格です。技能検定試験を受けるためには一定以上の実務経験が必要ですが、1か月以上の実務経験があれば基本級からチャレンジできます。

3.潜水士の資格とは?

それでは、潜水士の資格内容と取得のメリットについて解説します。

3-1.どんな資格か?

潜水士は、労働安全衛生法の規定に基づき、潜水作業に従事する労働者に必要な国家資格です。労働災害の防止や労働者の保護を目的としており、事業者は無免許の者を潜水作業に従事させてはいけない決まりがあります。潜水による溶接作業のほか、水中掘削・大学や研究機関で行う生物の調査・海上自衛隊・海上保安庁の潜水士などは潜水士の資格が必要です。

3-2.資格取得のメリット

水中溶接を行うためには、潜水士の資格が必要不可欠です。そのため、資格の取得が水中溶接の作業に従事できる証(あかし)となります。取得すれば、多くの企業や事業場で重宝されることになるでしょう。もちろん、転職・就職に有利な状態となり、ほかの溶接工よりも高収入を得ることができます。高度な技術を持っている証拠となるため、スキルアップも可能です。水中溶接の経験が豊富な人は、より規模の大きい作業に従事することができます。

4.潜水士の資格取得について

では、潜水士の資格を取得するために必要な試験内容・勉強法をチェックしておきましょう。受験を考えている方は、事前に試験のポイントを押さえることが大切ですよ。

4-1.受験資格

潜水士の資格試験に受験の条件はありません。年齢・学歴・資格関係なく、誰もが受験できる国家資格となっています。しかし、合格後の免許交付対象が18歳以上となっているので注意してください。たとえば、16歳で試験に合格したとしても18歳まで免状が取得できないため、それまで水中溶接の仕事をすることはできません。

4-2.試験概要

潜水士の資格試験は、「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」が実施しています。試験は、1月・4月・7月・10月に各地の安全衛生技術センターで行われているのです。これらの日程のほかに、出張特別試験も行われています。申し込み方法は、受験申請書を作成して郵送するか、センター窓口へ持参する方法になるでしょう。インターネット申請は行っていないので注意してください。また、受験料は6,800円で郵便局で支払います。支払い忘れのないように気をつけつけてくださいね。

4-3.試験科目

潜水士の試験は筆記の学科試験だけです。午前(10:00~12:00)と午後(13:30~15:30)に分かれ、合計4時間で問題を解いていきます。試験科目と出題数(配点)を以下にピックアップしてみました。

  • 潜水業務:10問(30点)
  • 送気、潜降および浮上:10問(25点)
  • 高気圧障害:10問(25点)
  • 関係法令:10問(20点)

潜水作業における高気圧障害の危険性などに関する知識の習熟に主眼が置かれているため、潜水士の試験に実技試験はありません。そのため、基礎知識をきちんと理解し、問題の答えを正しく導き出せるかが大きなポイントといえるでしょう。

4-4.難易度

気になる潜水士の難易度ですが、近年の合格率を見てみると80%前後で非常に高くなっています。国家資格の中でも「易しい」レベルになっているため、それほど難しい試験ではありません。しかし、決して簡単な試験というわけでもなく、勉強しなければ合格の可能性が低くなります。合格率が高い理由として、警察・海上保安庁へ就職するために学校へ通っている生徒が多い点があるでしょう。学校では試験対策の授業も行っているので、合格率が80%と高めなのです。よって、一夜漬けの勉強では合格が難しい試験といえます。

4-5.おすすめの勉強法

独学・スクール通学・通信講座と、勉強法はさまざまです。時間と経済面に余裕があれば、独学で勉強したり、スクールに通ったりしてもよいでしょう。ただし、仕事と勉強の両立はなかなか難しいものです。なかなか時間が取れずに勉強ができないという方は、通信講座をおすすめします。試験のポイントを押さえたテキストなどがセットになっているため、通信講座なら自分のペースで勉強ができるでしょう。どの勉強法にするべきか悩むときは、ライフスタイルに合った方法を選んでください。

5.水中溶接と潜水士の資格に関してよくある質問

水中溶接と潜水士の資格に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.水中溶接に向いている人とは?
A.水中の作業となるため、泳ぎが得意で体が丈夫な人に向いている仕事といえるでしょう。また、水に潜ってダイビングの楽しさを感じる人、警察・海上保安上・海外自衛隊の潜水士として活躍したい方に最適な作業です。高レベルの技術が必要されるプレッシャーはありますが、とてもやりがいのある仕事となります。

Q.潜水士に将来性はあるのか?
A.潜水士の技術が不要になることは、これから先もありません。技術をきちんと身につけて資格を取得し経験を積めば、潜水士として活躍し続けることができるでしょう。潜水士として作業を行うことがほとんどですが、後輩を指導する技術者として活躍している方もいます。高い技術が必要だからこそ、経験者が後進を指導することに大きな意味があるのです。

Q.潜水の技術を磨く方法とは?
A.ダイビングスクールに通ったり、海上自衛隊・海上保安学校に入隊・入学したりする方法があります。潜水士になるためには潜水の技術を磨かなければなりませんが、資格取得に潜水の技術は必要ありません。なぜなら、試験科目は学科試験だけで実技試験がないからです。そのため、最初に資格を取得してから潜水の技術を磨くという選択肢もあります。

Q.参考書の選び方、勉強の計画を立てるコツとは?
A.参考書・テキストを選ぶときは、自分にとって分かりやすい内容かチェックしてください。評判のよい本でも、分かりにくい内容であれば意味がありません。また、試験の重要ポイントが記載されているのかも要チェックです。つい何冊も購入しがちですが、1冊を何回も読み直したほうが頭の中に重要ポイントをインプットできます。
だいたい1~2か月勉強をすれば試験範囲を学ぶことができるでしょう。しかし、仕事が忙しい方は勉強時間が足りなくなるので、長い目で勉強の計画を立ててください。休みの日に1日中勉強するよりも、毎日数分間の勉強を続けたほうが暗記しやすくなります。

Q.アーク溶接技術者の試験とは?
A.アーク溶接技術者を含む溶接技術者資格は、日本溶接協会が実施しています。資格は、基本級と専門級に分かれ、労働安全衛生法に基づく授業を一定時間受けなければなりません。その後に、評価試験として学科・実技試験を受けることになります。ちなみに、基本級は実務経験が1か月以上の者、専門級は実務経験が3か月以上で各専門級に対応する基本級の資格取得者が対象です。詳細は、日本溶接協会のホームページをご覧ください。

まとめ

いかがでしたか? 水中溶接は名前のとおり、水の中で溶接作業を行うことです。陸上とは異なり、溶接作業が困難な水中で行うため、高レベルの技術が必要とされます。また、水中溶接を行うためには「潜水士」の資格取得が必要不可欠です。法律で潜水士の資格を持っていない者は、水中溶接を行ってはならないと決められています。水中溶接の仕事に就きたい方は、必要な資格をチェックしておきましょう。そして、資格取得のための勉強を始めてくださいね。試験のポイントを押さえておけば、合格に近づくことができるはずです。

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