「電気主任技術者は、工場でどんな役割や仕事があるのだろう」とお考えではないでしょうか。電気主任技術者は、あらゆる業種から引く手あまたの資格です。中でも、工場における需要は安定しており、就職・転職人気も高くなっています。しかし、実際に就職・転職する前に、どんな役割や仕事があるのか知っておきたいですよね。
そこで今回は、工場における電気主任技術者について詳しく解説します。
この記事を読むことで、工場における電気主任技術者の役割や仕事がよく分かります。まずは、記事を読んでみてください。
1.工場における電気主任技術者の役割は?
最初に、工場における電気主任技術者の役割について詳しく見ていきましょう。
1-1.生産活動のための電気工事が主体
工場における電気工事には、主に以下のようなものがあります。いずれも、生産活動を円滑かつ安全に行うために必要なものです。
- 機械の増設に伴う電気工事
- 工場内の照明工事
- 寿命を迎えた機械の入れ替え工事
- 不具合や故障時の修理・交換工事
1-2.工場の電気工事は24時間体制となる
工場では、電気工事を24時間体制で行うことが多くなります。中でも、停電を伴う電気工事は、工場が稼働している時間帯に実施できません。そのため、夜間や休日を利用して確実に電気工事をする必要があるのです。設備の入れ替え工事が大規模であれば、ゴールデンウィークなどの大型連休に行うことも多いでしょう。
1-3.工場における電気主任技術者の役割と重要性
工場では大規模な事業用電気工作物を取り扱っていることが多く、生産活動をスムーズかつ安全に行うためにも、常にきちんと保安・管理することが必要です。電気主任技術者が適当に仕事をした場合、重大なミスや不具合を見逃して大きな事故につながることがあります。直接生産活動に関係しなくても、工場における電気主任技術者の役割と重要性は大きいと言えるでしょう。
2.工場における電気主任技術者の仕事は?
電気主任技術者として工場でどんな仕事をしているのか解説します。
2-1.業界を問わず幅広く求人がある
電気主任技術者は、あらゆる業種の工場から求人があります。たとえば、以下のような業種の工場です。
- 自動車業界
- 精密機械業界
- 住宅業界
- 化学業界
- 重工業界
- 食品業界
工場では、必ず事業用電気工作物を取り扱っているため、電気主任技術者の需要が高くなっています。したがって、希望業種の工場で働くことも十分に可能です。
2-2.工場の電気設備管理や保安が主な仕事
工場における電気主任技術者の仕事には、主に以下のようなものがあります。
- 事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安監督
- 事業用電気工作物の保安に必要な知識や技能の教育
- 事業用電気工作物の保守業務の指導監督
- 事業用電気工作物の工事の実施に関する監督
- 法定自主検査や使用前自主検査の指導および監督
2-3.現場に出向いて作業することが多い
工場では、電気主任技術者が直接現場に出向いて作業することが多いのが特徴です。少なくとも、工場における電気技主任技術者の仕事は、デスクワーク中心であるとは言えません。定期点検にとどまらず、現場からの要請に応じて出向いて職務に当たるのです。問題の原因を見抜き早期に解決するためには、高い技術力と経験だけでなく、コミュニケーション能力も必要になるでしょう。
2-4.交代勤務になることがある
工場の稼働状況によっては、電気主任技術者も交代勤務になることがあり、場合によっては夜勤もあり得るでしょう。工場が安全に稼働し続けるためには、電気主任技術者が電気設備の管理や保安をきちんと行う必要があるからです。平日の昼間だけ働きたいといった場合は、就業条件をしっかりチェックしてから就職することをおすすめします。
3.工場の求人に有利な電気主任技術者の種類は?
電気主任技術者の中でも、工場の求人で有利になる種類について見ていきましょう。
3-1.第一種・第二種が有利
電気主任技術者の中でも特に工場の求人で有利なのが、第一種と第二種になります。工場は、大規模な電気工作物を取り扱うことが多いため、広範囲の仕事を任せることができるからです。第一種と第二種は、特に難関資格であり、取得者数が少ないことも有利になる理由と言えます。しかし、第三種も難関資格であることは採用担当者も十分に承知しているため、不利になることはないでしょう。面接では、さらに上位資格にチャレンジしたいなど、やる気をアピールすることでより好印象を残すことができます。
3-2.電気工事士と電気主任技術者の違いは?
電気主任技術者と同様に工場の就職に有利なのが、電気工事士です。電気工事士とは、自家用電気工作物または一般用電気工作物の電気工事を行うために必要になります。つまり、電気主任技術者は電気工事の保安監督、電気工事士は電気工事を行うのが仕事になるのです。このように、電気主任技術者と電気工事士は職務内容が異なるため、どちらが工場の就職で有利になるかは、一概に言えません。
4.電気主任技術者の資格取得方法
電気主任技術社の資格取得方法を詳しく解説します。
4-1.電気主任技術者は第一種・第二種・第三種の3種類
電気主任技術者は、第一種・第二種・第三種の3種類があります。主な職務内容は、電気設備の工事・維持・運用に関する保安監督です。それぞれに取り扱い可能な電気工作物の範囲は、以下を参考にしてください。
- 第一種電気主任技術者:すべての電気工作物
- 第二種電気主任技術者:170,000V未満の電気工作物
- 第三種電気主任技術者:出力5,000kW以上の発電所以外で、50,000V未満の電気工作物
4-2.受験資格はない
電気主任技術者試験に、受験資格はありません。学歴・年齢・性別・国籍などの制限なく、希望する人は誰でも受験することができます。たとえば、学生のうちに資格取得を目指し、就職に生かすことも可能です。実際に、未経験でもやる気しだいでチャレンジ可能なことから、多くの人が受験しています。
4-3.電気主任技術者の試験概要
電気主任技術者の試験概要は、以下のとおりです。
第一種・第二種
- 試験日程:一次試験 9月上旬ごろ・二次試験 11月下旬ごろ
- 試験地:全国10か所の指定試験会場
- 受験料:郵送12,800円・インターネット:12,400円
- 申込方法:受験申請書を郵送もしくはインターネットで申し込み
- そのほかの注意点:受験申請期間は例年5月下旬~6月中旬ごろ
第三種
- 試験日程:9月上旬ごろ
- 試験地:全国各地の指定試験会場
- 受験料:郵送5,200円・インターネット4,850円
- 申込方法:受験申請書を郵送もしくはインターネットで申し込み
- そのほかの注意点:受験申請期間は例年5月下旬~6月中旬ごろ
なお、より詳しい内容は、一般財団法人電気技術者試験センターのホームページを参考にしてください。
4-4.電気主任技術者の試験内容
電気主任技術者試験の試験内容は、以下をご覧ください。
第一種・第二種
- 試験科目:一次試験4科目(理論・電力・機械・法規)、二次試験2科目(電力・管理、機械・制御)
- 試験時間:一次試験合計335分(理論・ 電力・ 機械の3科目はそれぞれ90分、法規は65分)、二次試験合計180分(電力・管理120分、機械・制御60分)
- 実地試験:なし
- そのほかの注意点:筆記試験(一次試験がマークシート方式、二次試験は記述方式)
第三種
- 試験科目:4科目(理論、電力、機械、法規)
- 試験時間:合計335分(理論・ 電力・ 機械の3科目はそれぞれ90分、法規は65分)
- 実地試験:なし
- そのほかの注意点:筆記試験(マークシート方式)
4-5.近年の合格率は10%以下で難易度は高い
2018年の電気主任技術者試験の合格率は、以下のとおりです。
- 第一種:4.0%(受験申込数2,099・二次試験合格数84)
- 第二種:4.0%(受験申込数9,438・二次試験合格数381)
- 第三種:9.1%(受験申込数42,976・二次試験合格数3,918)
いずれの種類も合格率が10%を下回っているため、難易度は相当高いと言えるでしょう。初級となる第三種でも9.1%で、10人受けて1人受かるか受からないかのレベルです。しかし、試験では各科目60%以上の得点で合格となるため、あきらめる必要はありません。
4-6.過去問を活用し苦手分野の克服を心がける
電気主任技術者試験に合格するためには、試験当日にベストを発揮できるよう効率よく学習する必要があります。具体的には、以下を参考にしてください。
- 過去問を繰り返し解いて出題形式に慣れ、試験の傾向をつかむ
- 過去問を時間内に解くことで、時間配分のコツをつかむ
- 苦手分野は早期に克服し、得点力を高めるようにする
- 市販の参考書・問題集・通信講座を活用し、総合的な得点力をアップする
4-7.試験当日に向けてベストコンディションに持っていく
なお、試験1週間前から当日までは、以下のポイントに気を付けましょう。試験は一発勝負ですから、心身共にベストコンディションで臨めるようにしてください。試験当日に慌てることがないよう、しっかり準備しておくことが大切です。
- 夜更かしや徹夜を避け、十分な睡眠を確保する
- 1日3食、栄養バランスのいい食事を心がける
- なるべくストレスをためないようにする
- 試験に必要なものを早めに確認し、まとめておく
- 家から試験会場までのルートや所要時間を確認しておく
5.工場における電気主任技術者に関するよくある質問
最後に、工場における電気主任技術者に関する質問に回答します。それぞれ確認しておきましょう。
Q.電気主任技術者として工場に勤務した場合、資格手当が支給される?
A.必ずしも資格手当が支給されるとは限りません。毎月数千円程度の手当が至急される場合もあれば、資格取得時に数万円というケースも見られます。また、一切支給なしの場合もあるので、就職前に確認してみるといいでしょう。
Q.工場に就職したら電気主任技術者の仕事だけに専念できる?
A.企業によります。大企業など、社員1人ずつ細かく業務分担されている場合は、電気主任技術者としての仕事に専念できることもあるでしょう。しかし、多くの場合は、事務作業や他部署との連絡業務など、ほかの仕事も担当することになります。
Q.女性でも電気主任技術者として工場勤務できる?
A.可能です。電気主任技術者は、男女の区別なく働くことができます。ただし、工場勤務では男性が多いのも事実です。就職を希望する際は、女性の技術者採用に力を入れているかチェックするといいでしょう。
Q.電気主任技術者としてフリーランスで働ける?
A.可能です。ただし、フリーランスとして企業と契約するためには、実績と人脈が必要になります。まずは、会社員として勤務しながら、スキルアップおよび人脈作りに努めましょう。
Q.電気主任技術者試験に科目合格制度はある?
A.第三種に科目合格制度があります。合格基準を満たした科目は、翌年度と翌々年度の試験において申請により科目免除にて受験可能です。
まとめ
今回は、工場における電気主任技術者について詳しく解説しました。電気主任技術者として工場で働く場合、現場に出向く機会が多かったり交代勤務となったりすることがあります。また、企業ごとに電気主任技術者が担当する仕事の範囲が異なるものです。就職後のミスマッチを防ぐためにも、求人内容をしっかりチェックしてから採用試験を受けましょう。なお、電気主任技術者試験を確実に突破するためには、十分な試験対策が必要です。電気主任技術者試験は、いずれの種類も合格率が10%を切る難関資格なので、きちんと計画を立てて準備を万全にして試験を受けてください。