工場とは、さまざまな製品や製品の原材料を作り出す場所です。その種類は多種多様であり、日本だけでも100種類以上はあるでしょう。このような工場には製品を作る従業員の他に、機械・設備・電気関係などの保安業務を行う人たちがいます。安全かつ安定した製造を行うために、設備保全は欠かせません。
今回は、工場の設備保全の仕事や関連する資格について解説しましょう。
この記事を読めば、どの資格を取得すれば設備保全の仕事に就くために有利なのかも、よく分かります。工場の設備保全の仕事に興味がある方は、ぜひ読んでみてくださいね。
01. 工場の
設備保全とは?
工場では、いろいろな設備や機械を使用して製品を作ります。工場の設備や機械は、高電圧を使用して動くものも多く、パワーも強力です。万が一誤作動を起こしたり、使っている最中に故障したりすれば、大事故につながる可能性があります。そのため、工場の機械や設備、さらに電気系統は定期的に点検整備を行うことが大切です。
設備保全には、事故が起きないように定期的に点検などを行う「予防保全」と、実際に機械や設備の調子が悪くなった後に行い、安全に使えるように元に戻す「事後保全」があります。予防保全が大切ですが、いくら念入りに点検をしても完璧に故障を防ぐことはできません。ですから、設備保全に従事している方は、すぐに事後保全ができる体制を整えておく必要があります。
02. 工場の設備保全の
仕事とは?
この項では、工場の設備保全の仕事内容や、求人の状況などを解説します。ぜひ、参考にしてください。
どんな仕事を行うの?
工場の設備保全の仕事とは
- 普段は機械や設備を取り扱う仕事をしており、点検整備や故障の修理も業務の一環で行う
- 機械や設備にかんして専門の知識や技術を持ち、保守点検や修理だけを行う(主に電気系統)
- 工場機械全般の保全に関する高い技術と豊富な知識を持つ人が、さまざまな機械の保全を行う
といったものがあります。
求人状況などについて
工場の設備保全は目立つ仕事ではありませんが、行う人がいなければ安全に操業することができません。ですから、機械や設備の知識を持っている人や、保全業務の経験者、資格保持者に対する需要はとても高くなっています。最初は小さな工場で設備保全の技術を身につけ、転職をして大きな工場の設備保全を行えば、給与もアップするでしょう。
また、20代・30代前半の人向けに「資格取得をバックアップするので、ぜひ就職してほしい」という求人を出している工場もあります。注意力や集中力が高く、細かい仕事を長時間行っていても大丈夫という方向けの仕事です。
節部保全に必要な資格
設備保全に必要な資格には、以下のようなものがあります。
- 電気系統の設備保全:電気主任技術者・電気工事士
- 工場機械全般の保全:機械保全技能士
- 設備の保全:ボイラー技士・冷凍機械責任者など
なお、これらの資格はあくまでも一例です。求人情報を見ると「この資格を取得している方を優遇します」という記載があるものも多いので、それらも参考にしてください。
資格は絶対に必要なの?
工場の設備保全の中には資格がなくても行える仕事もあります。しかし、電気関係の保全を行いたい場合は資格は絶対に必要です。また、技能士の試験に合格すれば、資格を客観的に証明できます。資格取得をバックアップしてくれる企業も多いので、ぜひ、取得を目指しましょう。
03. 各種資格の取得方法
この項では、各種資格の取得方法を簡単に解説していきます。ぜひ、参考にしてください。
電気系統の資格について
電気工事士・電気主任技術者の資格は、電気技術者試験センターが主催する試験に合格すれば取得可能です。電気工事士には第一種と第二種、電気主任技術者には第一種・第二種・第三種の資格区分があります。受験資格は定められていませんが、第一種電気工事士の資格を申請するには、5年(条件を満たせば3年)の実務経験が必要です。
電気工事士の試験は、学科試験と技能試験があり、電気主任技術者の試験は学科試験のみになります。なお、電気主任技術者の試験は科目合格が認められており、3年以内にすべての試験科目を合格すれば取得可能です。
電気工事士の学科試験は独学でも問題ありません。しかし、技能試験は実際に電気工作物を組み立てる試験です。工具も扱いますので、無資格無経験で独学は難しいでしょう。通信講座などを利用すれば、技能試験に必要な技術を動画で見ることのできるDVDなどが教材でついてくるところもありますので、利用してみるのもいいですね。
電気主任技術者は、電気関係の中で最も難易度の高い試験になります。合格率が10%を切る年も珍しくありません。すでに電気工事士の資格を取得している場合は独学でも大丈夫ですが、無資格無経験で試験にのぞむ場合は、通信教材や自治体などで開催される対策講座を利用した方がよいでしょう。
ボイラー技士の資格について
ボイラー技士は、二級・一級・特級の三種類があり、どの級を取得してもどんなボイラーでも取り扱うことができます。二級は受験資格が定められていませんので、初めて受験する場合は二級からチャレンジしてみましょう。なお、実務経験がない場合は、合格後にボイラー実技講習を受講する必要があります。試験は、安全衛生技術試験協会が主催していますので、詳しい試験日程や一級・特級の受験資格などについては、ホームページを参考にしてください。
ボイラー技士の試験は4科目の学科試験です。二級の参考書や過去問題集は書店やネットショップでも購入できます。それを使用して独学でも合格に必要な知識を身につけることができるでしょう。また、日本ボイラ協会が主催する受験準備講習を受講するのもおすすめです。
冷凍機械責任者について
冷凍機機械責任者とは、高圧ガス製造保安責任者の資格区分の一種であり、冷凍に関わる高圧ガスを製造する施設において保安業務を行うことができます。大型冷蔵庫・冷凍庫を設置している工場では重宝される資格です。資格は一種~三種まであり、一種はすべての冷凍機械、二種は冷凍能力が300t未満のもの、三種は1日の冷凍能力が100t未満の冷凍機械の保安業務を行えますので、覚えておきましょう。工場の設備保全の仕事に就く場合は、二種を取得しておくとより役立ちます。
冷凍機械責任者の資格は、高圧ガス保安協会が主催している資格試験を受験し、合格すれば取得できるものです。試験は3科目の学科試験になります。なお、試験にも後にご紹介する講習にも受験資格は定められていません。
なお、高圧ガス保安協会は講習を主催しており、講習を受講して修了試験を受ければ試験の一部が免除になり、試験対策も行うことができるのです。試験をすべて受けた場合の合格率が35%前後なのに対し、講習を受けた場合の合格率は80%前後にまでアップしています。確実に合格したい場合は、ぜひ講習を受講しましょう。講習や試験の詳しい内容につきましては協会のホームページを確認してください。なお、三種・二種の参考書は一般書店などでも販売されていますので、それを購入して独学で勉強することも可能です。
機械保全技能士について
機械保全技能士とは、技能士資格の一種です。機械のメンテナンス技術を認定する資格ですので、取得すれば技術の客観的な証明にもなります。機械保全技能士は3級~特級まであり、資格を取得するには、日本プラントメンテナンス協会が主催する試験を受験して合格することが必要です。なお、3級:6か月・2級:2年・1級:7年:特級:1級取得後5年の実務経験が受験資格となります。ちなみに、学科試験は、日本プラントメンテナンス協会が実施する「認定職業訓練短期課程・機械保全科」を受講し、修了することで免除されますので、技能試験だけに集中したいという方は受講しましょう。
特級機械保全技能士の資格を取得すれば、設備保全業務の監督者の選任を受けることが可能です。3級からステップアップしていくのもよいでしょう。
試験は毎年3月と10月に行われますので、詳しい日程については協会のホームページを参考にしてください。
学科試験は暗記が中心です。
実技試験は特級のみ筆記試験で工程管理・作業管理・品質管理等の監督者としての知識を問われます。1~3級までの実技試験は、機械保全・設備保全・電気系保全ごとに問題が出されるので、まんべんなく出題範囲を勉強しておきましょう。近年では、「設備診断作業」の科目が重要視されています。試験科目の量が多いので、詳しくは協会のホームページを確認してください。学科の勉強まで手が回らないという場合は、学科は講習を受けて免除資格を得ましょう。
04. 設備保全に対する
よくある質問
Q.資格取得の勉強をしながら、設備保全の仕事を行うことはできるでしょうか?
A.はい。そのような勉強の仕方を奨励している企業もあります。
Q.設備保全の仕事は、女性でも行えるのでしょうか?
A.もちろんです。女性が活躍する職場も増えています。
Q.設備保全は機械保全技能士だけが行うのでしょうか?
A.機械保全技能士が保全業務を一手に引き受けている職場もあれば、保安業務を行える資格を取得した技術者と手分けして機械保全を行う職場もあります。
Q.電気関係の設備保全は電気関係の資格がないと行えないのでしょうか?
A.特定の電気設備の保安監督業務や、電気工事は資格が必要です。
Q.設備保全の仕事は、必ず工場に雇用されないと行えないのでしょうか?
A.いいえ。設備保全だけを請け負う会社もありますので、そこに雇用されて、定期的にいろいろな工場へ派遣されることもあります。
05. 工場の設備保全
まとめ
いかがでしたか? 今回は工場の設備保全の仕事内容や必要な資格を解説しました。設備保全の仕事はやりがいもあり、技術を磨いて資格を取得すれば、どこの工場でも需要があります。単純に製品を製造する仕事に比べると、転職にも有利でしょう。仕事を行いながら、ぜひ資格も取得しましょう。