危険物施設は危険物を取り扱うことから、事故を防ぐためにも定期点検などを行って安全に運営・管理することが大切です。さて、危険物施設の定期点検には、どんな決まりごとがあるのでしょうか? また、実際に定期点検をするためにはどんな資格が必要か、自主点検とは何が違うのかなど、よく分からないこともありますよね。
そこで今回は、危険物施設の定期点検について詳しく解説しましょう。
この記事を読むことで、危険物施設の定期点検の決まりごとや必要な資格がよく分かります。まずは、記事を読んでみてください。
1.危険物施設の定期点検とは?
最初に、危険物施設の定期点検とはどんなものか見ていきましょう。
1-1.実施者は危険物取扱者もしくは危険物施設保安員
危険物施設の定期点検を実施するのは、危険物取扱者もしくは危険物施設保安員です。ただし、危険物取扱者が立ち会うことにより、無資格者でも点検を行うことができます。なお、以下の施設では、危険物の規制に関する規則第 62 条の 6 により「点検の方法に関する知識および技能を有する者」が行うことが必要です。
- 地下貯蔵タンク
- 地下埋設配管
- 移動タンク貯蔵所のもれの有無などを確認する点検
1-2.技術上の基準に適合しているかチェックする
危険物施設の定期点検では、位置・構造および設備が技術上の基準に適合しているかどうかをチェックする必要があります。詳しい内容は、総務省消防庁の「製造所等の定期点検に関する指導指針の整備について」ページを参考にしてください。定期点検の際に厳しい視点でチェックすることが、事故を未然に防ぐことにつながります。
1-3.定期点検は事故や災害の予防・早期発見に必要不可欠
危険物施設は、きちんと点検することが必要不可欠です。危険物施設は、事故や火災などが発生すると人命や財産に大きな影響を与える恐れがあります。また、危険物の流出により重大な環境汚染を引き起こすこともあるでしょう。したがって、危険物の使用・保管に関して適切に行われているか点検すると共に、異常の発生を早期発見・対策するためにも定期点検をきちんと実施する必要があるのです。
1-4.自主点検と定期点検の違いは?
自主点検と定期点検には、以下ような違いがあります。
- 自主点検:点検すべき内容や頻度には特に決まりがない。消防法による義務付けはない
- 定期点検:点検すべき内容や頻度が決められている。消防法による義務付けがある
危険物施設を安全に運営するためには、定期点検以外にも自主点検を適宜行うことが大切です。2~3か月に1回程度は自主点検をおすすめします。
2.危険物施設の定期点検を行うべき施設は?
危険物施設で、定期点検を行うべきものと行わなくてもよいものを見ていきましょう。
2-1.定期点検を行うべき施設は?
定期点検を行うべき危険物施設は、以下のとおりです。
- 製造所:危険物の指定数量の倍数が10以上および地下タンクを有するもの
- 屋内貯蔵所:危険物の指定数量の倍数が150以上
- 屋外タンク貯蔵所:危険物の指定数量の倍数が200以上
- 屋外貯蔵所:危険物の指定数量の倍数が100以上
- 地下タンク貯蔵所:すべて
- 移動タンク貯蔵所:すべて
- 給油取扱所:地下タンクを有するもの
- 移送取扱所:すべて
- 一般取扱所:危険物の指定数量の倍数が10以上および地下タンクを有するもの
2-2.定期点検を行わなくてよい施設は?
危険物施設でも、指定数量より少ない危険物を取り扱っている場合や指定設備を保有していない場合は、消防法の適用外です。また、鉱山保安法により別途保安規程を定めていたり火薬取締法により危害予防規程を定めていたりする施設も対象外となります。ただし、定期点検の義務がなくても、危険物を取り扱うことに違いはないため、自主点検を行うことが大切です。
3.危険物施設の定期点検の頻度や決まりごと
危険物施設の定期点検は、頻度や記録内容などいくつかの決まりごとがあります。
3-1.1年1回以上行う義務がある
危険物施設の定期点検は、消防法第14条の3の2に基づき、1年に1回以上行うことが義務付けられています。なお、例外として以下のようなケースも覚えておきましょう。
- 屋外タンク貯蔵所(1,000~ 10,000KL未満)の内部点検:13 年に 1 回以上
- 移動タンク貯蔵所の構造点検(水圧試験に関する部分に限る):5 年に 1 回以上
- 地下貯蔵タンク・地下埋設配管のもれの点検で設置後 15 年以内および必要な対策を施したもの:3 年に 1 回以上
3-2.点検記録の内容
危険物施設の点検記録には、以下の内容を記載する必要があります。
- 点検を実施した製造所の名称
- 点検の方法および結果
- 点検年月日
- 点検を行った者の氏名
3-3.点検記録は原則3年間保管する
危険物施設の点検記録は、危険物の規制に関する規則第62条の4および第62条の8に基づき、原則3年間保管することになります。なお、以下のような例外もあるので注意してください。
- 屋外タンク貯蔵所(1,000~ 10,000KL未満)の内部点検:原則 26 年間
- 移動貯蔵タンクのもれに関する点検記録:10 年
危険物施設の点検記録は、消防機関に報告する義務がありません。ただし、事故など何らかの問題が起きた際に提出を求められることがあるので、きちんと管理・保管しておきましょう。
3-4.点検記録の提出方法
以下のような場合には、危険物施設の定期点検記録を提出することがあります。提出先は所轄の消防署です。
- 定期点検で異常が発見され、回収・変更工事を行った場合
- 危険物施設のもれの点検実施後
提出方法やタイミングは、管轄の消防署に確認してください。
4.危険物施設の定期点検に必要な資格
危険物施設の定期点検を行うには、所定の資格が必要になります。
4-1.危険物取扱者の資格が必要
危険物施設の定期点検を行うには、危険物取扱者の資格が必要ですが、危険物施設保安員でもできます。危険物施設保安員の選任には、資格の有無を問いません。ただし、危険物の専門知識を持つ人材である必要性が高いことから、危険物取扱者から選ぶことが望ましいとされています。なお、危険物取扱者が立ち会えば、無資格者でも定期点検を行うことが可能です。
4-2.国家試験を受けて取得する
危険物取扱者は、危険物のスペシャリストとして認められた国家資格です。一定数量の危険物を貯蔵・取り扱う施設では、危険物取扱者を置く必要があります。危険物取扱者になるためには、国家試験を受けて合格後、免状を取得しましょう。丙種・乙種には受験資格がないため、誰でも受験可能です。なお、危険物取扱者の詳しい取得方法やコツについては、こちらをご覧ください。
4-3.過去問と参考書をフル活用して対策する
危険物取扱者試験に合格するには、過去問と参考書をフル活用して実戦力を高めることがポイントです。試験範囲や難易度が大きく変わらない限り、過去問を繰り返し解いて出題傾向をつかみ、効率よく学習することをおすすめします。大型書店の参考書コーナーに足を運び、自分に合ったものを探してみるといいでしょう。なお、過去問は一般財団法人消防試験研究センターの過去に出題された問題ページからダウンロード可能です。
5.危険物施設の定期点検に関するよくある質問
最後に、危険物施設の定期点検に関する質問に回答します。それぞれ役立ててください。
Q.危険物施設の定期点検を実施しなかったらどうなる?
A.悪質と判断された場合は、危険物施設の認定を取り消されることがあります。定期点検を行わず、虚偽の記録をした場合も同様です。危険物の保管や取り扱いができなくなるので、企業にとって大きなデメリットになるでしょう。
Q.危険物施設の定期点検を実施するのは何月がいい?
A.特に決まりはありません。繁忙期以外・長期休暇のタイミングで実施してもいいでしょう。毎年同じ時期やタイミングで作業すると管理しやすいのでおすすめです。
Q.危険物取扱者にはどんな種類がある?
A.甲種・乙種・丙種の3種類があり、乙種はさらに危険物の内容によって第1類~第6類に区分されます。まずは、丙種の資格を取得後、乙種・甲種の取得を目指すのもいいでしょう。なお、危険物施設の定期点検を無資格者が行うのに立ち会い可能となるのは、甲種と乙種だけとなるので注意してください。
Q.危険物施設の定期点検記録を保管しなかったらどうなる?
A.罰金などが科せられることがあります。定期点検の記録は、適切に定期点検を実施した証明になるものです。記録後は、重要書類としてきちんと保管・管理してください。
Q.危険物取扱者の免状を取得後に更新義務はある?
A.免状の更新義務はありませんが、10年に1回写真の書き換えが必要となります。詳しくは、一般財団法人消防試験研究センターの免状交付に関するページをご覧ください。
まとめ
今回は、危険物施設の定期点検について詳しく解説しました。危険物施設を適切かつ安全に運用するためには、定期点検を1年に1回以上行う義務があります。危険物施設の定期点検の決まりごとに沿って、きちんと記録・保管することが大切です。なお、点検作業は誰でもできるわけではなく、危険物取扱者など一定の条件があるので注意してください。危険物取扱者を取得すれば、危険物のスペシャリストとして、転職に有利など数多くのメリットがあります。未取得の人は、ぜひ挑戦してみてください。