冷凍機械責任者は、ビルメンテナンス業に有利な国家資格の1つです。近年、冷凍機械責任者の資格試験が難しくなっているといわれていますが、難易度が年々変わるのはきちんとした理由があります。本当に、冷凍機械責任者の資格試験は難易度が上昇しているのでしょうか。本記事では、冷凍機械責任者の難易度と資格の取得方法を解説します。
- 冷凍機械責任者は高圧ガス製造の保安を担う国家資格
- 冷凍機械責任者の難易度は年度で変わる
- 冷凍機械責任者の資格取得方法とポイント
- 冷凍機械責任者の講習を受ける方法もある
- 冷凍機械責任者に関してよくある質問
この記事を読むことで、冷凍機械責任者の試験難易度と取得方法などが分かります。受験を考えている方はぜひチェックしてください。
1.冷凍機械責任者は高圧ガス製造の保安を担う国家資格
難易度について知る前に、まずは冷凍機会責任者の基本情報を改めてチェックしておきましょう。取得することで、一体どのようなメリットが生まれるのか要確認です。
1-1.冷凍設備に関わる高圧ガス製造施設の保安業務が行える
冷凍機械責任者は、冷凍設備に関わる高圧ガスを製造する施設の保安業務が行える国家資格です。高圧ガスの製造は、一般的にいう製造とは異なります。高圧ガスの圧力や状態を変化させたり、容器への充てん行為をしたりすることなどです。高圧ガス保安法によって、有資格者が必ず冷凍設備関連の保安業務を行わなければならないと定められています。また、この資格の特徴は、高圧ガス製造保安責任者という資格区分の1つであることです。ただ単に冷凍機械を管理するだけでなく、専門知識を生かしながらいち早く異常を察知し事故を未然に防ぎます。
1-2.冷凍機械責任者の区分は3つ
冷凍機械責任者の資格は、区分が第一種・第二種・第三種の3つに分けられています。それぞれの職務の範囲は以下のとおりです。
- 第一種:すべての製造施設の保安が可能
- 第二種:1日の冷凍能力が300t未満の製造施設の保安
- 第三種:1日の冷凍能力が100t未満の製造施設の保安
1-3.就職・転職に役立つ、資格手当がもらえる
冷凍機械責任者の資格を取得すると、転職・就職に有利な立場になるのは間違いありません。冷凍機械が設置してある事業所では、冷凍保安責任者として有資格者を選任し都道府県知事へ届け出る必要があります。特に、保安に関わる業務が必要な業種では、有資格者が重宝されるでしょう。さらに、資格を取得することで基本給以外の手当をもらうことができます。資格手当の金額は事業所で異なりますが、大手企業ほど高額になるでしょう。
2.冷凍機械責任者の難易度は年度で変わる
冷凍機械責任者の資格試験はどのくらい難しいのでしょうか。ここでは、試験の難易度や合格率などについて解説します。
2-1.国家試験の難易度は「やや高め」
冷凍機械責任者の国家試験合格率は、近年を見てみると約30~40%となっています。上位資格の第一種になるほど難易度は高くなりますが、国家資格難易度によると「やや高め」のレベルです。そこまで難しい資格試験ではないので、地道に勉強を続ければ合格できるでしょう。また、講習会で取得する場合は、国家試験よりも難易度が低くなります。
2-2.難易度が高くなったといわれているのは本当?
冷凍機械責任者の難易度は高くなっているといわれていますが、それは間違いです。実際に、合格率がグッと下がったのは平成26年度と27年度だけで、後は約35〜40%と高めで安定しています。難易度が高くなったといわれているのは、合格率が下がった平成21年度から平成27年度までのデータだけに注目しているからです。平成26年度の合格率は約26%で平成27年度は約19%となっています。そこだけに注目せず、全体の合格率をみれば、年々難易度が高くなっているとはいえません。
3.冷凍機械責任者の資格取得方法とポイント
それでは、冷凍機械責任者の資格を取得する方法とポイントを紹介します。
3-1.全科目受験と科目免除受験がある
冷凍機械責任者の資格試験は、全科目受験と科目免除受験の2つがあります。ただし、自由に選択できるわけではありません。科目免除受験の場合は、第一種・第二種・第三種それぞれで細かく条件が決められています。たとえば、該当区分の冷凍機械講習を修了した者だけ法令科目だけ受験が可能という内容です。具体的な科目免除受験の内容や条件に関しては、高圧保安協会の試験科目ページを確認してください。
3-2.年齢・性別問わずに誰でも受験可能
受験資格はないので、年齢・性別問わずに誰でも試験を受けることができます。だからといって、いきなり初心者が第一種を取得するのは正直難しいところがあるでしょう。確実に合格するためには、第三種でも工業高校を卒業した程度の知識が必要だといわれています。初心者は第三種からの取得を目指しながら、地道に勉強を続けていき知識を習得してください。
3-3.試験は年に1回、11月ごろ
冷凍機械責任者の国家試験は、高圧ガス保安協会が年に1回行っています。試験日は例年11月ごろで、試験地は第一種が全国10か所、第二種と第三種が全国61か所です。第一種は試験地が限られているので近場を選びましょう。
3-4.申請方法によって受験料が異なる
申込方法は、書面申請もしくは電子申請となります。それぞれの方法と資格種類によって受験料が変わるので注意が必要です。
- 第一種:書面申請は13,000円、電子申請は12,400円
- 第二種:書面申請は9.000円、電子申請は8,500円
- 第三種:書面申請は8,400円、電子申請は7,900円
詳細は、高圧ガス保安協会のホームページを確認してください。申込期間も決められているので、忘れないように受験料を支払い申請しましょう。
3-5.試験科目は第一種・第二種が全3科目、第二種は全2科目
冷凍機械責任者の試験は、マークシート方式となっています。科目は第一種と第二種が全3科目、第三種が全2科目です。
<第一種>
- 高圧ガス保安法に係る法令
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な高度の保安管理の技術
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な通常の応用化学及び機械工学
<第二種>
- 高圧ガス保安法に係る法令
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な通常の保安管理の技術
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な基礎的な応用化学及び機械工学
<第三種>
- 高圧ガス保安法に係る法令
- 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な初歩的な保安管理の技術
3-6.大切なのは毎日勉強を続けること
冷凍機械責任者の試験は、勉強を毎日続けていけば合格できる試験です。毎日勉強を続けていけば知識が頭の中に入り、問題を難なく解くことができます。合格基準は各科目60点獲得することです。1科目だけでも得点率が60点以下になれば不合格になるため、全科目をバランスよく勉強してください。ある程度、基礎知識を身につけたら、どんどん過去問にチャレンジしていきましょう。過去数年分の過去問を解いておけば、出題傾向も自然と分かるようになりますよ。
4.冷凍機械責任者の講習を受ける方法もある
冷凍機械責任者の資格取得方法は、国家試験を受けるだけではありません。もう1つの取得方法として、講習を受ける選択があります。ここでは、講習を受ける場合の方法とポイントを解説しましょう。
4-1.講習を受けると国家試験の科目(一部)が免除できる
所定の講習を受け、最後に実施される検定に合格すれば、資格試験の一部科目を免除できます。科目免除は、受験する資格種類と講習内容で異なるので注意してください。基本的に、保安管理技術と学識の科目が免除の対象となります。一部の科目が免除できるだけで、いずれにせよ国家試験は受けなければなりません。講習の検定試験合格=資格取得になるわけではないので注意が必要です。国家試験の一部科目免除に関しては、高圧ガス保安協会のホームページをご覧ください。
4-2.開催日程
冷凍機械責任者の講習は、資格種類によって開催頻度が異なります。第一種は年に1回で開催地は全国5か所程度、第二種は年に2回で全国20か所程度、第三種は年に2回で全国35か所程度で実施されることがほとんとです。開催日程の詳細は、高圧ガス保安協会のホームページをチェックしてください。
4-3.講習内容
講習内容は、第一種と第二種・第三種で異なります。どちらも3日間かけて開催されますが、第一種と第二種は全3科目それぞれ7時間の講義、第三種は全2科目で法令が7時間・保安管理技術が14時間です。下記に講習内容をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
<第一種・第二種>講義期間は3日間
- 法令
- 保安管理技術
- 学識
※それぞれ7時間の講義
<第三種>講習期間は3日間
- 法令:7時間
- 保安管理技術:14時間
また、それぞれ決められた講習を受けなければ、検定試験を受験できません。検定試験は法令の科目だけ実施せず、第一種と第二種は保安管理技術と学識、第三種は保安管理技術のみ実施となります。
4-4.申請方法で受験料が異なる
受講料は、一般申込とインターネット申込、そして資格種類によって異なります。
- 第一種:一般申込 21,100円/インターネット申込 20,500円
- 第二種:一般申込 18,900円/インターネット申込 18,400円
- 第三種:一般申込 16,200円/インターネット申込 15,700円
4-5.冷凍保安責任者に選任された後は法定義務講習の受講が必要
冷凍保安責任者に選任された場合、法定義務講習を必ず受講しなければなりません。受講は法律で義務づけられているため、受講しなければせっかく取得した免状を返上しなければならなくなります。法定義務講習の内容と詳細に関しては、高圧ガス保安協会のホームページをご覧ください。また、講習を受けるタイミングは、初回が選任後から6か月以内・その後は5年ごとに1回となります。
5.冷凍機械責任者に関してよくある質問
冷凍機械責任者に関する質問を5つピックアップしました。
Q.保安業務とは具体的にどんな仕事をするの?
A.高圧ガスは高い圧力を持った特殊なガスなので、安全に使用するために異常がないかどうか常に確認が必要です。資格取得者は、大型冷蔵庫(冷凍庫)やエアコンの空調設備など、高圧ガスを使用する設備の稼働を確認します。危険な高圧ガスを扱うからこそ、専門的な知識を持っている人がきちんと行わなければなりません。火災や爆発など大事故を防ぐための大切な仕事です。
Q.第三種の難易度は第一種・第二種よりも低いのは本当?
A.第一種・第二種よりも第三種のほうが難易度はかなり低くなります。合格率はおよそ35~40%と大差はありませんが、試験内容が2科目になるので勉強しやすい資格といえるでしょう。
Q.どの資格種類を取得すればビルメに有利なの?
A.ビルメンに必要な資格だといわれているのは、第三種冷凍機械責任者です。第三種は比較的取得しやすい資格種類なので、気軽な気持ちで受けられるでしょう。また、第一種を必ず取得しなければならないわけではありませんが、第二種を取得しておけば多くの機械を扱うことができます。より条件がいい職場で働きたいなら、第二種の取得がおすすめです。
Q.資格を生かせる職場は?
A.基本的に、冷凍機械責任者は冷凍用冷凍機の保安及び管理が主な仕事内容となります。そのため、港湾での業務や商業施設・オフィスビルなどの冷暖房供給施設・食品工場などで資格を生かすことができるでしょう。冷凍機器を販売しているメーカーも、有資格者を求めています。第三種よりも、すべての機械を扱うことができる第一種のほうが就職・転職に有利です。
Q.試験勉強のポイントは?
A.専門知識をしっかり暗記することです。冷凍機械責任者の資格試験には、耳慣れない専門用語や知識がたくさん出てきます。テキストを何度も読み、基礎力を高めていきましょう。分からないところがあれば、理解できるまで読み解くことが大切です。
まとめ
冷凍機械責任者の資格試験は難易度が高くなっているといわれていますが、それは平成26年度と27年度の合格率だけグッと低くなっているからです。実際に、資格試験の難易度が上がったわけではありませんので安心してください。平成26年度と27年度は合格率が19〜26%と落ちていますが、そのほかの年度は35〜40%と高めの合格率で安定しています。地道に勉強を続け、必要な知識を入れて試験に挑めば、合格できる可能性が高くなるでしょう。