オフィスビルや工場・商業施設などには、熱源としてボイラーが利用されています。私たちが生活するためには必要不可欠な設備であり、ボイラーを取り扱うためには資格取得が必要です。ボイラー関連の資格は、ボイラー技士・ボイラー取扱者・ボイラー整備士などさまざまな種類がありますが、それぞれ仕事内容や扱える範囲が異なるので注意しておかなければなりません。そこで、本記事では、ボイラーの基礎知識から関連資格の内容・ボイラー技士の資格取得・勉強法について説明します。
この記事を読むことで、ボイラーに関連する資格を知り、取得のための勉強を始めることができます。気になる方は、ぜひ参考にしてください。
01. ボイラーの基礎知識
ボイラーの資格について知る前に、基礎知識を深めることが大切です。定義や設置されている場所・重要性について説明します。
1-1.定義
ボイラーは、水(液体)に熱を加えて、温水・蒸気を生み出す機械のことです。温水をつくるものを温水ボイラー、蒸気をつくるものを蒸気ボイラーと呼んでいます。私たちが普段の生活で使用する「やかん」も、ボイラーの仕組みに近いものです。しかし、ボイラーは、以下の3点に当てはまるものを定義しています。
- 火気・高温ガスまたは電気を熱源とするもの
- 水または熱媒を加熱して、蒸気または温水をつくる装置であること
- 蒸気または温水をほかに供給する装置であること
1-2.どんな場所にあるか
ボイラーは、普段目にする場所に設置されていません。オフィスビルや商業施設・工場などの施設では、ボイラー室と呼ばれる場所に設置しています。ボイラー室とは、ボイラーなどの機械を設置して、暖房を管理する場所です。一般家庭では、お風呂場や台所付近に設置されています。
1-3.ボイラーの重要性
私たちの生活のまわりには、多くのボイラーが使われています。暖房やお風呂など、生活に必要不可欠な機械の1つです。一般家庭はもちろんのこと、銭湯・オフィスビル・デパート・マンション・病院・工場・ホテルなど、多くの施設で稼働しています。暖房やお湯を使用するためには、ボイラーが必要なのです。
02. ボイラーに関連する資格
ボイラーを扱うためには、関連する資格を取得しなければなりません。ここでは、ボイラーに関連する資格を紹介します。
2-1.ボイラー技士
ボイラー関連の資格といえば、ボイラー技士が代表的です。労働安全衛生法に基づく国家資格の1つで、空調・温水ボイラーの操作や点検を行うことができます。ボイラー技士の詳細に関しては、後ほど【3.ボイラー技士とは】で説明するのでぜひチェックしてください。
2-2.ボイラー取扱者
ボイラー取扱者は、労働安全衛生法に基づく国家資格の1つです。小規模ボイラー・小型ボイラーを取り扱うために必要な資格であり、技能講習の受講で資格取得ができます。ただし、学科講習の後に行われる修了試験に合格しなければなりません。小規模ボイラーだけを扱う場合は、ボイラー取扱者の取得をおすすめします。
2-3.ボイラー取扱作業主任者
ボイラー取扱作業主任者は、労働安全衛生法に基づく作業主任者の1つです。一定規模以上のボイラーを設置し取り扱う事業場では、選任が義務づけられています。主任者となるための技能講習を修了した者、または、特級・1級・2級ボイラー技士免許を取得している者が選任され、ボイラーの取り扱いに特化した作業主任者です。
2-4.ボイラー溶接士
ボイラー溶接士は、労働安全衛生法に基づいた国家資格の1つです。特級ボイラー溶接士と普通ボイラー溶接士の2種類があります。特級ボイラー溶接士は全ボイラーおよび第1種圧力容器の溶接業務が可能です。そして、普通ボイラー溶接士は、溶接部の厚さ25mm以下のボイラーおよび第1種圧力容器の溶接業務と管台・フランジなどを取りつける場合の溶接業務ができます。
2-5.ボイラー整備士
ボイラー整備士は、労働安全衛生法に基づいた国家資格の1つで、定期的にすべてのボイラーについている装置整備作業を行うことができます。一定規模以上のボイラーや第1種圧力容器ボイラー本体付属設備の清掃・整備作業・点検・交換・運転確認が可能です。
2-6.そのほか
ほかにも、小型ボイラーの操作・異常時処置などの作業を取り扱う「小規模ボイラー取扱者」があります。また、危険物を製造する工場や化学設備関係企業などで第1種圧力容器の監督・指導などを行う「第1種圧力容器取扱作業主任者」も関連資格の1つです。
03. ボイラー技士とは
ボイラー関連資格の中でも主流となるボイラー技士とは、一体どのような資格なのでしょうか。概要・種類・主な職務・資格取得のメリットについて説明します。
3-1.概要
ボイラー技士は、病院・ビル・工場・学校などのさまざまな場所で、資格の必要なボイラーを取り扱い、点検や安全管理を行う技術者です。ボイラーの専門家であり、建造物の安全運転を保ち続けるために監視・調整・検査などの業務を行います。大規模ボイラーの取扱主任者になるためには、1級・特級の資格が必要です。
3-2.種類
ボイラー技士は、特級・1級・2級の3種類があります。それぞれの特徴を以下にまとめてみました。
- 特級ボイラー技士:すべての規模のボイラー取扱作業主任者になることができる
- 1級ボイラー技士:伝熱面積の合計が500㎡以内のボイラー取扱作業主任者になることができる
- 2級ボイラー技士:伝熱面積の合計が25㎡以内のボイラー取扱作業主任者になることができる
ほかにも、ボイラー技士資格ではありませんが、ボイラー取扱技能講習修了というものがあります。ボイラー取扱技能講習修了を習得した者は、ボイラー取扱者として小規模ボイラーの取り扱いができ、作業主任者として働くことが可能です。
3-3.主な職務
ボイラー技士は主な職務として、工場における熱エネルギー源や、事務所・商業施設など建物の給湯・空調熱源供給を行うボイラー設備の監視・調整・検査を行います。基本的に、ボイラーの取り扱い全般が仕事内容です。正常な運転を維持し続けるためにも、異常の有無を確かめ、異常が見られたときは適切な処置を施さなければなりません。
3-4.資格取得のメリット
ボイラー技士の求人率は安定しているため、就職・転職は難しくありません。地域によっては、求人数が倍になっているところもあります。特に、特級・1級ボイラー技士は、大規模ボイラーの取扱作業主任者になることができるので、需要が高まるでしょう。さらに、資格を取得することで、条件の良い企業で働くことができる・資格手当てを得ることができるなどのメリットも生まれます。
04. ボイラー技士の資格取得について
それでは、ボイラー技士の資格試験について説明します。受験資格や試験概要・試験内容・実地試験・注意点を一緒にチェックしていきましょう。
4-1.受験資格
ボイラー技士の受験資格は、種類によって異なります。
特級ボイラー技士の受験資格
- 1級免許取得後、3年以上の実務経験
- 大学・専門・高校でボイラー課程学科を卒業した後、2年以上の実務経験
- エネルギー管理士有資格者で、2年以上の実務経験
- 海技士(機関1・2級)有資格者
- ボイラー・タービン主任技術者有資格者で、500㎡以上のボイラー取扱経験者
1級ボイラー技士の受験資格
- 2級免許取得後、1年以上の実務経験者
- 大学・専門・高校でボイラー課程学科を卒業した後、1年以上の実務経験
- 厚生労働大臣が定める者
2級ボイラー技士の受験資格
- 大学・専門・高校でボイラー課程学科を卒業した後、3年以上の実務経験
- 海技士1・2・3級の有資格者
- ボイラー実技講習を修了した者
ほかにも、細かく規定されているので、詳細は「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」のホームページをチェックしてください。
4-2.試験概要
ボイラー技士試験の日時・場所、受験料、申込方法について説明します。
4-2-1.日時・場所
試験日時は、資格種類によって異なります。特級は10月上旬ごろ、1級は年6~7回、2級は1か月に1~2回の実施です。受験地は、管轄住所のセンターで行われるため、詳しくは「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」のホームページをご覧ください。
4-2-2.受験料
ボイラー技士の受験料は、各級6,800円となります。受験申請書にとじ込まれた払込用紙を使用して、近くの郵便局または銀行で振り込んでください。指定の払込用紙以外での試験手数料納入はできませんので注意しましょう。
4-2-3.申込方法
受験申請書を各試験センターに申請して、添付書類に必要事項を記入します。申請書の提出方法は、郵便またはセンター窓口への提出です。インターネットでの受付は行っていませんので注意してください。各センターの問い合わせに関しては、こちら(公益財団法人 安全衛生技術試験協会のホームページ)から可能です。
4-3.試験内容
試験内容と時間は、各資格によって異なります。具体的な試験内容は、以下のとおりです。
特級(各科目6問/計4時間)
- ボイラーの構造に関する知識
- ボイラーの取り扱いに関する知識
- 燃料・燃焼に関する知識
- 関係法令
1級(各科目10問/計4時間)
- ボイラーの構造に関する知識
- ボイラーの取り扱いに関する知識
- 燃料・燃焼に関する知識
- 関係法令
2級(各科目10問/計3時間)
- ボイラーの構造に関する知識
- ボイラーの取り扱いに関する知識
- 燃料・燃焼に関する知識
- 関係法令
4-4.実地試験について
ボイラー技士の試験は、すべて筆記試験となるため、実技試験はありません。しかし、ボイラー取り扱いの実地修習や実務経験を持っていない者が2級ボイラー技士免許の交付を受ける場合は、実技講習の受講が必要です。日程は3日間で、都道府県労働局長登録講習機関が定期的に開催しています。ボイラー実技講習は取扱技能講習とは異なり、受講だけで小規模ボイラー・小型ボイラーを取り扱うことはできません。あくまでも、2級ボイラー技士の免許交付要件を満たすための講習であることを覚えておきましょう。
4-5.注意点
ボイラー技士の試験は、実地試験はありませんが、3~4時間の筆記試験となります。長時間となるため、集中力と体力を整えておかなければなりません。また、受験する種類の難易度に合わせた勉強を続けることが大切です。どのくらいのボイラーを扱うのか、勉強時間にどのくらい費やせるのか、きちんと計画を立てましょう。
05. ボイラー技士の勉強法について
スムーズに合格するためには、ボイラー技士の勉強法について知ることが大切です。コツやおすすめの勉強法を紹介します。
5-1.独学・勉強法のコツ
ボイラー技士の勉強法は、ライフスタイルに合った方法を選ぶことがポイントです。時間に余裕があればテキストを用意して独学する、仕事が忙しい方は通信講座を利用するなどさまざまな方法があります。テキストを選ぶ際は、自分にとって分かりやすい内容か、試験の重要ポイントが押さえられているのかなどに注目してください。そして、毎日数十分でも勉強を続けていきましょう。
5-2.おすすめの勉強法
過去問から類似問題が出てくる可能性があります。そのため、過去問を何度も解くことが、試験対策につながるのです。テキストを利用して基礎知識を身につけた後、過去問をくり返し解いていきましょう。分からない問題や何度も引っかかる問題があれば、チェックをしておくと良いですよ。
06. ボイラーの資格に関してよくある質問
ボイラーの資格に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
6-1.圧力容器とは?
内部に圧力を保有する容器を指しています。労働安全衛生法では、第1種圧力容器・小型圧力容器・第2種圧力容器・簡易容器に区分されており、それぞれに対する規制が定められているのです。
6-2.ボイラー技士の主な就職先とは?
ボイラー技士の主な就職先は、ボイラー設備を取り扱っている会社・工場などです。たとえば、ビル管理会社・プラント建設会社・工場・ホテル・銭湯施設・ビル設備会社などがあります。
6-3.ボイラー技士の難易度・合格率は?
ボイラー技士の難易度・合格率は、種類によって異なります。特級の合格率は約20~30%、1級は約50~60%、2級は約50~60%です。上位の資格になるほど、難易度が高く、合格率が低くなります。
6-4.ボイラー技士の合格基準は?
特級・1級・2級すべてにおいて、科目ごとの得点が40%以上かつ合格点が60%以上となります。これらの条件を満たすことで合格となるため、計画的な勉強が大切です。
6-5.ボイラー技士のほかに持ったほうが良い資格とは?
必ず取得しなければならないわけではありませんが、ビル管理技術者・電気主任技術者などの国家資格を取得しておけば、仕事の範囲を広げることができます。スキルアップや昇進を目指している方は、ボイラー技士の次に資格取得を考えてみてはいかがでしょうか。
07. ボイラーの関連資格
まとめ
いかがでしたか? ボイラー技士は、労働安全衛生法に基づく国家資格の1つで、空調・温水ボイラーの操作や点検を行うことができます。特級・1級・2級の3種類があり、それぞれ扱えるボイラーが異なるので注意が必要です。各試験の受験資格や試験内容・時間も変わるため、事前にチェックをして、計画を立てなければなりません。スムーズに資格を取得するためには、ライフスタイルに合った勉強法を選んでください。きちんと知識や勉強法のコツをつかんでおけば、順調に資格取得ができるでしょう。