ガソリンの運搬で知っておきたい決まりごと~危険物取扱者について~

ガソリンの運搬で知っておきたい決まりごと~危険物取扱者について~

ガソリンは危険物の一種なので、十分に注意して運搬しなければなりません。特に、規定量以上のガソリンを運搬する際は、資格を取得した者の立ち会いが必要となります。もし、規則を知らずに運搬してしまうと、罰則が科せられることになるので注意しましょう。ガソリンの運搬に関する知識を知らない人によって、火災や爆発などの事故も起きています。そこで、本記事では、ガソリンの運搬に必要なことを説明しましょう。

  1. ガソリンの運搬における決まりごとは?
  2. ガソリンの運搬に資格は必要か?
  3. 危険物取扱者の内容をチェック!
  4. ガソリンの運搬に関してよくある質問

この記事を読むことで、ガソリンの運搬に必要な情報や資格が分かります。危険物取扱者の資格試験を考えている方も、ぜひチェックしてください。

1.ガソリンの運搬における決まりごとは?

最初に、ガソリンの運搬における重要な決まりごとをチェックしておきましょう。

1-1.ガソリンの運搬で知るべき消防法

始めに知っておいてほしいのは、ガソリンの運輸に関する内容が記してある消防法です。危険物を車両等で運搬する際は、消防法で定められている「運搬の基準」を守らなければなりません。運搬の基準は、指定数量未満の危険物を運ぶ場合にも適用されます。ちなみに、運べる量は、貨物車両の積載可能な重量までです。基準を守らなければ、消防法違反とみなされてしまうので注意してくださいね。

1-2.運搬と移送の違いを知ろう!

危険物を「運搬すること」と「移送すること」の違いを、きちんと把握しているでしょうか。「運搬」はトラックなどの一般車両を使って危険物を運ぶ行為です。一方、「移送」はタンクローリーに危険物を入れて運ぶことを意味しています。つまり、運搬と移送の違いは、危険物を運ぶものが車両かタンクローリーかということです。移送は指定数量以上で消防法の規制を受けますが、運搬はより危険が伴う行為となるため、指定数量以下でも規制対象となります。

1-3.危険物の種類や運搬車両ごとに容器の制限が決まっている

ガソリンを運搬する際は、容器の制限が関係しているので注意が必要です。たとえば、トラックなどの運搬車両で金属製容器にガソリンを入れる際は60L以下、金属製ドラムなら250L以下となっています。普通自動車など乗用車の場合、金属製容器は22L以下です。また、ガソリンは専用の金属容器に入れて運ばなければならないと消防法で決められています。灯油用のポリタンクにガソリンを入れることは、法律で禁じられているので絶対にしないでくださいね。

1-4.指定数量以上を運搬する際は標識と消火設備が必要

容器と同じく、運搬にもガソリン・軽油・同時運搬の際の制限があります。それぞれの内容を以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

  • ガソリン:指定数量(200L)以上を運搬する際は、「危」の標識を車両の前後に掲げ、消火設備を整える等の措置が必要
  • 軽油:指定数量(1,000L)以上を運搬する際は、「危」の標識を車両の前後に掲げ、消火設備を整える等の措置が必要
  • 同時運搬の場合:ガソリンと軽油の数量をそれぞれの危険物の指定数量で割り、その和が1以上となるときは指定数量以上の危険物を運搬しているとみなす

最後の同時運搬は、たとえば、ガソリン100Lと軽油500Lを運ぶとします。その場合、(100L/ガソリンの指定数量200L)+(500L/軽油の指定数量1,000L)=1となり、指定数量以上の運搬方法というわけです。

1-5.「危」の標識にも決まりがある

危険物の指定数量以上を運ぶとなると、車両の前後に「危」と記載された標識を掲げなければなりません。実は、この標識にも細かい決まりがあります。ガソリン・軽油どちらも共通して、0.3m四方・黒地に黄文字でなければなりません。「危」と記載すれば何でもいいというわけではないので、十分に気をつけてください。

2.ガソリンの運搬に資格は必要か?

ガソリンの運搬に、資格は必要なのでしょうか。危険物の運搬に関係する資格について詳しく説明します。

2-1.基本的に資格は必要ない

基本的に、運搬において特別な資格は必要ありません。危険物の取り扱いができるのは危険物取扱者という資格で、取り扱いの中には給油・荷降ろし・荷積みが含まれています。しかし、「運搬のみの場合」に限り資格は必要ありません。ただし、運搬容器や積載方法等の決まりを順守するのはもちろん、車両の最大積載量(積載することができる貨物の最大限度重量)までしか積めないので注意が必要です。危険物を運ぶ車両の最大積載量をきちんと確認しておかなければ意味がありません。また、ドラム缶の積み降ろしや指定数量を超える場合には、危険物取扱者の資格が必要になります。

2-2.しかし、指定数量以上の危険物を運搬する際は資格が必要

前述したとおり、指定数量以上の危険物を運搬する際は、必ず危険物取扱者を車両に乗せなければなりません。指定数量以上は、ガソリンが200L以上、軽油・灯油が1,000L以上、アルコールが400L以上です。また、指定数量以上にガソリン・軽油があるところから容器に移したりする場合も危険物取扱者の監視が必要となります。もしくは、丙種の資格保持者が作業を行わなければなりません。

2-3.危険物取扱者の立ち会いは火災防止のため

大量の危険物から一定量を小分けして運搬する際に危険物取扱者の立ち会いが必要ですが、これは火災防止のために必要なことです。「正しく扱えば無資格者でも大丈夫」とあまく考えてしまうと、突然の火災や爆発が起きてケガをする恐れがあります。たとえ、毎日行っている作業だとしても、きちんと危険物に関する知識を習得した者が立ち会う必要があるのです。

2-4.基準を違反すると罰則がある

危険物の取り扱いは十分に注意しなければならないため、運搬基準を違反すると罰則を受けることになります。運搬容器・資格の有無などに関しても、それぞれ罰則が決められているのです。具体的な罰則については、近くにある消防署に尋ねてください。

3.危険物取扱者の内容をチェック!

では、危険物の取り扱いに必要な資格「危険物取扱者」の内容をチェックしていきましょう。

3-1.危険物取扱者は危険物の専門家

危険物取扱者は、消防法で規定する危険物の取り扱い・定期点検・保安の監督を行うために必要な国家資格です。扱える危険物の種類は、甲種・乙種・丙種で異なります。それぞれが扱える危険物は以下のとおりです。

  • 甲種:すべての類の取り扱い・立ち会いができる
  • 乙種:指定された類の取り扱い・立ち会いができる
  • 丙種:ガソリン・灯油・軽油・第3石油類・第4石油類・動植物油類のみ

また、乙種と甲種は危険物施設において6か月以上の危険物取り扱いの実務経験があれば、危険物保安監督者になることができます。しかし、丙種では危険物保安監督者にはなれません。

3-2.危険物取扱者ができることはたくさんある

危険物の取り扱い・保安点検・タンクローリーの運転などができます。基本的に、危険物全般を扱うことができる特別な資格です。危険物を扱う職場で働きたい方にとっては、大いに役立つ資格ということもあり、資格取得を推奨している会社もあります。危険物の指定数量以上の運搬も、危険物取扱者が立ち会うからこそできることなのです。

3-3.危険物を扱っている幅広い職場で活用できる

危険物取扱者の資格は、ガソリンスタンド・化学工場・薬品製造会社・石油プラントなど、危険物を扱っている幅広い職場で活用できます。特に、大量の危険物を運搬したり、保管したりしている職場では、危険物取扱者の有資格者を求めているでしょう。より幅広い職場で生かしたい方は、すべての危険物が扱える甲種の取得がおすすめです。

3-4.資格の取得方法

危険物取扱者の受験資格・試験内容等について説明します。

3-4-1.受験資格

丙種・乙種の資格試験は受験資格がないので、誰でも受験できます。しかし、甲種は4項目のいずれかに該当しなければ、受験することができません。甲種の受験資格は以下のとおりです。

  • 大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者
  • 大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
  • 乙種危険物取扱者免状を有する者
  • 修士・博士の学位を授与された者で、化学に関する事項を専攻した者

指定された学校を卒業していない方は、乙種危険物取扱者の免状を取得するところから始めましょう。免状を取得すれば、甲種への受験資格が得られます。

3-4-2.試験内容

甲種・乙種・丙種ともにマークシート方式で試験を行います。試験は一般財団法人消防試験研究センターの実施です。資格種類の中でも上位資格の甲種の試験内容は、以下のとおりとなります。

  • 危険物に関する法令(15問)
  • 物理学および化学(10問)
  • 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(20問)

全45問を150分で回答していかなければなりません。ほかの資格試験の内容や、申し込み方法など詳細が知りたい方は、一般財団法人消防試験研究センターのホームページをご確認ください。

4.ガソリンの運搬に関してよくある質問

ガソリンの運搬に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.一般人がガソリンを運搬する際の注意点は?
A.普通自動車など乗用車でガソリンを運搬する際は、積める量をきちんと守ることが大切です。消防法では、最大で22Lしか運べません。つまり、ガソリン携行缶20Lを2つ運ぶと違反になってしまうので注意してください。トラックなど運搬車両を借りて運搬する際も、最大積載量は250L以下と決まっています。必要な資格がなくてもガソリンは運べますが、消防法の決まりはきちんと守らなくてはなりません。具体的な決まりが分からないときは、近くの消防署に尋ね確認しましょう。

Q.ガソリンを運搬する前のチェックポイントは?
A.危険物や運搬容器が著しく摩擦・動揺していないか、運搬前はもちろん運搬中もチェックしてください。また、指定数量以上の車両には、危険物に適応する消火設備(消火器など)を1個以上備えているかも要チェックです。正直、1本では足りないので最低2本は用意しておいたほうがいいでしょう。

Q.積載の際に気をつけるべきことは?
A.運搬容器の収納率・収納方法が基準に適しているか、危険物が漏れないように運搬容器を密封しているか注意が必要です。基本的に、液体は最大容量の98%以下しか入れられません。容器いっぱいに危険物を入れるのは法律違反となります。また、運搬容器および包装の外部に危険物の品名と数量を必ず表示しましょう。

Q.乗用車等で運搬する際の注意点は?
A.ステーションワゴン・ミニバン・ライトバン・ワンボックスカーなどの乗用車で運搬する場合は、道路交通法違反(過積載)に注意が必要です。運搬容器の積載方法について消防法による制限はありませんが、指定数量以上を1台の車両に積む場合は、乗用車でも標識と消火設備が必要になります。不安な方は、運搬前に近くの消防署に尋ねて確認したほうがいいでしょう。

Q.運搬中に休憩等で車両を一時停止させる際はどうすべきか?
A.安全な場所を選んで、車両を止めてください。また、運搬する危険物の保安にも注意が必要です。運搬容器の取り扱い方や保管方法によっては、静電気で火災が起きることがあります。休憩等で車両を一時停止させる際は、必ず車両のエンジンを切りましょう。火の気のある場所近くに止めたり、エンジンをかけたまま車から離れるのは絶対にしてはいけないことです。

まとめ

いかがでしたか? ガソリンなど危険物を一定数量以上運搬する場合は、危険物取扱者の資格を取得しなければなりません。また、普通自動車などの乗用車、もしくはトラックなどの運搬車両と、危険物を運ぶ車両によって、積める危険物の量も決まっているのです。一般的に、ガソリンは専用の金属製容器に入れて運びます。しかし、指定数量以上の場合はそれに加え、「危」の標識を車両の前後につけること、さらに危険物取扱者の資格者を同乗させることなど細かい決まりがあるのです。指定数量以上の危険物を運搬する仕事をするなら、危険物取扱者など必要な資格を取得したほうがいいでしょう。転職や就職にも有利になりますよ。

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