ガスは、私たちが豊かな生活を送るために必要不可欠なものです。しかし、ガスの製造や供給まで、すべての取り扱いを行うためには専門知識を身につけておかなければなりません。実際に、ガス事業法によって、ガスの取り扱いは有資格者が行わなければならないと決められています。その中の1種が「ガス主任技術者」です。ガス主任技術者として働くためには、国家試験に合格しなければなりません。そこで、本記事では、ガス主任技術者の基礎知識や種類・仕事内容・試験概要・勉強法などについて説明します。
この記事を読むことで、ガス主任技術者になるための必要な知識を深めることができます。資格取得を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
01. ガス主任技術者
の基礎知識
ガス主任技術者の資格取得を目指す前に、一体どのような資格なのか基本情報を知ることが大切です。資格概要や必要性、需要・将来性について説明します。
概要
ガス主任技術者は、ガス事業法に基づく国家資格の1つで、ガス工作物の保安・監督などを行います。爆発・火災の危険性があるガスは、専門知識を習得している有資格者だけが取り扱い可能です。ガス事業法により、ガス工作物は保安監督の方法が定められています。一般家庭の燃料ガス製造から供給まで、すべての過程においてガスの取り扱いができる資格が、ガス主任技術者なのです。
必要性
ガスは取り扱いを誤れば、すぐに引火する物質です。火災・爆発のリスクを抱えているため、慎重に取り扱わなければなりません。専門知識を持っていない人が扱えば、大惨事を起こす可能性があります。ガスを正しく取り扱うと同時に、ガス工作物の工事・運用・維持を行うためには、ガス主任技術者が必要です。
需要・将来性
ガスは私たちの生活に必要不可欠なものとなります。ガス主任技術者の仕事は、ガス工作物の保安・監督であり、ガスを製造・供給する場所で必要な存在です。たとえば、ガスホルダー・ガス精製設備・排送機(はいそうき)・圧送機・導管・受電設備などガス事業の用に供するものを管理します。ガスを使用する場所はたくさん存在しているため、ガス主任技術者の需要も高いのです。ガス事業者は、法令に基づき、ガス主任者を選任しなければなりません。多くの施設で求められるため、将来性もある資格と言えるでしょう。
02. ガス主任技術者
の種類
ガス主任技術者は、どのような種類があるのでしょうか。
種類について
ガス主任技術者は、甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の3種類があります。それぞれによって、保安・監督内容が異なるため、事前にきちんと確認しておきましょう。
- 甲種:ガス工作物の工事・維持および運用
- 乙種:最高使用圧力が中圧および低圧のガス工作物、特定ガス発生設備等にかかわるガス工作物等の工事・維持および運用
- 丙種(へいしゅ):特定ガス発生設備にかかわるガス工作物の工事・維持および運用
それぞれの違い
甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の大きな違いは、取り扱いができるガス工作物の範囲です。甲種はすべてのガス工作物における工事・運用ができますが、乙種は最高使用圧力が中圧・低圧または特定ガス発生設備、丙種(へいしゅ)は特定ガス発生設備だけとなります。どのような施設で働きたいのか、どのガス工作物を取り扱いたいかによって、取得する資格種類が異なるので注意してください。初めて試験を受ける方で取得すべき種類に悩んでいる方は、下位資格の丙種(へいしゅ)から挑戦するといいでしょう。
03. ガス主任技術者の
仕事内容などについて
ガス主任技術者の職務・仕事内容や主な職場、就職・求人、資格取得のメリットについて説明します。
職務・仕事内容
ガス主任技術者の主な仕事内容は、ガス工作物の保安・監督業務です。資格を取得しなくてもガス主任技術者の監督下であれば、ガス工作物の工事を行うことはできます。しかし、整備点検や保安監督は、有資格者だけができることです。
主な職場
ガス主任技術者の主な職場は、ガス工事会社やガス設備会社などのガス関連会社になるでしょう。ガス関連の業務を行っている企業は、ガス主任技術者の選任義務があります。ガス関連会社にとっては、必要不可欠な存在と言えるでしょう。
就職・求人
今後は、ガスの小売りにおける自由化が拡大すると考えられています。ガス関連会社や施設が増えるほど、ガス主任技術者の需要も高まるため、就職・求人に有利な状態です。実際のところ、ほとんどの企業・会社が、無資格者よりも有資格者を採用しています。ガス主任技術者は、専門性の高い国家資格となるため、就職・求人が安定しており、待遇も良好なのです。「資格を取得しても求人数が少ない」という心配はありません。
資格取得のメリット
資格取得の大きなメリットは、就職・転職に有利なことです。上位資格者になるほど、厚い待遇で採用される確率が高くなります。また、資格手当など給与面でのメリットも大きいでしょう。実績や経験を積むほど、大企業で働くことができ、昇給・昇格が期待できます。さらに、内管施工士や液化石油ガス整備士などの資格も取得すれば、活躍の幅が広がるでしょう。幅広い場で活躍したい方は、ガス主任技術者のほかにも資格取得をおすすめします。
04. ガス主任技術者
の試験について
それでは、ガス主任技術者の試験概要について確認していきましょう。ここでは、受験資格や試験概要・試験科目・合格基準・注意点について詳しく説明します。
受験資格
ガス主任技術者の資格試験に受験資格はありません。甲種・乙種・丙種(へいしゅ)すべてにおいて制限はありませんので、年齢・性別に関係なく誰もが受験できます。希望する人は誰でも受けることができるため、比較的チャレンジしやすい資格と言えるでしょう。しかし、甲種>乙種>丙種(へいしゅ)と、難易度が上がるので簡単な試験というわけではありませんよ。
試験概要
試験日時や場所・受験料・申し込み方法について説明します。
日時・場所
ガス主任技術者の試験は、一般財団法人日本ガス機器検査協会主催で実施しています。試験日時は1年に1回、9月下旬~10月上旬ごろです。試験場所は、北海道・宮城県・東京都・愛知県・富山県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県の計10か所となります。試験会場の詳細は、一般財団法人日本ガス機器検査協会のホームページに掲載されるのでチェックしてください。
受験料
試験を受けるためには、受験料を払わなければなりません。ガス主任技術者の受験料は、甲種・乙種・丙種(へいしゅ)すべて共通して、12,700円となります。受験願書受付締め切り前に、振り込まなければならないので注意してくださいね。支払い方法に関しては、ホームページまたは受験願書に記載されているため、事前に確認しておきましょう。
申し込み方法
申し込み方法は、締め切り日までに願書を郵送する方法となります。インターネットによる受付は行っていませんので注意してください。受験願書の配布や試験内容の告示は、毎年4月中旬ごろに掲載されます。受験願書受付は5月中旬から、締め切りは6月上旬ごろです。「受験願書受付期間が過ぎていた……」ということがないように、しっかりチェックしておきましょう。
試験内容
ガス主任技術者の試験内容は、甲種・乙種・丙種(へいしゅ)すべて共通です。試験科目の範囲と試験科目は、以下のとおりになります。
試験科目の範囲
- ガス事業関係法令(保安にかんするもの)
- ガス工作物の工事・維持および運用にかんする技術
- ガス工作物の構造および機能
- ガスにかんする物理および科学理論
- ガスの成分分析および熱量等の測定
- ガス器具の構造および機能
試験科目
- 法令
- 基礎
- ガス技術(製造・供給・消費)
法令・基礎・ガス技術の3科目(択一式問題)に加え、法令とガス技術の論述問題があります。すべてを併せて5科目です。
合格基準
合格基準は、以下の項目すべてに当てはまる方となります。
- マークシート問題および論述問題の合計得点(300点満点)が180点以上
- マークシート問題の法令科目(80点満点)の得点が25点以上
- マークシート問題の基礎科目(50点満点)の得点が15点以上
- マークシート問題のガス技術科目(100点満点)の得点が30点以上
- 論述問題(70点満点)の得点が20点以上
注意点
ガス技術者の試験は、択一式問題が300点中180点以上、論述問題が70点中20点以上で合格できます。しかし、気をつけてほしいのが、法令・基礎・ガス技術それぞれの合格点です。法令は25点、基礎は15点、ガス技術は30点以上獲得しなければなりません。どれか1つでも基準点以下となれば、その時点で不合格となるので注意してください。
05. ガス主任技術者
の勉強法について
スムーズに合格するためには、勉強法のコツを押さえることが大切です。合格率・難易度や学習のコツ、参考書の選び方、過去問、おすすめの学習法について説明します。
合格率・難易度
ガス主任技術者の合格率は、資格の種類で異なります。上位資格となる甲種は12%前後、乙種は18%前後、丙種(へいしゅ)は27%前後と、上位になるほど合格率が低くなるのです。決して、難しい資格試験ではありませんが、地道な勉強が大きなポイントとなるでしょう。特に、甲種は1度不合格になったからと諦めずに、何度も挑戦してください。
学習のコツ
学習のコツは、時間の使い方です。仕事が忙しくて勉強時間が少ない方は、時間に余裕を持ちましょう。試験の半年前から勉強を始めるのではなく、1年前から計画を立てることが大切です。逆に、ある程度の時間が確保できる方は、半年前から勉強を始めても構いません。しかし、毎日勉強に充てる時間を確保することがポイントです。1日どのくらい勉強できるのかライフスタイルを踏まえつつ、試験勉強の計画を立ててくださいね。
参考書の選び方
基本的に、参考書は1冊だけで十分です。数冊購入すれば、試験の重要な内容がごちゃごちゃになってしまいます。1冊を何度も読み直すことで、重要ポイントを頭の中に入れることができるのです。自分にとってわかりやすい内容か、試験の大切なポイントが押さえられているかに注目してください。以下に、おすすめの参考書をいくつかピックアップしてみました。
過去問
ガス主任技術者試験の過去問は、日本ガス協会の試験問題解説集に過去5年分が解説付きで載っています。また、一般財団法人日本ガス機器検査協会のホームページでも無料ダウンロード可能です。過去2年分の問題が手に入るので、ぜひチェックしてみてください。過去問から似ている問題が出題されることもあります。何度も解けば、苦手分野もわかるので試験対策が立てられるでしょう。
おすすめの学習法
独学・スクールなどの学習法がありますが、おすすめは通信講座です。特に、仕事と勉強の両立が難しい方におすすめします。教材を利用しながら、自分のペースで勉強ができるでしょう。休憩時間や移動時間などのすき間時間が有効活用できます。ライフスタイルに合った学習法で勉強を続けることが大切ですよ。
06. ガス主任技術者
に関してよくある質問
ガス主任技術者に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.ガス主任技術者の平均年収は?
A.平均年収は、およそ500万~800万円です。職種・役職によっては、1,000万円以上になるところもあります。一般サラリーマンの平均年収が400万円前後となっているため、比較的高い相場と言えるでしょう。
Q.スキルアップに役立つほかの資格とは?
A.内管施工士や液化石油ガス整備士のほかにも、第1種電気工事士・高圧ガス販売主任者などのスキルアップにつながる資格があります。第1種電気工事士は一般用の電気工作物や自家用電気工作物の工事にかんする専門知識、高圧ガス販売主任技術者はガスの販売現場において重要な資格です。ガス関連の資格を取得すれば、さまざまな現場で役立ちます。
Q.ガス主任技術者の講習会とは?
A.全国各地のガス協会などが主催となって実施しています。必ずしも、すべてのガス協会が実施しているとは限りませんので、事前に調べてみてください。講習会では、試験対策やポイントなどを知ることができます。
Q.ガス主任技術者の資格は永久か?
A.ガス主任技術者に有効期限はないので、1度取得すれば永久に保持することができます。更新の必要もないため、安心してください。ただし、ガスにかんする技術や知識は日々向上し続けているため、常に勉強をする姿勢を持たなければなりません。
Q.最初から甲種の試験を受けても大丈夫か?
A.試験は合格率が最も低く、地道な勉強が大切だと言われています。中途半端な勉強では、合格が難しいと思ってください。十分な勉強時間が確保でき、時間をかけて対策を立てられる自信があれば、甲種を受けてもいいでしょう。不安な方は、乙種・丙種(へいしゅ)を受験してから、甲種に挑戦するのも選択肢の1つです。
07. ガス主任技術者
まとめ
いかがでしたか? ガス主任技術者は、ガス工作物の保安・監督を行う大切な役割を担っている有資格者です。ガスの製造・販売・貯蔵設備において、選任が義務づけられています。ガス工作物の範囲によって、甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の3つに分けられる資格です。試験に合格することが資格取得法となりますが、あらかじめ受験する資格種類を定めておきましょう。ライフスタイルに合った学習法を選び、地道に勉強を続けることが大切です。スムーズに取得するためにも、ガス主任技術者の資格や試験内容について知識を習得しておきましょう。