製造業においてトラブルはつきものですが、頻繁に不具合が起きてしまうと生産ラインがストップしてしまい、運営がままならなくなります。製造業では生産性の向上や品質の安定がとても大事だからこそ、なるべくトラブルを避けなければなりません。けれども、どうすればトラブルを防ぐことができるのか、悩んでいる方は多いでしょう。
本記事では、製造業で起こり得るトラブルや防止策などについて解説します。
この記事を読むことで、製造業でトラブルが発生する原因や対処法も分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください
1．製造業で起こり得るトラブルとは？
まずは、製造業で起こり得るトラブルをチェックしておきましょう。
1-1．生産工程の途中で発生する品質不良トラブル
製造業でよくあるトラブルといえば、生産工程の途中で起きる品質不良トラブルです。たとえば、製品の質が落ちたり、一部の部品が欠けていたりするなど、生産工程での品質不良トラブルが日常茶飯事で起きています。品質不良トラブルが発生したときは、最初の対応として、顧客への納期どおりに生産できるか確認しなければなりません。品質不良トラブルは会社の信用問題につながることですので、不良発覚後はスピーディーな対応が求められます。
1-2．機械・設備の故障
製造業では、機械や設備が故障して生産ができないというトラブルもよくあります。製品を生産するためには、機械・設備の力が必要です。生産ラインがストップすれば、元の状態に戻るまで製品が出荷できないので大きな打撃を受けてしまいます。機械・設備が故障したときは、生産できない量はどのくらいか・復旧までどのくらいかかるのかなど、さまざまなことを考えて対策を立てなければなりません。
1-3．システムエラーの発生
現在、多くの会社や工場では、受発注や在庫・入出庫をシステムで管理しています。実は、このシステムトラブルも意外と多いトラブルの1つです。規模や管理点数が大きいところほどシステムに依存しがちですが、システムエラーが発生すると何もできなくなってしまいます。システムエラーが発生した際は、情報システム部門へ連絡し、早急な対処が必要です。場合によってはシステムが復旧するまで、手作業で仕事をすることになります。
2．トラブルが発生する原因は？
ここでは、トラブルが発生する原因について解説します。
2-1．社内体制・作業手順の共有不足
トラブルが発生する原因として、社内体制・作業手順の共有不足が挙げられます。社内できちんと情報が共有できていなかったり、体制が整っていなかったりするとトラブルが起こりやすくなるのです。特に、製品を生み出すまでの過程において正しい作業手順を共有しておかなければ、大きなミスが出てしまう恐れがあります。社内体制や作業手順の共有は製造業の基本ですので、しっかりと体制を整え情報を共有しましょう。
2-2．ヒューマンエラー
不注意から引き起こされたトラブルは、ヒューマンエラーが原因です。ヒューマンエラーとは、不注意や勘違いなど人的要因から生じるミスを指しています。たとえば、手順を飛ばしてしまった・機械のボタンを間違えて押してしまった・指示を受けたのに忘れてしまったなどです。ほかにも、本来除去すべき材料が入り込んでしまったり、部品を加工する工程を間違えてしまったりすることもあります。毎日当たり前に行っている作業ほど、不注意によってヒューマンエラーを起こしてしまいがちです。
2-3．設備点検不足・品質管理の徹底不足
設備点検不足や品質管理の徹底不足も、製造業でトラブルが起きやすい原因の1つです。工場ではさまざまな機械や設備を使っており、それぞれ扱い方も異なります。従業員全員が正しい扱い方を共有しておくのはもちろんのこと、機械や設備も定期点検とメンテナンスが必要です。設備の定期点検を怠ってしまえば、急に故障したり不具合が生じたりしてしまいます。その結果、適切な品質管理が維持できなくなり、品質不良トラブルが頻繁に起きてしまうでしょう。
2-4．従業員のスキルとメンタル面
従業員のスキルとメンタル面もトラブルを引き起こす原因です。基本的に、製造業では作業マニュアル・安全確認の手順など、一定のルールに従って作業を行います。従業員のスキルが足りなかったりメンタル面が弱まったりしていると注意力が欠如してしまい、トラブルが起こりやすくなるのです。特に、経験不足の従業員は重要な手順を飛ばしてしまう恐れがあるため、作業を始める前に教育を施す必要があります。メンタル面としては、疲労や緊張・心理状態などによって作業の質が左右される可能性があるでしょう。従業員のメンタルケアもトラブルを防止する大切なポイントです。
3．トラブルを防ぐ方法は？
ここでは、トラブルを防ぐ方法とポイントについて解説します。
3-1．ルール・体制を整えて共有する
トラブルを未然に防ぐ方法として、ルール・体制を整える方法があります。前述したように、ほとんどのトラブルはヒューマンエラーが原因です。機械や設備を使っていても人が管理しなければならないので、品質管理マニュアルを作成したり、手順などをしっかりと定めたりするなど管理を徹底しましょう。そして、ルールや体制を整えた後は、従業員全員でその情報を共有する必要があります。分からないところがあればすぐに上司や先輩に質問できるような雰囲気づくりも大切なポイントです。
3-2．設備の定期点検とメンテナンスを強化する
設備の定期点検とメンテナンスを強化することも、トラブルを未然に防ぐ大切なポイントです。製造業ではたくさんの機械と設備を使っているところが多いと思います。その1つでも壊れてしまうと生産ラインがストップしてしまうため、不具合を早めに見つけることが大切です。日ごろから定期点検とメンテナンスをしっかりと行っておけば、急に壊れる心配もありません。少しでも不具合や故障のリスクを避けるためにも、定期点検とメンテナンスを行ってください。
3-3．従業員の教育を徹底する
従業員の教育を徹底すれば、ヒューマンエラーで起こるトラブルを未然に防ぐことができます。特に、初めて現場を任される新人は、ヒューマンエラーを起こす可能性が高いでしょう。作業マニュアルを確認しながら、機械・設備の正しい扱い方や注意点などを教える必要があります。たとえ、作業に慣れているベテラン勢でもヒューマンエラーを起こす可能性があるため、作業工程や手順を常に見直すことが必要です。
3-4．システムを導入する
人手が足りない・ヒューマンエラーを起こしたくない場合、IoTや人工知能（AI）といったシステムを導入するのもトラブルを防ぐ方法です。システムを導入することで人の手に頼らない品質管理ができ、製品不良分析・製品の追跡・可否の判断なども自動的に行うことができます。ただし、ヒューマンエラーは起きにくくなりますが、IoTや人工知能の仕組みを管理・理解することが大切です。また、万が一のときのために、システムエラーが起きたときの対処方法も考えておく必要があります。
4．トラブルが発生した際の対処法
ここでは、トラブルが発生した際の対処法について解説します。
4-1．まずは原因を突き止める
トラブルが起きたら、まずは原因を徹底的に突き止めることが大切です。原因を明確にしておかなければ、再び同じようなトラブルが発生する恐れがあります。同時に多数のトラブルが起きたとしても、それぞれの原因をしっかりと突き止めることで適切な対策が立てられるでしょう。また、トラブルが起きたときは、誰に連絡をするべきか・どのような対処をすべきかなど、トラブル発生時のルールや手順も明確にしておかなければなりません。
4-2．作業環境と設備の問題を解決する
トラブルが起きた原因の背景には、作業環境や設備の問題が大きく関係している可能性があります。ヒューマンエラーで片付けてしまうのではなく、トラブルが起きた背景には何があるのかもしっかりと考えてください。正常に作業できる環境が整っているか・機械設定に不備や不具合がないかどうか、入念にチェックすることが大切です。毎日同じ作業をしていると改善点に気づきにくく、見落としてしまうことがよくあります。再びトラブルを起こさないためにも、環境面などから生ずる発生原因について考え、問題を解決しましょう。
4-3．再発防止に努める
トラブルが発生し原因を突き止め解消したとしても、そこで終わりではありません。何をしておけばトラブルが起きなかったのか、起こり得るトラブルについて考えることが大切です。トラブルが少ない工場ほど、再発防止への働きかけを積極的に行っています。たとえば、品質不具合の原因を追及したり、生産の4Mの見直しと変更を行ったりするなどです。生産の4M（人・機械・材料・方法）は、品質管理業務を適切に行うために必要な要素となります。トラブルが起きるたびに生産の4Mを見直し、改善ポイントを明確にしましょう。
5．製造業のトラブルに関してよくある質問
製造業のトラブルに関する質問を5つピックアップしてみました。
Q．社外で起こり得るトラブルもあるのか？
A．製造業はさまざまな関係者と連携を取ることが多くなるため、仕入先・得意先・運送会社などのトラブルに巻き込まれることがあります。たとえば、トラックによる運送中の事故発生や納入遅延トラブルなどです。また、台風・豪雨・地震など自然災害によって被害を受ける可能性もあります。急なトラブルが発生したとしても、慌てず冷静に対処しなければなりません。
Q．同じトラブルを再発させないポイントは？
A．下記のポイントを押さえた上で、原因を究明することが大切です。
- なぜトラブルが発生したのか
- なぜ事前にそのトラブルを見つけることができなかったのか
1の問いによってトラブルの発生原因を突き止めることができます。単に、ヒューマンエラーだったと表面的な原因で片付けるのではなく、なぜヒューマンエラーが起きたのかなど、くり返し問い続けることが大切です。そして、2の問いを考えることで、管理の仕組みや仕事のやり方における問題を見つけることができます。
Q．設備の定期点検はどうすればいいのか？
A．法律で定められた法定点検と、自主的に行う自主点検を行ってください。法定点検は点検する業者や点検の間隔など法律で細かく定められているので、必ず行わなければなりません。法定点検を怠ると罰せられることになります。一方、自主点検では法律の決まりはありませんが、トラブルを防ぐためにはとても大切な作業です。毎日行う日常点検も自主点検に含まれているので、ぜひ心がけてください。
Q．生産の5Mとは？
A．4Mに検査・測定（Measurement）をプラスしたものが5Mです。検査・測定は、品質の向上を考える上でとても大切な要素となります。生産現場の環境を考え整えることは、品質の向上と維持につながる重要なポイントです。なお、5Mにマネジメント（Management）を加えたものを6Mと呼び、適切なマネジメントを行うことで生産ライン全体を見渡せるようになります。全体の見通しがよくなると、トラブルや不具合にもすぐに気づき、早めの対処ができるでしょう。
Q．トラブルの防止策がうまくいかない理由は？
A．品質不具合の解析が不十分で、原因がつかめていないことが挙げられます。特に、トラブル発生時に生産を優先してしまい、不具合対策を応急処置だけで行うと本当の原因が分からなくなってしまうでしょう。トラブルの原因が分からないままだと同じようなトラブルが発生してしまいます。生産を優先したとしても、なぜその問題が発生したのかしっかりと解析することが大切です。
まとめ
製造業で起こり得るトラブルは、品質不良トラブル・設備の故障・ヒューマンエラーなどさまざまです。思いがけないトラブルが発生するとパニックになりがちですが、まずは冷静になり、きちんと責任者に連絡をして原因を突き止めなければなりません。なぜ問題が起きたのか原因が解析できれば、適切な処置と対策を行うことができるでしょう。トラブルの再発を防ぐためにも、再発防止の取り組みに力を入れることが大切です。
