非常用放送設備について知りたい!非常警報設備との違いは何?

非常用放送設備
について知りたい!
非常警報設備との違いは何?

非常用放送設備とは、消防法によって一定以上の床面積を持つ施設に設置が義務づけられている非常警報装置の一種です。ベルやサイレンの音で非常事態が起きたことを知らせるほか、避難指示を出したりするために使用されます。

今回は、非常用放送設備とはどのようなものかということを中心に、消防設備について解説しましょう。

この記事を読めば、消防設備の整備や点検を行うことのできる資格についても、よく分かりますよ。消防設備士の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。

01. 非常用放送設備の
基礎知識

はじめに、非常用放送設備とはどのような装置かということを解説します。火災報知器などとの違いはなんでしょうか?

非常用放送設備の定義

非常用放送設備とはスピーカーを利用し、音声を用いて建物内の人々に異常事態が起こっていることを伝え、避難誘導を行う設備です。火災報知器や非常ベルが大きな音で非常事態が起きていることだけを知らせる装置なのに対し、非常用放送設備はいま何が起こっていて、安全な避難経路はどこか、ということを音声で伝える役割を担っています。

不特定多数の方が利用する大きな施設では、火事が起こっても現場から離れていれば気がつかないということも珍しくありません。しかし、非常ベルや警報装置で緊急事態が起こっていることが分かっても、避難経路が分からなければパニックが起こって二次災害が発生する恐れがあります。

そのため、非常用放送設備を用いて、音声で人々に事態の説明や避難経路を教えることで、安全に避難を行うことが大切です。

非常用放送設備の構成

非常用放送設備は、起動装置・表示等・スピーカー・増幅器・操作装置で構成されています。業務用の放送設備と非常用放送設備を兼用すればよいのではないか、という意見を持つ方もいるかもしれませんが、非常用放送設備は消防法によって独自の設置基準が定められているため、それぞれ独立した設備が必要です。また、非常用放送設備は、電気が使えない状況でも放送しなければならないため、非常用の電気配線などから電源を取っておくといいでしょう。

02. 非常用放送設備の
設置基準について

非常用放送設備は、以下のような場所で設置が義務づけられています。

  • 地下街
  • 準地下街(ビル等の地下が地下通路などに面している場所)
  • 地上11階以上・地下3階以下の建物
  • 収容員数が300・500・800人以上の防火対象物(学校・ホテル・商業施設・オフィスビルなど)

なお、非常用放送設備は必ず非常ベルや自動式サイレンと一緒に設置しなければなりません。

消防法改正と非常用放送設備

消防法は、平成6年に大幅な見直しが行われ、それに伴って、非常用放送設備の設置基準も改正が行われました。
現在は、

  • スピーカー基準:L・M・Sの3種類の基準が定められている
  • 測定音源:第2シグナル音を定格で入力
  • 設置基準:放送区域内のどの位置からも、10m以内にスピーカーがあるように設置する。また、放送区域の広さに応じてスピーカーの種類を規定できる

といった基準が定められています。

非常用放送設備の設置と点検

非所用放送設備は、設置するだけでは意味がありません。定期的に点検や整備を行い、いつでも使用できるようにしておく必要があります。設置や整備は、消防設備士という資格を持つ人しか行うことはできません。無資格者でも点検等のアシストはできますが、無資格者が点検をしても消防法で定められた「定期点検」に該当しませんので、注意しましょう。

なお、消防設備士は取得した類によって、設置や点検・整備できる消防設備が限られます。ただし、消防設備の点検が行える消防設備点検資格者の資格を取得している場合は、取得した種の点検は行うことが可能です。消防設備点検資格者の資格については、後の項で詳しく解説します。

03. 消防設備士の
資格取得について

この項では、消防設備士の職務や資格取得方法について解説します。資格取得を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

消防設備士とは?

前述のとおり、消防設備士は消防法で設置が義務づけられている消火器設備・警報設備・避難用具などの設置工事や点検・整備などを行うことのできる資格です。電気工事士などと併せ持てば求人が多い資格であり、社会人になってから取得にチャレンジする方もたくさんいます。1966年に制定された比較的新しい国家資格です。取得すれば「消防設備点検資格者」という消防設備の点検を行うことのできる資格取得の講習会を受ける資格も得られます。

資格を取得するメリット

消防設備は、不特定多数が利用するオフィスビル・所業施設・学校・病院などに設置が義務づけられており、定期的な点検も必要です。ですから、消防設備の設置や点検を専門に行う業者もあります。資格を取得すれば、転職や就職に有利となるでしょう。また、前述のとおり電気工事士の資格などと併せ持つと、仕事の幅も広がります。

消防設備士の種類

消防設備士には、甲種と乙種があり、甲種は特類と1~5類・乙種は1~7類に分かれています。甲種は、取得した類に分類されている消防設備の設置工事と点検・整備を行うことができるのに対し、乙種は、取得した類に分類された消防設備の整備と点検のみ行うことが可能です。ちなみに、乙種6類・7類は、設置工事の必要がない消火器や漏電火災警報設備などが分類されているので、甲種に6類・7類はありません。

また、消防設備士の資格を取得した後で講習を受講し、消防設備点検資格者の資格を取得すれば、取得した類以外に分類されている消防設備の点検を行うことが可能です。消防設備点検資格者は特殊・一種・二種の3種類があり、講習時間は3日間になります。

消防設備士の資格取得方法

消防設備士の資格を取得するには、消防試験研究センターが主催する試験を受けて合格する必要があります。乙種に受験資格は定められていません。性別や年齢・職歴や学歴問わずに受験可能です。

甲種は、乙種を取得して一定の実務経験を得るか、大学や短大・専門学校で土木・電気・工業化学・建築にかんする学科を卒業していることが、受験資格になります。

なお、電気工事士など一定の資格を取得していても受験できますので、詳しくはセンターのホームページを確認してください。

ちなみに、現在のところ、「この資格を取得すれば、すべての消防設備の工事・整備・点検を行うことができる」という資格区分はありません。職場で必要な消防設備の点検や整備が行える資格区分から、取得していきましょう。

試験科目について

消防設備士の資格試験は、

  • 消防関係法令
  • 基礎的知識
  • 消防用設備等の構造・機能・工事(甲種だけ)・整備
  • 製図(甲種だけ)・鑑別等の実技試験

の4科目です。実技試験も筆記試験であり、電気工事士の資格試験のように何かを組み立てたりするようなものではありません。ただし、記述式なので誤字などにも注意しましょう。乙種・甲種とも、すでに取得している人が別の類を取得しようとする場合は、試験の一部が免除になります。しかし、乙種の資格を取得している方が甲種を受験する場合、科目免除はありません。なお、電気工事士など一定の資格を取得していても試験科目の一部が免除になりますので、消防試験研究センターのホームページを確認してください。

試験の合格率は乙種平均44%、甲種が30%です。受験生の半分以上が不合格になる試験ですので、ヤマカンや一夜漬けでは合格できません。しっかりと勉強をしてのぞみましょう。

試験の申し込み方法など

消防設備士の試験は、消防試験研究センターのホームページから電子申請が行えます。試験科目の免除を受けたい場合は、最寄りの消防署で配布されている願書をもらって必要事項を記入し、センターへ送付しましょう。この時、必要な添付書類を忘れないようにしてください。受験料は甲種が5,000円、乙種が3,400円です。

試験日は都道府県によって異なり、どの都道府県でも最低で年2回は試験日があります。東京などの大都市では、毎月試験が行われているため、年に何度も受験することが可能です。また、全国どこで試験を受けてもかまいません。試験の詳しい日程はセンターのホームページに記載されていますので、確認してください。なお、試験日が都道府県によって異なるので、試験問題の持ち帰りは厳重に禁止されています。発覚した時点で不合格になりますので、注意してください。

勉強のコツ

消防設備士の試験は社会人にも人気なので、資格区分ごとに参考書が販売されています。過去問は一部しか公開されていないため、予想問題集を参考書と共に購入して、知識の確認に使いましょう。甲種の方が難易度が高く、電気回路の知識などが必要です。独学が難しいと感じた場合は、通信教材を利用してみましょう。

なお、1種類でも合格ができれば、科目免除があるので後の資格区分はより合格しやすくなります。できれば、1年をかけて複数取得しておくといいですね。

04. 非常用放送設備や
消防設備士に対する質問

Q.非常用放送設備は、第何類に分類されていますか?
A.4類と7類です。乙種4類・7類を取得すれば、整備や点検を行うことができます。甲種4類を取得していれば、乙類の業務のほか、設置工事も行うことが可能です。

Q.なぜ、電気工事士の資格を取得しておくと甲類の受験資格が得られるのでしょうか?
A.消防設備の設置工事は、電気工事の一種に含まれるものもあるため、電気工事士の資格が必要なのです。

Q.非常用放送設備は、誰でも非常時に放送ができますか?
A.はい。放送をするための資格などは定められていません。

Q.非常用放送設備の設置する設備に例外はありますか?
A.マンションなどは大規模であっても警報ベルや火災自動警報装置などがあれば、放送設備を設置しなくてもかまいません。

Q.非常用放送設備は、どこで購入すればよいのですか?
A.消防設備の販売会社などで取り扱っています。

05. 非常用放送設備
まとめ

いかがでしたか? 今回は非常用放送設備のことを中心に解説しました。音声による説明と避難指示があるだけで、パニックはかなり避けることができます。避難訓練を行う際は、放送訓練も行っておきましょう。また、万が一に備えて非常用放送で伝えることをマニュアル化し、誰でも分かるようなところに置いておくことも大切です。建築物を造る際に非常用放送設備を設置する場合は、非常用の電気の配線から電源を取るようにすれば、電気が使えなくなっても放送することができます。

そのカテゴリーで訪れる価値のある場所
遠回りしてでも訪れる価値のある場所
そのために旅行する価値のある場所