公害を予防し、発生時に速やかな対策を行うために公害対策基本法があり、一定条件を満たした向上には公害防止対策が義務づけられています。実は、公害対策基本法は1993年に廃止され、環境基本法に統合されているのです。しかし、現在でも公害対策の基本は公害対策基本法で定義された内容に従って行われているため、正しく理解しておく必要があります。今回は、公害対策基本法や公害防止に関連する資格について解説しましょう。
この記事を読むことで、公害対策基本法の内容がよく分かり、公害防止に向けた資格取得の準備ができます。まずは、記事を読んでみてください。
1.公害対策基本法とは?
最初に、公害対策基本法について見ていきましょう。
1-1.1967年に施行された公害基本法
公害対策基本法とは公害に関する基本法で、4大公害病(水俣(みなまた)病・第二水俣(みなまた)病・イタイイタイ病・四日市ぜんそく)の発生により、1967年8月に制定されました。公害対策基本法で認定された公害は、大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音・振動・地盤沈下・悪臭の7つです。公害対策基本法は1993年11月制定の環境基本法に統合されたため、廃止になりました。
1-2.事業者・国・地方自治体の公害防止責務を明記した
公害対策基本法の背景には、公害が国民の「健康的で文化的な生活」を守るために大きな悪影響があることが挙げられます。公害が起きた場合、国や地方自治体・事業者の責任の所在を明らかにする必要があることから、法律が制定されたのです。
1-3.公害対策基本法の主な目的
公害対策基本法の主な目的は、以下のとおりです。
- 公害対策の増進
- 国民の健康保護
- 生活環境の保全
環境問題は、年々複雑化・地球規模化しています。そのため、従来の公害対策基本法と自然環境保全法ではカバーしきれなくなり、1993年に2つの方法を統合・改定を加えた環境基本法が制定されたのです。関連資格には、公害防止管理者などがあります。
2.公害防止管理者制度や公害防止組織について
次に、公害防止管理者制度や公害防止組織について詳しく解説します。
2-1.公害防止管理者を置くべき特定工場とは
公害防止管理者制度は、戦後の度重なる公害発生に基づき、昭和46年6月に「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」によって設置が義務づけられました。目的は、工場内に、公害防止に関する専門知識を有する人的組織を設置することです。公害防止管理者制度の設置義務があるのは、「特定工場」となります。特定工場の条件は、以下の対象業種で対象施設を有していることです。
対象業種
- 製造業
- 電気供給業
- ガス供給業
- 熱供給業
対象施設
- ばい煙発生施設
- 特定粉じん発生施設
- 一般粉じん発生施設
- 汚水等排出施設
- 騒音発生施設
- 振動発生施設
- ダイオキシン類発生施設
2-2.公害防止組織を構成する職種は?
2-1の特定工場は、公害防止組織の設置が義務づけられています。公害防止組織とは、公害の発生を事前に防ぐために設備点検や、土壌・大気・水質・騒音・悪臭などを検査する組織のことです。公害防止統括者・公害防止主任管理者・公害防止管理者で組織され、実務に当たります。
3.公害防止に関連する主な資格
公害防止に関連する主な資格について、どんな種類があるか詳しく解説します。
3-1.公害防止に関連する資格の種類は?
公害防止に関連する資格には、以下のような種類があります。いずれも公害防止組織に必要なものです。なお、公害防止統括者には資格は必要ありません。
- 公害防止主任管理者:公害防止統括者を補佐し、公害防止管理者を指揮する役割
- 公害防止管理者:公害発生施設や公害防止施設の運転・維持・管理・燃料・原材料の検査などの実務を行う
3-2.公害防止主任管理者と公害防止管理者の違い
公害防止主任管理者は、公害防止管理者のまとめ役です。公害防止主任管理者になるには、公害防止管理者の公害防止主任管理者区分に合格するなどして資格を得る必要があります。一方、公害管理者は、大気・水質など各専門分野の深い知識を有し、現場の第一線で業務に当たるために必要な資格です。公害管理者は、公害防止管理者の指示に従って公害対策を進めることになります。
3-3.公害防止管理者は13種類
公害防止管理者には、以下のような種類があります。
- 大気関係:大気関係第1種公害防止管理者(第1種~第4種の4種類)
- 水質関係:水質関係第1種公害防止管理者(第1種~第4種の4種類)
- 騒音や振動関係:騒音・振動関係公害防止管理者
- 粉じん関係:特定粉じん関係公害防止管理者、一般粉じん関係公害防止管理者
- ダイオキシン関係:ダイオキシン類関係公害防止管理者
- 公害防止主任管理者
4.公害防止管理者の試験について
公害防止管理者試験の受験資格や試験概要・試験内容など、詳しく解説します。
4-1.受験資格は特になく誰でも受験可能
公害防止管理者には、受験資格はありません。従って、受験を希望する人は、国籍・学歴・年齢・性別を問わず、誰でも受験できます。実務経験の有無も問いません。しかし、簡単に受かる試験ではないため、合格するためには計画立ててきちんと学習することが必要です。
4-2.試験は年1回・全国9都市で開催
公害防止管理者の試験概要は、以下を参考にしてください。
- 試験日時:1年1回(例年10月初旬ごろ)
- 受験地:全国主要9都市(札幌・仙台・東京、愛知、大阪、広島、高松、福岡、那覇)
- 受験料:8,200円
- 申し込み方法:願書を期日までに郵送
なお、より詳しい内容は一般社団法人産業環境管理協会の試験案内ページもご覧ください。
4-3.種類ごとに受験科目数・内容・試験時間が異なる
公害防止管理者の試験内容は、以下のとおりです。
- 試験時間:試験区分別・科目別試験時間一覧を参照のこと
- 試験科目:試験の範囲と内容一覧ページを参照のこと
- そのほかの注意点:試験は五者択一式・マークシート方式の筆記試験で筆記試験はなし
なお、試験内容に関するより詳しいことは一般社団法人産業環境管理協会の国家試験実施要領ページをご覧ください。
4-4.合格率は約3割・難易度は高め
平成29年度の試験では、約3割の合格率でした。10人受験して3人だけが合格できた計算となります。公害防止管理者の難易度は、中程度~高めと判断していいでしょう。なお、公害防止管理者の合格基準は、各科目それぞれ60%以上です。満点を取る必要はありませんが、受験科目をまんべんなく学習し不得意を作らないことが合格のカギとなるでしょう。
4-5.遅刻は15分まで・途中退出は不可能
やむをえない事情で遅刻した場合は、試験開始15分までは認められることがあります。15分を超えた場合、残念ながら失格となるので注意しましょう。また、試験開始後は途中退出が認められません。トイレは早めに行っておくなど、途中退出しなくて済むように心がけましょう。
5.公害防止主任管理者取得のための勉強法
公害防止主任管理者取得に向けて、おすすめの学習方法や参考書などを紹介します。
5-1.公害防止主任管理者の学習方法
公害防止主任管理者試験は、1年に1回のチャンスです。試験当日に実力を100%発揮するためにも、早めに学習計画を立てて余裕を持って進めていきましょう。専門用語の暗記が多く、試験範囲が広いので試験によく出る項目を重点的に学習することがコツです。また、複数の種類を取得する予定がある場合は、まず共通科目から攻略するなど優先順位を考えて対策するといいでしょう。
5-2.参考書や過去問を活用しよう
公害防止主任管理者試験の合格に向け、参考書や過去問を活用して効率よく学習していきましょう。まずは、自分に合った参考書を準備して繰り返し学び、基礎力を固めてください。また、過去問を解くことで試験の傾向が分かり、合格確率を高めることができます。なお、公害防止主任管理者試験の過去問は、こちらから入手可能です。
6.公害防止管理者に関するよくある質問
最後に、公害防止管理者に関するよくある質問に回答します。それぞれ確認しておいてください。
Q.公害防止管理者は女性でも活躍できる?
A.公害防止管理者は、性別関係なく活躍できます。自分の実力を評価してもらいたい、ほかの人とは差をつけたい、といった場合にもおすすめです。
Q.公害防止管理者以外の種類も取得したほうがいい?
A.取得できるに越したことはありません。しかし、業務に必要がないものまで取得しても資格を生かす機会がないでしょう。まずは、公害防止主任管理者試験で確実に合格できるようにしてください。
Q.公害防止管理者に科目合格制度はある?
A.あります。科目合格となった場合、試験を受けた年を含めて3年間、次回受験時に申請すれば科目免除を受けることが可能です。なお、試験当日に申し出るだけでは免除されませんので気をつけましょう。
Q.公害防止管理者でほかの種類との併願は可能?
A.併願は難しいでしょう。試験が年1回だけであり、13種類の試験が同時に始まるからです。ただし、すでに科目免除となっており、受験スケジュールが合う場合は併願可能なこともあります。
Q.公害防止管理者は更新の必要がある?
A.更新の必要はありません。1回取得すれば、半永久的に資格保持者となるのです。免許申請制度もないため、合格後に届く証書が資格証明となります。
まとめ
今回は、公害対策基本法について詳しく解説しました。公害対策基本法は、1993年に環境基本法に統合されたことで現在は廃止となっています。しかし、公害対策の基本的な方針となるため、正しく理解する必要があるのです。なお、特定工場において公害対策を進めるには、公害防止管理者の取得を目指しましょう。公害や公害予防に関する深い専門知識が身につくため、就職・転職などで有利です。